肩の痛みがある人はこれで解決! 原因から治療まで専門医が解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩の痛みがある人は何が原因なのか、病院に行った方がいいのか?様子を見ていいのか?治療はどうしたらいいのか?

様々な疑問が浮かび、みなさまがその答えを求めます。

そのスタートとしてこの記事をお読みいただければ、方向を間違えることなくできるかぎり、あなたなりの最短距離で肩の痛みの原因を特定し、治療していけます!

そんな記事になるように、毎週何十人もの肩の痛みの患者さんを拝見、診察し、毎週、肩関節鏡手術を行っている肩専門の整形外科医が作成しました。

まず肩の痛みの具体的な症状から考えられる原因を絞っていきます。

そして、その原因(≒診断名)についてご理解いただき、その治療についても解説しております。それぞれ詳しい記事もご紹介していますのでご参照ください。

では、さっそくいきましょう。

肩の痛みの具体的症状チェックで原因に迫る

肩の痛み・・・といっても、その痛みの特徴や、同時に発生する別の症状から原因に迫ることができます。

あなたの症状に当てはまるものから、考えられる原因(診断名)をクリックしてみてください。

傷めたきっかけ(ケガ)あり

まずは肩が痛くなったきっかけがあるというケースです。

転倒して強打

わかりやすいのは転倒です。転んでしまって、手をついてしまったとか、転んで右肩(左肩)を強打してしまったとか。

この場合はまず最初に様々な肩の周囲の骨の骨折がないか?
ということをまずレントゲンで探します。

起こりうる肩まわりの骨折
* 上腕骨近位端骨折
* 肩甲骨骨折
* 鎖骨遠位端骨折

などが代表的です。

また、肩を直接打った時によく起こるのが肩鎖関節脱臼という肩甲骨と鎖骨からなる関節の脱臼です。

腕を持っていかれた

また、強く打つようなケガではなくても、肩が痛くなるようなきっかけは多岐にわたります。

スポーツで腕を持っていかれたというようなケース転びそうになってどこかに捕まって、肩の位置が異常な状態を強いられたケース。

これは無理矢理肩関節が異常に動かされたケースで、さきほどの骨折も起こりえますが、典型的には脱臼が起こりえます。

重いものを持ち上げたり、高いところの作業をしたとき

ケガというほどじゃないにしても、肩に負担がかかる動作をした瞬間に痛くなるということもあります。

この場合も突然の痛みとしては、何かが損傷したと考えられるわけですが、その代表が腱板損傷になります。この腱板損傷の最初の典型的な症状が自力では上がらないという状態です。

肩が自力では上がらない

肩が(腕が)上げられないという症状は肩の痛みに伴う症状としては非常に多い症状です。

やはり、肩を上げるという動作はそれだけ負担がかかるということを表していると思いますが、特に自力で上げるということと他力で上げるということを区別して考える必要があります。

自力で上げる動きを自動挙上運動(じどうきょじょううんどう)と言い、
他力で上げてもらう動きを他動挙上運動(たどう挙上うんどう)と言いますが、

他動挙上運動ができない人は自動挙上運動もできません。当然ですよね、上げてもらうことも痛くてできないなら自分の力でなんてもってのほかということです。

しかし、逆はあります。

自力では上げられないけど、他の人や自分の逆の腕で持てば上げられるというケースです。

この場合はより自力に関わる筋肉系にトラブルがあるのではないか?ということを疑います。

そして、さきほども述べたとおり、その代表的なものが腱板損傷であるということになります。

逆の手で支えても肩が上がらない

次に他動挙上運動もできないというケースです。自力でも上がりませんが、逆の手で支えても痛くて上がらない。もしくは、痛みは少ないけどカタくて上がらないということになります。

この場合の典型的なものは五十肩・肩の拘縮になります。

シンプルに関節がカタくなっていれば(肩の拘縮・凍結肩)、他力だろうが上がらないということがあり得ますし、カタくなっていなくても、筋肉以外の部位が炎症を起こしていれば(五十肩・肩関節周囲炎)動かされるだけで痛みが強いという状態になります。

夜も眠れないくらいの激痛

夜も眠れないくらいの激痛はツラいですよね。

肩の炎症がある場合は夜間痛もかなり頻繁に起こります。なぜか肩は夜に痛むという傾向があります。

Lonely mature man drinking beer at evening

その理由は肩関節がそもそも日中は心臓より高い位置にある数少ない関節の1つであるということで、夜寝るときにはその位置関係が変わってしまうことで血流や関節内の圧力に変化があるんじゃないか、とか、

夜間はシンプルに体温も落ちるし、血流が低下する時間帯だから、とか、

いろいろ言われてはいます。

ただ、まったく眠れなくて救急外来を夜中に受診されるくらいの激痛は多くはありません。

逆にそのくらいの激痛の場合は、石灰沈着性腱板炎というものであることが多いです。

スポーツ動作でのみ肩が痛い

次に、日常生活では痛くないが、スポーツ動作で痛みが出るというケースです。当然、スポーツ動作での関節にかかる負荷は日常生活のそれより大きくなります。

特に肩に関しては「投球動作」に代表されるオーバーヘッド動作が痛みの原因になりやすいです。

  • 野球のピッチング、スローイング
  • バレーボールのサーブ、スパイク
  • アメリカンフットボールのクォーターバックのパス
  • テニスのラケットスイング 特にサーブ
  • 柔道の背負い投げ

などなどでしょうか。

これらによる肩の痛みの原因の中でもやはりボールを投げる動作が圧倒的に多いため、投球障害肩と呼ばれることが多いです。

他にもこんなにある肩の痛みの症状

それ以外にも肩の痛みの症状にはたくさんのバリエーションがあります。

例えば、腕を背中側に回せないと、衣類や下着の着脱に困ります。これは肩の伸展、内旋という動作ですが、これが痛い場合は肩の前後に問題が起こっているケースが多いです。

前側の肩甲下筋という腱板の一部が傷んでいたり(=腱板損傷)、後ろ側の関節包が炎症、カタくなっていたり(=五十肩・拘縮)というようなことです。

何かモノをとろうと腕を伸ばすという動作での痛みもよく起こります。リーチ動作と言います。これも腱板損傷で典型的と考えられます。

手で身体の前を横切って、逆側の肩を触れるような動き水平内転(すいへいないてん)と言いますが、この水平内転で痛みが出るケースも多いです。これもさまざまな原因がありますが、肩鎖関節にトラブルがあるケースが典型的です。肩鎖関節脱臼、肩鎖関節炎、変形性肩鎖関節症(軟骨のすり減り)などがそのトラブルの中でも多いですね。

肩と首・背中の間が痛い

肩関節、その周囲のトラブルとしての肩の痛みの症状をお伝えしてきましたが、同じ肩が痛いという表現の中でも、実際は首と肩の間や、背中と肩の間の痛みがメインの症状という方がいます。

というか、これは相当多い症状ですよね。

そうです、肩こりです。

しかし、ときに肩こりで片付けられない強い痛みや腕の方まで放散するような痛みがあって、病院受診される方も多いんですが、そういった方の病名としては頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)という診断名がつけられることが多いです。

