肩脱臼後のいつまでもとれない痛みは要注意 専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩関節が脱臼してしまった!!

これだけで一大事だと思いますが、その整復方法や癖になってしまうメカニズム、治療法についてもさまざま紹介してまいりました。

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今回は肩の脱臼は整復してもらい、その後、幸いにも癖にはなっていなさそう。再脱臼などはないという状況・・・

なのに、

痛い!!

なぜ!?

というお話です。

実際、こういうケースは少なくなくて、精密検査をしてみると、やはり・・・
ということがありますので、肩専門医の視点で解説致します。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩の脱臼後に痛みが残るケース

肩の脱臼後に痛みが残ってしまうときに、何が考えられるかについて解説していきます。

一般的には初めての脱臼後に2−3週間の肩の安静の後に、少しずつ動かしていきますが、多くのケースでは結構すんなり痛みも引いていきます。

しかし、ときに痛みが残って、肩をなかなか挙げられないなど症状が起こりえます。

肩の脱臼のときに骨折も併発しているケース

まず多いのは脱臼のときに骨折も併発しているケースです。

肩が外れる時の衝撃や腱板という筋肉に引っ張られて骨が折れてしまうんですね。
こちらで詳しく解説しております。

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肩の脱臼 + 上腕骨大結節骨折

一つ目は肩の脱臼とともに大結節(だいけっせつ)が骨折してしまった状態です。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

肩が脱臼しないように頑張ってくれている安定化装置はいくつかあります。

  • 関節唇(かんせつしん)
  • 腱板筋群(けんばんきんぐん)
  • 関節包(靭帯)

これらの中で腱板筋群がくっついてる骨が大結節です。

そして、この腱板筋群の頑張りもむなしく脱臼してしまったときに、腱板筋群に過剰に引っ張られてしまって大結節が裂離骨折を起こしてしまう。

というケースが1つ。

また、肩の脱臼はほとんどが前方脱臼ですが、その前方脱臼した時に上腕骨の後外に位置する大結節の根本が受け皿側である肩甲骨関節窩の前方と衝突します。

そのメカニズムでできる陥没病変をHill- Sachs病変というわけですが、それが陥没ではなくて完全に折れてしまえば大結節骨折になってしまう。

そんなケースもあります。

肩の脱臼 + 上腕骨頚部骨折

もう一つの肩の脱臼骨折は上腕骨の頚部で骨が折れてしまうケースです。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

上腕骨(肘から肩にかけての腕の骨)は肩の関節部分は骨頭(こっとう)という球形状をしていて、外側に大結節、前側に小結節という突起があり、その下(肘より)は骨幹部(こっかんぶ)という木の幹に相当する細長い部分になります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

その骨頭や大小結節と骨幹部の間を頚部(けいぶ)といいます。

解剖頚と外科頚に分かれていますが、ここではとりあえず頚部でいいです。

頭と体幹の間は頚(くび)というわけですね。

この頚部で折れてしまって、さらに、骨頭が外れてしまっているのがこのケースです。

合併した骨折が大結節骨折の場合との大きな違いは、脱臼した骨頭と骨幹部が分断されてしまっているということです。

そのため、こちらの方が一般的に重症です。

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肩の脱臼のときに腱板断裂も併発しているケース

肩の安定性を高めているインナーマッスル(深いところにある筋肉)が腱板を構成する筋肉です。

その安定性がマックスに破綻したのが脱臼ですから、腱板が切れてしまう腱板断裂が併発してもおかしくありません。
特に年齢があがればあがるほど腱板はもろくなりますので、腱板断裂の併発率が高まります。

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

肩腱板とは肩の大事なインナーマッスルの腱の合流部

肩腱板(かたけんばん)

これを正確に理解している人が
医療関係者の中にも少ないという印象があります。

よく腱板損傷という言葉を使いますが、
肩板損傷?と書いている人もいますし、
ときに腱板骨折?と書いている人も見かけたことがあります。

肩腱板・・・略して肩板・・・なんてことはないでしょうが、
ちょっとしたケアレスでしょう。

ただ、腱板骨折には驚きました。
腱板が骨だと思っている人が、
医療関係者にもいるということです。

ということで、まず
肩腱板とはなんぞや?ということから入りましょう。

肩の腱板

もっと言うと、ということになりますが、

肩はいいですよね。

次に「」ですが、

筋肉は骨にくっつく前に
より筋張って、硬めの線維に移行します。
この筋肉の続きの硬めの線維を「腱」
といいます。

次に「板」ですが、
これは解剖学用語というよりは、
見た目を表したモノと考えてください。

肩のインナーマッスルと呼ばれる、
深いところ、関節に近いところにある筋肉の中で、

特に重要なモノが
4つあり、

それぞれ

  1. 肩甲下筋
  2. 棘上筋
  3. 棘下筋
  4. 小円筋

という名前がついています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この4つの筋肉が、腱となって、
最終的には合流して「板」状になるので、

