肩の脱臼と脱臼骨折の手術法&全治期間を専門医が解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩の脱臼・・・これは実際は全治までそんなに時間がかからないことも多いケガです。

それは、脱臼も整復、つまりもとの位置に戻ってしまえば、
一応は治療されていることになるからということなんですね。

もちろん、脱臼したときにいろいろな場所を同時に傷めていますから、
脱臼後に痛みが残ってしまう場合には様々な原因が考えられます。

そして、その原因によって全治期間も異なってきますから、
今回はそういった肩の脱臼後の全治期間について、
いくつかのパターンにわけて解説していきたいと思います。

特に骨折なんかが合併してしまった場合なんかは、全治期間が大きく延びてしまいます。

そんなどれだけ重症なんだろうと不安になってしまっても仕方ない肩の脱臼骨折についても、実際には主に2種類のパターンがあって、それぞれ重症度も治療法も異なるということから知っておく必要があります。

そして、それぞれの異なる治療方法によって全治までの期間はどのくらいになるのか?ということについても解説いたします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩の脱臼後に痛みが残るケース

肩の脱臼後に痛みが残ってしまうときに、まず何が考えられるかについて解説していきます。

一般的には初めての脱臼後に2−3週間の肩の安静の後に、少しずつ動かしていきますが、多くのケースでは結構すんなり痛みも引いていきます。

そこから実際のスポーツなどに復帰していくことを考えて、
肩の脱臼の全治期間というのは通常4-6週間程度と言われることがあります。

しかし、ときに痛みが残って、肩をなかなか挙げられないなど症状が起こりえます。

肩の脱臼後の問題1:骨折も併発しているケースの全治期間

まず多いのは脱臼のときに骨折も併発しているケースです。

肩の脱臼骨折とは?主に2種類ある

まず肩の脱臼ということについて、よく知っておく必要があります。

特に脱臼は癖になってしまう(反復性肩関節脱臼)ことが多いので、脱臼そのものについても理解を深めていただければと思います。

こちらもご参照ください。

肩脱臼のオススメの治し方を専門医が解説

2017.01.02

また、後半におさらいコーナーもありますのでご参照ください。

そして、この脱臼とともに骨折も一緒に起こってしまったというケースは主に2種類ありますので、それぞれ解説していきます。

肩の脱臼 + 上腕骨大結節骨折

一つ目は肩の脱臼とともに大結節(だいけっせつ)が骨折してしまった状態です。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

肩が脱臼しないように頑張ってくれている安定化装置はいくつかあります。

  • 関節唇(かんせつしん)
  • 腱板筋群(けんばんきんぐん)
  • 関節包(靭帯)

これらの中で腱板筋群がくっついてる骨が大結節です。

そして、この腱板筋群の頑張りもむなしく脱臼してしまったときに、腱板筋群に過剰に引っ張られてしまって大結節が裂離骨折を起こしてしまう。

というケースが1つ。

また、肩の脱臼はほとんどが前方脱臼ですが、その前方脱臼した時に上腕骨の後外に位置する大結節の根本が受け皿側である肩甲骨関節窩の前方と衝突します。

そのメカニズムでできる陥没病変をHill- Sachs病変というわけですが、それが陥没ではなくて完全に折れてしまえば大結節骨折になってしまう。

そんなケースもあります。

肩の脱臼 + 上腕骨頚部骨折

もう一つの肩の脱臼骨折は上腕骨の頚部で骨が折れてしまうケースです。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

上腕骨(肘から肩にかけての腕の骨)は肩の関節部分は骨頭(こっとう)という球形状をしていて、外側に大結節、前側に小結節という突起があり、その下(肘より)は骨幹部(こっかんぶ)という木の幹に相当する細長い部分になります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

その骨頭や大小結節と骨幹部の間を頚部(けいぶ)といいます。

解剖頚と外科頚に分かれていますが、ここではとりあえず頚部でいいです。

頭と体幹の間は頚(くび)というわけですね。

 

この頚部で折れてしまって、さらに、骨頭が外れてしまっているのがこのケースです。

合併した骨折が大結節骨折の場合との大きな違いは、脱臼した骨頭と骨幹部が分断されてしまっているということです。

そのため、こちらの方が一般的に重症です。

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肩の脱臼骨折の手術の必要性と方法は?

この2パターンの肩の脱臼骨折ですが、手術は必要なのでしょうか?
また、やるならどんな手術になるのでしょうか?