年齢も大切なポイントです

五十肩、四十肩という名前がある通り、肩の痛みの原因判断には年齢も大切なポイントです。

五十肩、四十肩肩関節周囲炎やカタくなる凍結肩という状態を表しますが、これはその名の通り40歳代から50歳代に多い病態です。

では、それ以上のご年齢の方はどうなのか?というと、腱板損傷が年齢ともに増えてきます。腱板が年齢とともに変性(脆くなる)することで腱板が切れやすくなるんですね。

肩の痛みの原因別治療法解説

ここまで肩の痛みの症状からさまざまな原因の診断名をお伝えしてまいりましたが、ここからはその原因ひとつひとつについて解説と治療法の解説を加えていきます。

また、さらに詳しい解説記事も紹介しておりますので、ご参照ください。

肩の周囲の骨折

肩の周囲の骨折1:上腕骨大結節骨折

大結節とは肩の外側の出っ張り部分

上腕骨大結節(じょうわんこつだいけっせつ)というのは、上腕骨という腕の骨の肩よりで一番外側の出っ張りです。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

すぐ近くに肩甲骨の外側の出っ張りである肩峰(けんぽう)がありますので、外側からは注意深く触れないと間違えてしまいます。

肩の外側が痛いという人でこの大結節が痛いという人は少なくありません。

上腕骨大結節に腱板が3つ付着している

この上腕骨大結節には腱板(けんばん)と呼ばれるインナーマッスルが3本くっついています。これが大結節の存在意義と言ってもいいです。

筋肉の付着部というのは、その力の伝達効率を上げるために、大結節のように出っ張っていることが多いです。

実際、肩を安定化させるためには肩の周りで上腕骨側にも筋肉の付着する部位が必要ですが、上腕骨頭というボール状の軟骨には筋肉は付着できません。

ですから、関節からは離れた側に出っ張りをつくって、大事な腱板筋群を付着させたのだろうと思います。

上腕骨大結節骨折は腱板に引っ張られてズレる

そして、この上腕骨大結節が折れてしまう、つまり大結節骨折が起こると、大きな上腕骨のメインの骨と欠けてしまった上腕骨大結節骨片(こっぺん)に分かれます。

そして、先ほども述べたとおり、この大結節骨片には腱板という筋肉が付いてします。筋肉はもともと縮む作用を持っていますから、この骨片を引っ張って、結果として大結節骨片はズレます。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

骨折の程度によって、ズレ方は異なります。ヒビ程度で骨膜という骨の周りの膜が残っていたりすればズレはほとんどないことになりますし、最初っから大きくズレてしまっているモノもあります。

上に5mm以上ずれるとインピンジメントの原因になり得る

このズレ(転位)の程度ですが、1つの境界線が5mmと考えられています。

特に腱板のうちでも棘上筋に引っ張られて上に5mm以上ズレると、肩甲骨の肩峰(けんぽう)との距離が縮まり、肩峰下インピンジメント症候群の原因となってしまいます。

インピンジメント症候群とは?肩専門医が解説

2016.12.12

そうなってしまうと、骨がくっついても、肩を動かしたときの痛みが残るか、肩を挙げられなくなってしまうという状況になる可能性があります。

その可能性が高いと判断すれば、5mm程度のズレでも手術を提案します。

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい点があります。

大結節は弱い、脆い骨

大結節は弱く、脆い骨の部位です。われわれ、手術をやっていると実感することがありますが、骨を固定するために金属のネジや針金を打ち込む際に、この大結節が割れてしまうことがあります。

強い骨であれば、こういう金属を打ち込むと、骨折部位のすごくいい固定になるんですが、脆い骨の場合は、なんとか割れずに固定できても、術後、リハビリの過程でズレてきてしまうなんことも起こりえます。

結果、怖くて、積極的にリハビリができないという本末転倒な状態になってしまいがちです。

腱板という筋肉に常に引っ張られている骨

もう一つ悩ましいのは腱板という筋肉が常に引っ張っている骨ということです。

これは骨折を元の位置に持っていくのにも、時に筋肉の引っ張る力が強くて、カタくなってしまっているために苦労することもありますし、
術後に徐々にズレてしまう原因にもなります。

大結節骨片がかなり小さいことがある

大結節骨片が欠け方によって、かなり小さいこともあります。すると骨片同士を金属で固定するにも太いネジや針金は、先ほども言ったとおり、入れた瞬間に骨片が割れてしまうということになります。

小さい骨片でも筋肉がくっついていることや、関節の近くであることから、しっかりと整復することが必要なので悩ましいわけです。

強い糸や柔らかめの針金で腱板ごと固定しちゃう

このように悩ましい上腕骨大結節骨折ですが、それを解決するための1つの方法は、腱板そのものに糸や細い針金を通して、それを使って、大結節骨片を固定してしまおうということです。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

実際、大結節よりもそれに付着する腱板の方が強いというのは事実で、これがスタンダードな方法といえます。
それに加えて、可能であれば骨片同士も金属(ネジやカタい針金、時にプレート)で固定するということになります。

スクリューだけでなく強い糸などを腱板にかけてスクリューと固定します。 画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

関節鏡手術で治すこともできる

このように腱板が付着するという悩ましい問題を逆手にとって、

腱板ごと固定するということは、腱板断裂(腱板損傷)の手術と少し似ている部分があります。

そうなると関節鏡手術も選択肢に入ります。

arthroscope surgery

私の場合は骨片の大きさなどによりますが、関節鏡だけを使ったり、関節鏡を補助的に使ったりして、できるだけ低侵襲(皮膚の傷や周りの筋肉などの組織を傷めない)な手術を心がけています。

この動画は私がよく行う手術と同じような方法です。関節鏡を使って骨折部分をキレイにして、新鮮化(血流を良くしてくっつきやすくする)し、

骨の中にアンカーというネジを用いて糸を埋め込んで、ブリッジング法という方法で骨片を腱板ごと固定してしまうという方法です。技術的には少しテクニックが必要ですが、かなりの大結節骨折はこの方法で治療できます。

肩の周囲の骨折2:鎖骨遠位端骨折とは?

次に鎖骨遠位端骨折というものを解説します。

まず鎖骨遠位端骨折とは?ということです。

ご自身の鎖骨は触ることができると思います。
それを肩の方にたどっていくと、かなり外側まで鎖骨があることがわかります。

途中で肩甲骨の一部である肩峰(けんぽう)が触れますが、この肩峰と鎖骨の間を肩鎖関節といい、その周辺の鎖骨を鎖骨遠位端といいます。この肩鎖関節は慣れるまで正確に触れるのは難しいかもしれません。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

遠位というのは身体の中枢から「遠い位置」という意味です。

鎖骨遠位端骨折のリハビリポイント

この鎖骨遠位端骨折のリハビリテーションにおけるポイントを解説いたしますが、その前に鎖骨遠位端骨折の特徴を挙げておきます。

  • 鎖骨遠位端は平べったい骨であるため骨癒合(くっつき)に時間がかかる
  • 鎖骨遠位端骨折はズレてしまうと整復位置の固定が外からでは難しい

鎖骨の骨幹部(真ん中より)の骨折だと、鎖骨バンド(クラビクルバンド)というものである程度、整復位置をキープでき、かつ、非常に骨癒合がいいのが骨幹部なんですが、鎖骨遠位端は逆にそのどちらもデメリットになってしまっています。

鎖骨遠位端骨折はレントゲンで癒合が確認できるまでは時間がかかる

そうは言っても、鎖骨遠位端骨折は骨のくっつき(骨癒合)に時間がかかると述べましたとおり、レントゲンで骨がくっついてきたなという所見が見えるのが遅いです。

ですから、それを待ってリハビリを開始するとなると、肩がカタくなってしまうリスクが高いです。

そういう意味では骨折部位の痛み、圧痛(押しての痛み)、動かしての痛みというような様々な要素を総合的に判断して、リハビリの開始を決めていくことになります。

よく主治医と相談してリハビリをしていきましょう。

鎖骨遠位端骨折の治療は手術した方がいい?