「腱板」というわけです。

つまり、肩腱板というのは、
4つのインナーマッスルの腱が
最終的に合流した部位のこと

腱板筋群とは
4つのインナーマッスルのこと

と言えます。

肩腱板損傷は単なる筋損傷、筋断裂とは違う

この肩腱板が、損傷してしまう。
それはつまり、断裂してしまう、
切れてしまうわけですが、

これを他の部位の筋肉の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

通常、筋肉が切れてしまっても、
だんだんと修復されて、

ある程度の強度を持って、
筋肉がくっつきます。

つまり、よほどの重症でない限りは、
肉離れは手術はしません。

また、筋肉ではなく、
その先の腱の損傷としては、
代表的なものが
アキレス腱損傷だと思いますが、

このアキレス腱損傷は
手術でなくても、ギプスなどで治すこともできます。

肩腱板断裂は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
そうはいきません。

その大きな理由は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように切れてしまうからです。

骨と腱という

カタいものと
ちょっとカタめのスジ

これがくっつくというのは、
筋肉同士や腱同士がくっつくことにくらべ、
難しいということですね。

そのため、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、
むしろ拡大していきます。

つまり、重症化していく
ということです。

肩の脱臼のあとに肩が不安定になってしまったケース

脱臼後、肩を安定化させる関節唇や関節包が傷んでしまって、再脱臼まではしないまでも肩を動かすときに肩がグラグラ動くために、どうしても痛みが出てしまう

という状況が起こりえます。

これは肩を動かす時の不安感として自覚することもあれば、不安感、不安定感は自覚しないけれども痛みがあるという状態もあります。

肩の脱臼後にいつまでも痛みが残るときの治療法

この肩の脱臼後にいつまでも残る痛みに対してどういう治療法があるかについて解説します。

骨折併発ケース 特に大結節骨折

骨折を併発しているケースですが、さきほども解説しましたが圧倒的に多いのは大結節骨折ですね。

大結節が折れてしまった場合、その多くは脱臼を整復すると骨折もいい位置におさまってくれます。しかし、ときに大結節が上方や後方にズレていってしまうこともありますので、その場合は手術を考えないといけません。

手術についてはこちらをご参照ください。

肩の脱臼骨折の手術法と全治期間を専門医が解説

2018.03.09

また、レントゲンでわからないレベルの骨折がある場合もあります。これもやはり骨がくっつくまで痛みが残るわけですが、レントゲンでわからない場合もMRIを撮るとわかります。

レントゲンでわからないということはズレがないということなので、基本的には安静と適切な時期のリハビリで改善します。

腱板断裂併発ケース

腱板断裂の併発ケースは通常の腱板断裂と基本的には同様に治療方針を考えます。

こちらで解説しております。

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

ただ、この脱臼にともなう腱板断裂の特徴は

「外傷性」

であるということです。

断裂なんだから外傷性だろ!?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、腱板断裂の多くはご年齢とともにもろくなってきて、あまりきっかけもわからずにいつの間にか切れてしまっていたというようなケースが少なくありません。

これを「非外傷性」と表現すると、この非外傷性で大きな腱板断裂がある場合は断裂してからかなり時間が経っていて、手術で修復するのも困難で実際に手術後の再断裂率が高かったり、症状の改善がイマイチというデータがあります。

それに対して、同じくらい大きな腱板断裂だったとしても「外傷性」だった場合は、まだそんなに時間が経っていないので腱板も柔らかくて修復もしやすく、手術後の症状改善もいいというデータがあります。

そのため、より積極的に手術を検討するというのが「外傷性」の腱板断裂です。

肩が不安定になってしまった場合

肩が不安定になってしまって痛みがある、不安感があるという場合はまず、その痛みが不安定性のせいだということを発見しないといけません。

それは我々医師の仕事で、腕の見せどころですが、

実際、様々な診察(肩の痛みの部位、肩をどう動かすとどう痛いのか、実際、触ってみてい不安定性があるか?など)だったり、画像検査で関節包や関節唇などが傷んでいるようなMRI画像が見られれば、この不安定性による痛みを疑います。

この場合の治療は

まずは安定性を高めるためのインナーマッスル(腱板筋群)のトレーニングを徹底して3ヶ月以上やってみるということが基本です。
こちらの記事もご参照ください。

肩のインナーマッスルの鍛え方 動画でわかりやすくby専門医

2017.03.11

それでも傷んだ関節唇や関節包は自然修復されないことも多いので、痛みが残れば手術を行うことを検討します。
手術は関節鏡で関節唇や関節包を縫合するということが一般的です。

こちらは関節鏡で関節唇や関節包を縫っている手術です。

肩脱臼の基本をおさらい

肩脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

まとめ

今回は肩脱臼後にいつまでも痛みが続くってときに何が原因であることが多いのか?どう治療するのか?ということについて解説いたしました。少しでも参考になりましたら幸いです。

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