大結節骨折の場合

まず大結節骨折の場合ですが、肩の脱臼が整復されると、意外と大結節骨折はいい位置に整復されることが多いです。

とは言え、大結節骨折は少しのズレが後遺症の原因になることがあるので注意が必要です。

上腕骨大結節骨折とは? リハビリは?少しのズレも注意が必要な理由

2017.04.08
こちらで詳しく解説しておりますが、少しここでも解説します。

上腕骨大結節骨折は腱板に引っ張られてズレる

そして、この上腕骨大結節が折れてしまうと、大きな上腕骨のメインの骨と欠けてしまった上腕骨大結節骨片(こっぺん)に分かれます。

そして、この大結節骨片には腱板という筋肉が付いてします。筋肉はもともと縮む作用を持っていますから、この骨片を引っ張って、結果として大結節骨片はズレます。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

骨折の程度によって、ズレ方は異なります。ヒビ程度で骨膜という骨の周りの膜が残っていたりすればズレはほとんどないことになりますし、最初っから派手にズレちゃっているモノもあります。

上に5mm以上ずれるとインピンジメントの原因になり得る

このズレの程度ですが、1つの境界線が5mmと考えられています。

特に腱板のうちでも棘上筋に引っ張られて上方に5mm以上ズレると、肩甲骨の肩峰(けんぽう)との距離が縮まり、肩峰下インピンジメント症候群の原因となり得ます。

インピンジメント症候群とは?肩専門医が解説

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そうなってしまうと、骨がくっついても、肩を動かしたときの痛みが残るか、肩を挙げられなくなってしまうという状況が考えられます。

その可能性が高いと判断すれば、5mm程度のズレでも手術をします。

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい

上腕骨大結節骨折の手術は少し悩ましい問題があります。

大結節は弱い、脆い骨

まず大結節は弱く、脆い骨の部位になります。われわれ、手術をやっていると実感することがありますが、骨を固定するために金属のネジや針金を打ち込む際に、この大結節が割れてしまうことが時々あります。

強い骨であれば、こういう金属を打ち込むと、骨折部位のすごくいい固定になるんですが、脆い骨の場合は、なんとか割れずに固定できても、術後、リハビリの過程でズレてきてしまうなんことも起こりえます。

 

腱板という筋肉に常に引っ張られている骨

もう一つ悩ましいのは腱板という筋肉が常に引っ張っている骨と言うことですね。

これは骨折を元の位置に持っていくのにも、時に筋肉の引っ張る力が強くて、カタくなってしまっているために苦労することもありますし、術後にだんだんズレてしまう原因にもなります。

大結節骨片がかなり小さいことがある

大結節骨片が欠け方によって、かなり小さいこともあります。そうすると骨片同士を金属で固定するにも太いネジや針金は、先ほども言ったとおり、入れた瞬間に骨片が割れてしまうということになります。

関節鏡手術で治すこともできる

このように腱板が付着するという悩ましい問題を逆手にとって、腱板ごと固定するということは、腱板断裂の手術と少し似ている部分があります。

そうなると関節鏡も選択肢に入ります。

arthroscope surgery

僕の場合は骨片の大きさなどによりますが、関節鏡だけを使ったり、関節鏡を補助的に使ったりして、できるだけ低侵襲(皮膚の傷や周りの筋肉などの組織を傷めない)な手術を心がけています。

この動画は僕のよく行う手術と同じような方法です。関節鏡を使って骨折部分をキレイにして、新鮮化(血流を良くしてくっつきやすくする)し、そして、骨の中にアンカーというネジを用いて糸を埋め込んで、ブリッジング法という方法で骨片を腱板ごと固定してしまうという方法です。

頚部骨折の場合

頚部骨折の場合は一般に重症です。
通常、脱臼を整復するには腕を動かして整復するわけですが、その腕と脱臼した骨頭が骨折によってすでに分断されているので、整復自体が困難です。

そのため、整復するだけでも手術が必要なケースが多いわけです。

 

さらに、手術をして整復し、骨折を固定できたとしても、まだ不安材料があります。

その大きな理由は血流(血の巡り)です。

脱臼してしまった骨頭は軟骨で覆われた部分で、もともと血管からの栄養を受けにくい場所です。

そしてさらに、この骨頭を栄養する血管が頚部の骨折によって損傷していることが少なくないんですね。

とすると、骨頭に向かう栄養が足りなくなり、最悪の場合は骨頭壊死(こっとうえし)という状態になったり、骨折がくっつかなくなったり(偽関節:ぎかんせつ)してしまいます。

そのため、手術方法は僕らも悩むことが少なくありません。

骨をくっつけるにはプレートという板状の金属越しにスクリューを多数本入れることで固定することが多いですが、

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

 

結局、骨頭壊死になってしまったり、偽関節になってしまうこともあると考えて、最初から人工関節の片側バージョンである人工骨頭(じんこうこっとう)というインプラントを挿入することもあります。

人工骨頭は耐用年数の問題もありますので、一般的にはご高齢の方でよく行われる手術です。

肩の脱臼骨折の全治期間は?