リハビリも大事ですが、
そもそも手術をするのか?保存治療(手術以外で骨がくっつくのを待つ治療)でいくのか?

という選択もとても大切です。

その選択において基本となる考え方をお伝えします。

鎖骨遠位端骨折は肩鎖関節脱臼に似ている

鎖骨遠位端骨折は鎖骨の肩寄りの骨折と言いました。

厳密に言うと、肩鎖関節に近い部分の骨折です。

場所的にもそうですが、病態的にも治療の考え方的にも肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)に似ているポイントがあります。

それは烏口鎖骨靭帯という靭帯がキーポイントだと言うことです。

 

烏口鎖骨靱帯の役割

 

肩鎖関節が普段脱臼しないのは、肩甲骨と鎖骨を繋いでいる靱帯が支えているからなんですが、

しかし、鎖骨遠位端骨折でズレがある場合や肩鎖関節脱臼の時はこの靱帯が切れてしまっています。

特に重要な靱帯が

烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)

という靱帯で、烏口突起(うこうとっき)という肩甲骨の一部と、鎖骨を繋いでいる靱帯になります

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これが完全に切れてしまうと、鎖骨と肩甲骨は離れて脱臼状態になってしまいます。

これは鎖骨遠位端骨折でも大事なポイントで、

この烏口鎖骨靱帯が完全に切れていると、鎖骨は骨折部で上下にズレてしまいます。

 

手術法1:烏口鎖骨靱帯を修復する

このように烏口鎖骨靱帯が切れているような骨折では骨折部が不安定ですから、結果として骨がくっつかなかったり、くっつくまでに時間がかかってしまうということが起こります。

そこで、私の場合は手術するしないの1つの判断基準は、

この靭帯が損傷しているかいないか?

ということです。

損傷していると判断すれば、このように烏口鎖骨靱帯に沿って強固な糸(テープ状)を通して上下を金属ボタンで固定して結んでしまうという最小限の手術(主に関節鏡手術)で骨折部分を安定させる治療を行っています。

手術法2:骨をくっつけることを重視した金属による固定法

烏口鎖骨靱帯は損傷していなさそうだけど、鎖骨遠位端骨折が縦割れして上下にズレが大きい場合によく行う治療法です。

これは骨折部のズレを小さくして固定できればいいので、

金属プレート、特に鎖骨遠位端用に開発されたプレートを使うか、(かなり大きな傷になるので私はあまり好んで使いません)

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

柔らかめの針金を鎖骨を取り巻くように巻いて締め上げるような骨折部分の固定手術を行います。

肩の脱臼、後遺症

肩脱臼(肩関節脱臼)とは?

肩脱臼(肩関節脱臼)とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩・肩関節と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。

細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿側と、
上腕骨頭というボール側からなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節(けんさかんせつ)という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つです。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼(肩関節脱臼)と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩関節の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
そのうちほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭(ボール側)が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが物理的な特徴が大きな要因です。

この肩の脱臼後、適切な処置を受ければ整復され、
元に戻るわけですが、

しかし、脱臼整復後も、なんとなく痛みが残ってしまうというケースが少なからずありますし、
脱臼が癖になってしまうということも多いです。

肩が上がらなくなるなんてこともあります。

そういった脱臼の後遺症について、こちらの記事もご参照ください。

肩が外れる癖(反復性脱臼)の治し方 手術やリハビリを専門医解

2017.12.29

肩腱板損傷

肩腱板とは肩の大事なインナーマッスルの腱の合流部

肩腱板(かたけんばん)

これを正確に理解している人が
医療関係者の中にも少ないという気がしています。

よく腱板損傷という言葉を使いますが、
肩板損傷?と書いている人もいますし、
ときに腱板骨折?と書いている人も見かけたことがあります。

 

ただ、腱板骨折には驚きました。
腱板を骨だと思っている人が、
医療関係者にもいるということです。

ということで、まず
肩腱板とはなんぞや?ということから入ります。

肩の腱板

もっと細かく言うと、ということになりますが、

最初の肩はいいですよね。

次に「」ですが、

筋肉は骨にくっつく前に
より筋張って、硬めの線維に移行します。
筋肉の力を骨に効率よく伝えるためです。
この筋肉の続きの硬めの線維を「腱」
といいます。

次に「板」ですが、
これは解剖学用語というよりは、
見た目の特徴を表したモノと考えてください。

 

この腱板を構成する筋肉は肩のインナーマッスルと呼ばれます。
それは深いところ、関節に近いところにある筋肉だからであるわけですが、

特に重要なモノが
4つあり、

それぞれ

  1. 肩甲下筋(けんこうかきん)
  2. 棘上筋(きょくじょうきん)
  3. 棘下筋(きょっかきん)
  4. 小円筋(しょうえんきん)

という名前がついています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この4つの筋肉が、腱となって、
最終的には合流して「板」状になります。

だから、「腱板」というわけです。

つまり、

肩腱板というのは、
4つのインナーマッスルの腱が
最終的に合流した部位のこと

腱板を構成する腱板筋群とは
4つのインナーマッスルのこと

と言えます。

肩腱板損傷は単なる筋損傷、筋断裂とは違う

この肩腱板が、損傷してしまう。
それはつまり、程度の差こそあれ、断裂してしまう、
切れてしまうわけですが、

これを他の筋肉の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

 

通常は筋肉が切れてしまっても、
だんだんと修復されて、

ある程度の強度が回復して、
筋肉がくっつきます。

 

つまり、よほどの重症でない限りは、
肉離れに対しては手術はしません。

また、筋肉ではなく、
その先の腱の損傷として、
代表的なものが
アキレス腱損傷(断裂)だと思いますが、

このアキレス腱損傷は
手術でなくても、ギプスなどの固定で治すこともできます。

肩腱板断裂は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
そうはいきません。

その一番の理由は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように断裂してしまうからです。

骨と腱という

カタいものと
ちょっとカタめのスジ

という別の性状を持つもの

これがくっつくというのは、
筋肉同士や腱同士がくっつくことにくらべ、
難しいということです。

そのため、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、
むしろ逆に拡大していってしまいます。

つまり、重症化していく
ということですね。

肩腱板損傷は症状だけでは判別できない

多くの肩腱板損傷の患者さんを拝見してきますと、
まったく肩が上げられない人もいらっしゃれば、
痛くて眠れない人もいらっしゃれば、

ちょっと痛い程度の人、

時には痛みが全くない人までいます。

 

そういった経験から、

私は肩が専門だからこそ、

症状だけでは肩腱板が損傷しているか否かを
完全には判断できないと考えています。

そのため、症状の経過や
患者さんの求めるレベルと肩の現状の機能のギャップ
などから判断して、

積極的にMRIや超音波などで
肩腱板損傷(断裂)の有無をチェックしています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩腱板損傷の治療法

それでは治療方法にうつります。

手術をする場合も手術をしない場合も、
痛みに対する炎症を抑える治療と、
リハビリテーションが重要です。

痛みに対する治療

腱板が切れてしまうと、
身体は当然、治そうとします。
(実際は自然治癒は期待できないとしても)

その反応のひとつが
炎症反応です。よく聞きますよね。

これは痛みを伴います。

ですから、いわゆる痛み止めは

消炎鎮痛剤と呼ばれるわけです。

炎症を消して、痛みを鎮める

ということですね。

これには湿布(貼り薬)などの外用剤や
内服薬(飲み薬)が使われます。

Taking medicine

また、腱板損傷部周囲に、
炎症を強く抑える作用がある
ステロイド剤を注射することも
よく行われます。

ステロイドは全身に回ると副作用が多いですが、
注射で局所に注入することの副作用は多くはありません。

Young doctor women give an injection

Young doctor women give an injection

ただ、これらの治療は、
損傷した腱板を治す

という目的ではありません。

腱板をくっつける薬というものはないわけですね。

 

しかし、痛みを抑えないと、
肩の動きに支障をきたします。

結果、肩がカタくなったり、
リハビリテーションが進まない

ということになりますので、
ひとつの重要な治療のピースです。

肩腱板損傷のリハビリ方法のポイント(手術なし)

リハビリについては、まず手術を行わず、
保存治療を行った場合のポイントを解説いたします。

手術をした場合は修復した腱板の再断裂を防ぎながら、
肩の働きを再獲得していく必要があります。

そのため段階的に肩に対して負荷が強いリハビリテーション種目を
増やしていくというやり方になりますので、
主治医とよく相談しながらやりましょう。

こちらもご参照ください。

肩腱板損傷のリハビリ禁忌は? 肩専門医解説

2016.12.16

急性期は肩甲骨運動を中心に

急性期というのは、
正確には腱板が切れてしまってから
数週間の痛みが強い時期

という意味ですが、

実際には「いつ腱板が切れてしまったか?」
ということはわからないことが多いんですね。

そのため、

シンプルに痛みが強い時期

を急性期としましょう。

 

この痛みが強い時期の
治療としては、

その痛みの原因である炎症を
抑えるということに主眼が置かれます。

つまり、さきほどの薬を使うということですね。

この急性期にリハビリということで、
無理にたくさん肩を動かすと、
炎症が強まって、痛みが強まりかねません。

そこで肩関節は安静気味に、その根本の
肩甲骨をあらゆる方向に動かす。

ということをオススメします。

シンプルな方法としては、
CAT(きゃっと)と呼ばれる
四つん這いで肩甲骨を広げて、寄せて
を繰り返すエクササイズ

肩すくめ運動(肩甲骨持ち上げ)がオススメです。

炎症が落ち着いたら肩の可動域訓練

炎症が落ち着いて
痛みが楽になってきたら、

肩関節を動かし始めます。

 

肩腱板損傷の場合は、
肩関節がカタくなるケースは
あまり多くないのですが、

それでも、挙上、外転という
腕を上に上げていく範囲(可動域)は徐々に
狭まってくることがあります。

また、自動可動域といって、
自分の力で挙げる
というときには

痛みが走ってしまい
挙がらない(挙上、外転)

後ろに腕を回せない(内旋、伸展)

というケースはよくあります。

 

こういったときに、
特に腱板損傷では

アウターマッスルに力がより入ってしまい、
肩の動きがスムーズでなくなってしまうことが
1つの原因です。

そこで、いかに無駄な力を入れずに
肩を動かしていくか

ということが大切です。

その感覚を一番養いつつ、
動かす範囲を広げていくのに、いつもご指導するのが

振子運動訓練と呼ばれる
エクササイズです。

力を抜いて、身体ごと、腕を揺らすことで、
脱力した肩から先がが動かされる感覚で
動かしていきましょう。

肩腱板損傷の手術治療

そもそも手術はした方がいいのかどうか?

ということについて、
考えていきたいと思います。

肩腱板損傷の手術は必須ではない

まず僕がいつも話すことですが、

「肩の腱板損傷を放置したとして、
命に関わるモノではありません。

ですから、絶対に手術をしなくてはいけない
ということはありません。」

これは極論です。

しかし、どうしても、医師から「手術」と言われれば、
手術しなくてはいけないもの
と思ってしまう患者さんがいらっしゃるのでお話ししています。

これは極論ですが、事実で、

患者さん個人個人の
肩関節に対して求めるレベルと、

現状の肩関節の機能、はたらき、痛み

そして、

肩腱板損傷があるという中での、

今後の経過の予測
(残念ながらだんだん断裂は拡大していく傾向がある)

これらを総合的に判断して、
手術がオススメの場合は提案しますし、

手術はやめておきましょうという
提案をすることもあります。

肩腱板損傷の手術は行わなくても放置はしない

手術をしない
という判断をした場合でも、

何度も言うとおり、腱板損傷というのは、
多くは重症化していくモノです。

そして、難しいのは、その重症化が、
必ずしも
症状に表れず、

症状に表れたときには、
もう手遅れなくらいに
(腱板修復できないくらい)
重症化している

なんてことがあるんです。

そのため、保存治療の結果、
症状が改善したとしても、

1年に1回など、
ある程度の期間を置いて、
肩の超音波やMRIによる
腱板断裂の状態の評価をオススメしています。

 

さらに、肩腱板断裂の手術方法についての詳しい方法はこちらの記事をご参照ください。

腱板断裂の手術がうまい名医の探し方 肩専門医解説

2018.01.12

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五十肩・肩の拘縮

肩の拘縮とは?

拘縮(こうしゅく)=関節がかたくなってしまった状態(正確には可動域制限がある状態)

これが肩関節に起こった場合に拘縮肩(こうしゅくかた)と呼ばれるわけです。

困ってしまうのは腕が上がらない、
腕を後ろに回せないなどの症状の結果、

洋服や下着の着脱が難しいとか、
洗濯物を高いところに干せないとか、
腕を遠くに伸ばせないなどの日常生活での不便な点が出てきますし、

さらにスポーツなどをやっておられれば、その種目、動きによってはかなり困ることになります。

拘縮肩の治療法

ではこの拘縮肩の治療法です。

多くの拘縮肩の原因は関節包(かんせつほう)です。

関節包は関節を全周性に覆っている薄い膜のことですが、これが拘縮肩の場合は分厚く、硬くなってしまっています。
そのせいで幅広くは動かせなくなっているんですね。

この状態を改善する治療法としては、
じわじわと関節包に刺激を加えて、時間はかかってもリハビリテーションやストレッチで拘縮を解除していく方法と、

分厚くなってしまっているのなら、切ってしまえばいい、剥がしてしまえばいいという手術治療があります。

通院リハビリテーション

まずジワジワとかたくなった肩をほぐしていくリハビリテーションですが、なかなか大変です。

ほぐすと言っても肩こりのマッサージのようなことをするわけではありません。それはほとんど意味がないと考えられています。

肩がカタくて動かない中でもジワジワと動く限界を攻めるようなリハビリテーションになります。

例えば、この動画のように療法士が関節を動かしていくようなことを行っていきます。

それを病院に通院しながら専門のセラピスト(作業療法士や理学療法士)に肩を動かしてもらったり、彼らの指導のもとでのストレッチをしたりします。
これは頻度としては毎日できれば一番いいわけですが、なかなかそこまで通院できる人は多くないです。逆にセラピストの予約も毎日取るのは難しくて、週に1回程度になってしまうところも少なくありません。

それどころか外来でのリハビリは手術後の患者さんで手一杯という病院も多いです。

自宅でセルフストレッチ

そのため毎日、自宅で自分でストレッチをやることがとても重要になってきます。

肩関節の動きとして、特に使いやすさのポイントになるのは

挙上(屈曲)もしくは外転という動きで、要は前からや外からバンザイまで腕を上げていく動きです。

この挙上、外転の練習、ストレッチ(リハビリ)としての代表的な訓練が、
振り子運動訓練(pendulum exercise)と呼ばれるもので、

頭を下げて腕をだらんと垂らすところから
身体を揺らしながら振り子のように腕を前後だったり円を描くように振っていく訓練です。

さきほどの腱板損傷のリハビリでも紹介しましたね。

特に頭を腰よりも低く下げるくらいに体幹を前屈できれば(転倒や体調崩さないように注意してください。)、より脱力したときの挙上角度が高くなり効果が高まります。

さらにこのような長めの棒を使ったエクササイズも効果的です。

こちらは腕を外から挙げていく肩の外転(がいてん)訓練です。棒をつたって左手で右手を外に上に押し出すような動きで右肩を外転(外側から上げていく)させています。

注射して徒手授動術

次に手術のお話ですが、まずは「切らない」手術です。

徒手授動術(としゅじゅどうじゅつ)と言います。最近ではサイレントマニピュレーションという言葉がよく使われます。
これは言い方は悪いですが、術者(医師)がある程度、無理矢理肩を動かして、分厚くなってしまった関節包をベリベリっと切って、剥がしていく手術です。

要は腕を持って動かしていくだけですから、リハビリに似ていますが、

その強度が違います。この一度の授動術で一気に動かせるようになるようにやるので、当然、麻酔がなければ激痛ですし、リスクも伴います。

そのため、まず痛みを抑えるために神経ブロック注射などを行ったり、また、剥がしやすくするために肩関節内に多くの生理食塩水を注入した上で、肩を動かしていきます。特に最近は神経ブロックが超音波を見ながら正確にできるので、上手にやる先生が増えています。

しかし、徒手授動術は無理矢理、肩を動かして剥がしますから、時に骨が弱い人の場合は骨折を起こしてしまうなんて恐ろしい合併症の報告もあります。
また、逆にそれが怖いので、どうしても授動術が不十分になってしまうということも起こりえます。

そんな意味もあって、私ははあまりこの方法はやりません。

次に述べる関節鏡手術の方が、肩にとってはやさしい、丁寧な方法と考えています。これは私の個人的な意見です。

手術 関節鏡下授動術

さて、この授動術ですが手術らしい手術として、今は関節鏡を使って行うことが主流となっています。肩の前後に1–1.5cm程度の小さい創から関節鏡や専用の電気メスなどを関節の中に挿入して、分厚くなってしまった関節包を直接切開していく方法です。

電気メスで焼きながら切り開いているのが関節包ですが、かなり赤く充血しているように見えると思います。これが炎症した関節包の特徴ですが、この炎症部分もクリーニングできるというメリットもあります。

また徒手授動術では関節包がちぎれるように切れていくのに対して、この関節鏡下授動術では電気メスで血管を焼灼しながらキレイに切開していくので、再発しにくいと考えられています。

これは習熟した肩専門の医師が行えば30分くらいで行える手術です。しかし、実際は神経(腋窩神経)が近くを走っており、さらに関節内のスペースが拘縮肩の人は狭いので、慣れない医師がやると神経障害のリスクやうまく手術が行えないリスクもあり、誰もができる簡単な手術というわけではありません。

石灰沈着性腱板炎

肩の石灰化とはどういうこと?

肩の石灰化というのは、その多くが肩のインナーマッスルである腱板の中にリン酸カルシウムの結晶が沈着している状態です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)

このリン酸カルシウムが沈着した石灰の結晶があるからと言って、かならず痛いわけではなく、その石灰の周囲に炎症が起こったときにはじめて痛みが出てきます。

これは石灰沈着性腱板炎という診断名がつきます。

実際には石灰は腱板の中だけでなく、その外の滑液包(かつえきほう)という部分にまで及んでいることもありますが、一番多いのは腱板の中でも棘上筋(きょくじょうきん)という筋肉の中です。

原因は不明だが変性と炎症の関連

この肩の石灰化は原因ははっきりしていません。

腱板が部分的に壊死(細胞が死んでしまう)した結果だとか、カルシウムイオンの透過性亢進(とうかせいこうしん)だとか、リン酸の代謝との関連とか、いろいろ言われますが・・・結局今のところはっきりしません。

ただ、女性に多いこと、子どもには稀なことは明らかで、40–50歳代の人に多い印象があります。

そういう意味では四十肩、五十肩の時期と被りますね。少し加齢性に腱板が傷んでくる(変性)・・・けど、肩を酷使する(結果としての炎症)年齢という意味合いかもしれないと考えています。

肩の石灰化の激痛は石灰が溶けるとき

この肩の石灰化の結果起こる、石灰沈着性腱板炎は激痛に襲われ、救急外来を受診されることも少なくありません。

この激痛になっているときは、石灰ができあがったときや、できあがり途中のときではないんですね。実は多くの場合もともとあった石灰が吸収され、小さくなり、消失しようとする反応が起こっているときです。

それを炎症反応と言ってもいいわけですが、
要は、石灰は身体にとっては異物に近いものですから、それを排除しようと炎症を起こして、溶かしてしまおうというメカニズムが働きます

その炎症反応が多くの場合とても強いので痛みが激痛になると考えられています。

肩の石灰化の治療

肩の石灰化の治療を大雑把に捉えていただきたいと思います。

肩の石灰化、それ自体は症状がなければ放置しても問題ないモノです。
しかし、石灰化を溶かそうと吸収しようとする反応の結果や、石灰化が肩を動かす時に引っかかったりこすれたり(インピンジメント症候群と言います)して、

炎症が起こってしまうと、痛みや可動域制限が出現しますので、治療をしないといけません。

 

この炎症の原因、根本から叩くということが基本ですが、

たとえば、石灰化を溶かそうとしている結果の炎症であれば、根本治療は溶けるのを待つということになります。

ただ、この溶けている期間は激痛ですのでその痛みを少しでも抑えるために炎症を抑える消炎鎮痛剤を飲んだり、さらには注射をしたりするわけですね。

また、炎症の原因が、残っている石灰によるインピンジメントだとすれば、ひっかかりや摩擦が起こらないように石灰そのものを削り取る、掻き出すという直接的な処置が根本治療と言えます。
これも注射よりも、関節鏡による手術で直接掻き出すのが確実です。

治療のより詳しい方法についてはこちらもご参照ください。

肩の石灰化の治療法まとめ 肩専門医が解説します

2017.10.20

投球障害肩

投球障害肩(野球肩)とは?

投球障害肩(とうきゅうしょうがいかた)とは

つまり、投球動作の繰り返しで起こる
肩の痛みのことです。

つまり、肩のどこが傷んでいる
ということを表した言葉ではないので、
投球障害肩(野球肩)と言っても、いろいろな病態があるわけです。

野球肩の一番の原因は?

野球肩には様々な病態がありますが、

その原因のほとんどは

投球動作の繰り返しです。

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ここでもう少し、投球動作の中で
肩関節に何が起こっているか?

ということを理解すると、

様々な病態の野球肩にも
共通した原因が見えてきます。

投球動作中の肩は回旋運動+αが実状

実際、投げるという動作において、

一番大きく動いているのは、
肩関節の外旋と内旋という動きです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

投球動作中のこの外旋と内旋という動きは、
日常生活では通常経験しない可動域(動く幅)とスピードです。

そのため、何度も繰り返せば、
様々なところに無理がくる

というのが原因です。

少し前、この投球動作中の肩の動きがわかってきた頃、

「野球ボールを投げるときはストレートだろうと変化球だろうと
肩は内旋外旋・・・つまり捻って投げている!」

ということを強調し、
肩を意識して捻って投げるようとして、

肩の障害を誘発したと思われるケースが続発した時代がありました。

肩で起こっている現象は
肩の回旋運動(内外旋)ですが、

それを意識して起こすことでパフォーマンスが上がる

とは考えないことが大切です。

逆に、その肩の回旋運動を意識して強調することは、
肩関節への負担を増加し、投球障害に繋がりかねない
と考えています。

肩の回旋運動で負担がかかるのは?

この肩関節の回旋運動で負担がかかる部位は
たくさんあります。

その中でも、

肩の回旋運動を直接起こしつつ、
肩を安定化させている
インナーマッスル、腱板筋群であったり、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩の安定化の最重要組織である軟骨性の、
関節唇(かんせつしん)

glenoid_anatomy

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

肩の前方の安定性に大切な
腱板疎部(けんばんそぶ)

などが代表的です。

つまりは野球肩の病態は
これらの組織が肩の内外旋運動によって傷んでしまう
ということが多いわけです。

野球肩の病態はたくさんある

さきほど述べたとおり、
野球肩といっても、
いろいろな病態があり、

痛みの原因部位や、
傷むメカニズムがいくつかあります。

その代表的なものを
挙げていきます。

インターナルインピンジメント

病態、メカニズムとして、

インターナルインピンジメント

と呼ばれるものがあります。

これは主に、
肩を挙げて(外転)、かなり外旋した状態

つまり、

いわゆる腕がしなっている瞬間に起こるものです。

Kristofer Michael Johnson (Hiroshima Toyo Carp)

このとき、実際には関節の中で
後上方を走る棘下筋(きょくじょうきん)と、
後上方にある関節唇(かんせつしん)が、
衝突、こすれてしまう状態です。

この衝突・こすれをインピンジメントと言い、

インターナルというのは関節という意味です。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

それを繰り返せば、
その擦れたどちらかが損傷する。
もしくはどちらもが損傷する

ということが起こるわけですね。

SLAP病変

さきほどのインターナルインピンジメントの結果が多いのですが、

上方関節唇が損傷してしまった状態
SLAP病変といいます。

これは

Superior Labrum Anterior Posterior 病変

の略で、

要は上方を中心に前や後ろまで
関節唇が傷んでしまった状態

と言えます。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

棘下筋損傷(腱板損傷)

さらにインターナルインピンジメントにおいて、

もう一つの擦れる相手、

棘下筋腱(きょっかきんけん)が損傷してしまう。
特に関節面の部分損傷が多いのは

関節内におこるインターナルインピンジ年とのメカニズムからも当然のことと言えます。

 

腕が最大にしなった辺りやその直後くらいの痛みが
多いだろうと思います。

腱板損傷についてはこの記事でも前述しております。

肩峰下インピンジメント

このインピンジメントにはインターナルインピンジメントの他に
もう一つ代表的なモノがあります。

それが肩峰下インピンジメント(けんぽうかいんぴんじめんと)と言います。

こちらで詳しく解説しております。

インピンジメント症候群の治療を肩専門医が解説

2016.12.10

これは肩峰という肩の骨の下面(裏面)、
もしくは肩峰にくっつく烏口肩峰靱帯という靱帯と、

その下を走る棘上筋腱の擦れと考えられており、

 

結果、腱板損傷の中でも
棘上筋腱損傷が起こりやすくなります。

主に外側の痛みとして
訴えがあり、

投球動作のバックスイングで痛みがあるとすれば、
この可能性も十分あり得ます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

上腕二頭筋長頭腱炎(じょうわんにとうきんちょうとうけんえん)

力こぶの筋肉として有名な
上腕二頭筋ですが、

この「二頭」の1つ、
長頭(ちょうとう)は肩の前方から上方を通って、
関節の中に入ります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

そのため、肩関節の運動において、
負荷がかかりやすく、
炎症を起こしやすい部位です。

腱板疎部損傷

腱板疎部損傷というのは、
腱板のうち、
前方の肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)と棘上筋腱(きょくじょうきんけん)の間の
損傷です。

腱板疎部損傷については
こちらの記事をご参照ください。

腱板疎部損傷とは?治療法は? 肩専門医解説

2016.12.14

投球障害肩の治療の原則は保存治療

これら野球肩の治療としては、

手術をしない保存療法
手術療法にわかれます。

 

他の記事でも述べていますが、
野球肩の場合は特に手術をせずに治す

これがまず目指すべきところです。

 

その1つの理由としては、

野球肩の場合は日常生活レベルでは
症状がないことが多いことがあります。

投球という激しい肩の動きに耐えられないが、
日常生活には問題ないというのは、

多くの一般の方が手術が必要になるような
腱板完全断裂や変形性関節症のような
明らかに手術で修復した方が改善を期待できる

というわかりやすい損傷、障害
ではないということが考えられます。

そのため、まずは保存療法が優先されます。

一般的な保存療法としては、

炎症を抑える薬の内服(飲み薬)やステロイドなどの注射のほか、
ノースローなどの安静や、時に関節を固定することなどが
行われます。

Young doctor women give an injection Taking medicine

しかし、野球肩の場合には、
それ以上に重視すべきことがあります。

原因をつきとめることが最重要

これは手術をする場合でも同様に重要ですが、

野球肩の病態、痛みの原因
できるだけ正確につきとめること。

これが最重要です。

 

当然と言えば当然なのですが、

先ほども述べたとおり、
わかりやすい損傷がないことも多い
野球肩においては、

これが意外と難しいんです。

 

そして、診断がうやむやなまま
治療を行い、泥沼にはまる・・・

これをなんとか避けないといけません。

症状などから病態に迫る
ということについては
こちらで解説しております。

野球肩の症状から中で何が起こってるか推測! 専門医解説

2016.12.19

病院にてリハビリテーション

原因を明らかにした上で、
症状を改善していくときに、

まずはリハビリテーションを行う

というのが基本です。

 

これは病院やクリニックで受けるモノで、

医師が診断、原因を絞った後に、
理学療法士、作業療法士という
いわゆるリハビリの専門家の指導の下、

関節をやわらかくしたり、
基本的な動きを指導したり

ということが通院のリハビリテーションになります。

筋トレ、ストレッチなどセルフリハビリ

病院でやるリハビリは
毎日できるわけではありません。

そこで、自分で自宅でしっかりやる。
というセルフリハビリというのが非常に大切です。

それは病院でできることの
時間的な制約もそうですが、

なによりメンタリティーとして、
自立して、自分が努力して治していく。

誰かに治してもらうんじゃなくて、
自分で治す。
(診察や指導はしっかり必要です)

 

さらに、セルフリハビリを行うことで、
自分の身体と対話する
ということが重要だと考えています。

 

自宅でできる可動域訓練などの
セルフリハビリについては

こちらの記事をご参照ください。

野球肩のリハビリポイントを肩専門医が解説

2016.12.20

投球動作改善

これは現場レベルで行うことですが、
投球動作の改善が一番根本的な解決
であることが多いです。

 

投球パフォーマンスとの兼ね合いもあり、
簡単ではありませんが、

選手と医師、リハビリ専門家、
コーチ、監督

みんなで話し合う

なんてことができれば一番いいわけです。

 

ただ、そういう場は
なかなかできないというのが現状です。

わたしの場合は、
できる限り現場に顔を出す
ということや、

選手に間を取り持ってもらって、指導者やトレーナーと連絡を取り合う。
なんてことで、少しでもこの問題を
解決できればと思っています。

1つの方法として、
「テーピングで投球動作改善のサポート」
ということをこちらを参照してください。

野球肩のテーピングのポイントを肩専門医が解説

2016.12.23

野球肩の手術治療法

これらの保存療法で改善が得られない場合や、

また、明らかにわかりやすい、治すべき損傷がある場合
(腱板の完全断裂など)は、

手術治療が選択されます。

野球肩の手術療法については
こちらをご参照ください。

野球肩の手術とは?方法や費用など丁寧に解説

2016.12.23

肩鎖関節炎・肩鎖関節脱臼

肩鎖関節(けんさかんせつ)とは?

まず肩鎖関節(けんさかんせつ)とは?という基本ですが、その名の通り、肩と鎖骨の関節・・・もっと正確に言うと、肩甲骨の肩峰(けんぽう)という部位と鎖骨の外側の端っこからなる関節です。多くの人にとって、あまり関節として認識されたことはないかもしれません。

鎖骨を真ん中くらいから外側にずーっとなでるように触っていくと、少し盛り上がって、またすぐ凹んで・・・でも、骨は触る。という部位があると思います。

の盛り上がったところが鎖骨の端っこで、凹んだところが肩鎖関節で、またその外側に骨が触れる部分は肩甲骨の肩峰です。なかなか慣れないと判別はつきにくいかもしれないです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩を動かすときにはかなり肩甲骨も連動して動くわけですが、その肩甲骨が動くときの1つの支点となっているのが肩鎖関節です。

肩鎖関節炎の治療コンセプト

肩鎖関節炎の治療コンセプトですが、手術をしない保存治療としては

  • 痛みの原因となる炎症を抑える
  • 炎症を起こしにくくする(負担を減らす)

ということになります。

炎症を抑えるということでいえば、一般的な消炎鎮痛剤の内服(飲み薬)、湿布(貼り薬)などの外用剤から始まり、結構効果が高いのが肩鎖関節の中にステロイドと局所麻酔薬を注入する関節内注射療法です。

Young doctor women give an injection

そして、さらに炎症の原因となる肩鎖関節炎への負担を減らすためにストレッチを行ったり、テーピングなどを併用することもあります。

肩鎖関節炎でやりたいストレッチ

肩鎖関節という関節は鎖骨と肩甲骨からなる関節ですが、僧帽筋という首から鎖骨に走る筋肉がカタまっていると、常に鎖骨を上に引き上げようという力が強く加わってしまいます。

肩鎖関節脱臼や鎖骨骨折でズレが生じる原因の多くはこの僧帽筋の作用です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

僧帽筋がカタいと常に負荷がかかっていると考えた方がいいので、僧帽筋の緊張を下げるストレッチをやってみるといいかと思います。

こちらの記事では僧帽筋を含めた首から肩まわりの筋肉の緊張を落とす方法についてお伝えしていますのでご参照ください。

肩の他に首や背中が痛いときの原因と治療 専門医解説

2017.11.22

肩鎖関節炎で行う手術 鎖骨遠位端切除術

肩鎖関節炎に対して、ここまで解説したような保存治療を行ったところで、痛みなどが改善しない場合や改善するも繰り返してしまう場合には手術が検討されます。

実際は肩鎖関節炎と言っても、

  • 軟骨がすり減っている変形性肩鎖関節症(へんけいせいけんさかんせつしょう)
  • 鎖骨の先端が溶けてくる鎖骨遠位端融解症(さこつえんいたんゆうかいしょう)
  • レントゲン上は特に異常がない肩鎖関節炎(けんさかんせつえん)

という主に3つの状態があります。

軟骨がすり減り、一部骨が肥大、一部びらん(溶ける)状態 画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

ただ、どの状態においても基本的に行われる手術は鎖骨遠位端切除術という、鎖骨の先端を削り取ってしまう手術です。

鎖骨や関節円板を取ってしまって大丈夫?

通常、他の関節の炎症や軟骨のすり減りが強いときに行われるのは人工関節手術なのですが、肩鎖関節には人工関節はありません。

それは技術的な問題もありますが、メリットがほとんどないからです。

膝なんかは人工関節がなかったらどうしようもありません。
膝の一部の骨を削り取ったら歩けなくなっちゃいますからね。

でも、鎖骨の先端を削ってしまって、通常の肩鎖関節という軟骨と軟骨が向かい合って、間にクッションである関節円板がある構造がなくなってしまっても、肩は全然動かせるし力も入るんです。

軟骨と関節円板はなくなっても、関節鏡手術であれば上の支えている肩鎖靭帯は一部残り、さらに特に大切な烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)という靭帯をほぼ完全に残せます。そのため、鎖骨が不安定にグラグラしてしまうこともなく、さらに僧帽筋や三角筋などの筋肉も残るので力も入ります。

arthroscope surgery

肩鎖関節炎の治療についてもこちらでさらに詳しく解説しております。

肩鎖関節炎(症)の治療 ストレッチから手術まで専門医解説

2017.12.01

肩鎖関節脱臼

肩鎖関節が脱臼した状態だと何が悪い?

肩鎖関節脱臼の治療について考えるときに、極論ですが、「放っておくとどうなるの?」ということ、専門的には自然歴と言いますが、これを知っておく必要があります。

つまり、肩鎖関節が脱臼したままではどうなってしまうのか?

ということです。

これは、他の脱臼、例えば、肘や肩関節の脱臼のように、
脱臼したままでは痛すぎて全く動かせない・・・
それどころか、周りの神経などにも悪影響が出かねない大変な状態・・・

というのとはちょっと違います。

もちろん、脱臼した直後は痛いですが、徐々に痛みがひいてきて、ある程度なら脱臼したままでも肩を痛みなく動かせることはよくあることです。

そんな中で肩鎖関節脱臼がそのままのときに、どういう症状が残ってしまうことがあるのか?ということです。

肩を動かすときに不安定で痛みの原因になり得る

痛みなく動かせることが多いと言いましたが、それでも脱臼の程度によっては肩を動かすときに肩鎖関節部分で鎖骨の先端が不安定に動いてしまうために痛みの原因になったり、肩甲骨の動きの異常が出てしまい、それが痛みの原因になったりします。

これは非常に重要なポイントなんですが、重症度分類というものがあります。

軽症なものであれば、痛みが残りにくいと思われますし、重症であれば手術しないと痛みが残りやすい・・・

そして、軽症と重症の間が悩ましいということになります。

肩の筋力が落ちる

肩が麻痺したように挙げられない・・・のような、強い筋力低下はほとんどありませんが、アスリートレベルでは気になる筋力低下が起こりえます。

それは理屈で考えれば、筋肉の付着部になっている鎖骨の先端や肩峰が不安定になるわけですから、脱臼の程度によっては当然考えられる症状です。

見た目が気になる・・・

また、肩鎖関節脱臼のときは、脱臼した鎖骨の先端が飛び出してしまっています。

これは肩を出すようなファッションの時は目立つかもしれません。

そういった美容上の問題も、どのくらい気にするかは個人差がありますが、軽視はできませんよね。

保存治療(手術以外の治療)の方法

手術をしない場合はどうするのか?ということですが、できるだけ肩鎖関節脱臼が元の位置に近い状態をキープするということを考えます。

肩鎖関節脱臼の多くのケースは

鎖骨が上(頭方向)
肩甲骨が下(足方向)

という外れ方をしています。

これは肩甲骨から腕全体の重みで肩峰(肩甲骨)が下がってしまっていることを表しています。脱臼していないときは靱帯が支えてくれているわけですが、肩鎖関節脱臼では靱帯が切れているために、このような外れ方(脱臼のしかた)をするわけですね。

この下に落ちた肩甲骨を上に上げるために物理的にやることは、三角巾や装具などで腕全体を少しつり上げた状態をキープすることです。

手術をしないと肩鎖関節の完全脱臼はほぼ整復できない

ただ、四六時中、その状態をキープすることは困難ですし、単に腕全体を持ち上げただけでは完全に整復することは困難です。

さらに整復位置をよくするために、鎖骨を上から押さえるバンドもついた特殊な装具を使うこともありますが、それでも元に戻す効果は限定的です。

そういった意味で、手術に勝る整復と整復維持方法はないと考えていいです。

結局、手術した方がいいの?しない方がいいの?

ここまで手術をするかしないか?という一番大切な判断において、
必要な情報をご提示してきました。

そこで、シンプルに言えば、

  • 重症度分類で重症なものは手術を積極的に考える
  •  type3と呼ばれる重症と軽症の間は迷う。個人個人でオススメが異なる。
  • 個人個人の違いで考慮するポイントは肩をどれだけ使うか?と美容上の問題を気にするか?

ということになると思います。

ここまで肩鎖関節脱臼で影響することとして、肩鎖関節の不安定性による肩の痛み肩まわりの筋力低下(ある程度高いレベルでの筋力で、日常生活には影響ないことが多い)をお伝えしました。これらを考慮すると、傾向としては肩をよく使い、負担がかかる肉体労働者、アスリートなどは手術を積極的に考えるということになります。

肩鎖関節脱臼の治療 手術すべきか否か?

2017.03.31

 肩こり・頸肩腕症候群

肩こり・頸肩腕症候群の原因となる筋肉

肩こりについて考えるときに大切な、
原因となる筋肉について整理してみます。

肩こりの代表的な症状は
首から肩甲骨、背中にかけての痛みです。
そこに位置する代表的な筋肉を4つご紹介します。

僧帽筋(そうぼうきん)

1つ目は僧帽筋(そうぼうきん)です。
この筋肉はかなり大きく幅広く走っている筋肉で、痛みの原因として最も頻度が多いのではないかと考えています。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

その理由はやはり、その幅広さ、サイズです。

背骨から肩甲骨や鎖骨にくっつきますが、肩甲骨の上から下に走る上部線維、肩甲骨に真横に走る中部線維、肩甲骨の下から上行する下部線維と3つの部分に分かれます。

つまり、首から肩甲骨、背中にかけてが痛い場合、どこが痛くてもある意味、僧帽筋が原因である可能性があると言えます。

胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

これは肩甲骨ではなく鎖骨や胸骨という前側の骨をつないでいます。首の代表的な筋肉です。首筋の左右前よりが痛い場合はこの胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)が痛い可能性があります。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

この胸鎖乳突筋の首の付け根は乳様突起(にゅうようとっき)という耳のすぐウラ側の骨の出っ張りです。その場所から鎖骨や胸骨に向かって走っているのがこの筋ですから、そのどこかで痛い場合は胸鎖乳突筋の可能性が高いです。

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

次に肩甲挙筋(けんこうきょきん)です。

これは首の骨である頚椎(けいつい)から肩甲骨の内側、上側の角(上角)につきます。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

その名の通り肩甲骨を上に挙げる筋肉ですね。

ある意味この筋肉は常に重力によって落ちようとする肩甲骨を引き上げている筋肉と言えます。頑張っていますよね。そのため、これも痛みの原因になりやすいです。

菱形筋(りょうけいきん)

菱形筋(りょうけいきん)は背骨と肩甲骨の内側をほぼ真横に走っているインナーマッスルで、肩甲骨を背中に引き寄せる働きがあります。この表面には先ほども解説した僧帽筋の中部線維がありますので、どちらが痛みの原因かはっきりしないこともあります。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

ただ、菱形筋は肩甲骨の内側のラインにくっつきますが、
僧帽筋は結局、肩甲骨の肩甲棘という部分や肩峰という部分にくっつきますので、

肩甲骨の内側のラインに沿っての痛みの場合は菱形筋の付着部の痛みの可能性が高いと判断します。

これらの筋肉に対するストレッチ、エクササイズについてはこちらで詳しく解説しております。

肩の他に首や背中が痛いときの原因と治療 専門医解説

2017.11.22

右肩の痛みと左肩の痛みに違いは?

肩の痛みでも右肩と左肩で原因や治療に違いが出るのかどうか?というお話です。

結論からすると、そんなに違いはないと思っていいのですが、それでもあえて言うと、内臓の関係利き腕の関係が少し気になるところです。

内臓からの痛み

肩の痛みの原因が内臓にあるなんてことが稀ですが、あるんですね。

有名なのが左側にある臓器である心臓。この病気である心筋梗塞が最初、左肩の痛みで始まることがあるということです。関連痛といって、心臓があるところがダイレクトに痛むだけではないというのが内臓のやっかいなところではあります。

利き腕かどうか

利き腕かどうか?というのは原因もそうですが、特に治療において重要になります。

利き腕が右の場合の右肩の痛みでは、利き腕なので余計に困るということになりますし、将来的にも右肩はより使うことになるので、積極的に手術をしてでも治すということの必要性が多少高まるということは言えるかもしれません。

あとは、仕事やスポーツなどでも利き腕かどうかはポイントになりますね。

利き腕はより使うので大切という基本の他に、利き腕じゃない手で何を支える仕事やスポーツだったりすれば、利き腕じゃない左肩の痛みもやはり積極的な治療の必要性が高まったりします。

基本的には命に関わらないのが肩の痛みですから、そういった患者さんの背景も伺いながらの治療方針決定をするというのは大切なポイントだと考えています。

肩の痛みとストレスの関係は?

肩の痛みとストレスは関係あるのか?ということも聞かれます。

特にストレスと関連があるのは自律神経系で、ストレスが強いときは交感神経が優位になっているわけですが、その場合は血管が収縮します。細くなるということですね。

とすると、血の巡りが悪くなるので、一番起こりやすいのは

肩こりです。

肩の筋肉がこわばってしまう、カタくなってしまうという状態ですね。

このメカニズムはわかりやすく、間違いなく働いているだろうと考えられますので、ストレスと肩こり、頸肩腕症候群の関連は大いにあると言っていいのではないかと思います。

しかし、それ以外の腱板損傷四十肩、五十肩、その他、様々な肩の痛みの原因とストレスの関連は「あるかもしれない」という程度と考えています。ストレスで腱板が切れてしまう・・・なんてことはないかなと思いますが、やはり肩関節周囲の筋肉などの血流が落ちて、痛みが出るということはあり得ない話ではないと思います。

特にいろいろ調べて、調べて、特に異常がなく・・・というケースではストレスの関連も気にしたいですね。

まとめ

肩の痛みの具体的な症状から、その原因(診断名)を推測し、それぞれの原因に対する知識を深め、治療法についてご理解いただけたかと思います。さらに詳しい記事もご紹介しておりますのでご参照下しさい。

結局、最終的には肩の専門医の診察を受けていただくのが一番の近道になると思いますので、ご検討ください。

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歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。