この肩の脱臼骨折の全治期間について、目安をお伝えいたします。

まず大結節骨折の場合ですが、これは一般的な骨折の治癒過程と同様で、骨がくっついて肩を動かせるようになるまでに4週間から6週間くらいを要します。そこから、肩を徐々に動かしていって、十分に動かせるようになるまでさらに4週間から6週間。

つまり、2から3ヶ月というのが全治期間の目安と考えています。

頚部骨折の場合はちょっと複雑です。

頚部骨折をプレートなどでくっつけようと固定した場合は、くっつくまでに多少時間を要することもありますが、順調なら大結節骨折とあまり大きな差はありません。
むしろ、大結節骨折よりも骨が大きいので強固に固定できるため、肩を動かせるようになるまでは早いです。そのため、十分に動かせるまでには1から2ヶ月くらいということも多いです。

しかし、骨頭壊死というものが起こってこないか、定期的なチェックは1年、2年時にはそれ以上に渡り継続しないといけないことがあります。

さらに、大結節骨折でも場合によっては同様ですが、骨折の固定に用いた金属インプラントを抜去する手術(抜釘術)を行うことも多いですが、それは手術後半年以降、骨が完全にくっついたことを確認して行います。

どの時点を全治期間と定義するかによって変わってきますね。

また、人工骨頭を挿入した場合は抜釘は必要ありませんが、大結節や小結節を固定しているのでその癒合を待つ必要があります。だいたい6週間くらいは自力では動かさないようにしてもらっています。そこから十分に肩を動かせるようになるには、やはり4週間くらいかかるとして、2から3ヶ月というのが全治期間の目安となるでしょう。

肩の脱臼後の問題2:腱板断裂も併発しているケースの全治期間

肩の安定性を高めているインナーマッスル(深いところにある筋肉)が腱板を構成する筋肉です。

その安定性がマックスに破綻したのが脱臼ですから、腱板が切れてしまう腱板断裂が併発してもおかしくありません。
特に年齢があがればあがるほど腱板はもろくなりますので、腱板断裂の併発率が高まります。

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

肩腱板とは肩の大事なインナーマッスルの腱の合流部

肩腱板(かたけんばん)

これを正確に理解している人が
医療関係者の中にも少ないという印象があります。

よく腱板損傷という言葉を使いますが、
肩板損傷?と書いている人もいますし、
ときに腱板骨折?と書いている人も見かけたことがあります。

肩腱板・・・略して肩板・・・なんてことはないでしょうが、
ちょっとしたケアレスでしょう。

ただ、腱板骨折には驚きました。
腱板が骨だと思っている人が、
医療関係者にもいるということです。

ということで、まず
肩腱板とはなんぞや?ということから入りましょう。

肩の腱板

もっと言うと、ということになりますが、

肩はいいですよね。

次に「」ですが、

筋肉は骨にくっつく前に
より筋張って、硬めの線維に移行します。
この筋肉の続きの硬めの線維を「腱」
といいます。

次に「板」ですが、
これは解剖学用語というよりは、
見た目を表したモノと考えてください。

肩のインナーマッスルと呼ばれる、
深いところ、関節に近いところにある筋肉の中で、

特に重要なモノが
4つあり、

それぞれ

  1. 肩甲下筋
  2. 棘上筋
  3. 棘下筋
  4. 小円筋

という名前がついています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この4つの筋肉が、腱となって、
最終的には合流して「板」状になるので、

「腱板」というわけです。

つまり、肩腱板というのは、
4つのインナーマッスルの腱が
最終的に合流した部位のこと

腱板筋群とは
4つのインナーマッスルのこと

と言えます。

肩腱板損傷は単なる筋損傷、筋断裂とは違う

この肩腱板が、損傷してしまう。
それはつまり、断裂してしまう、
切れてしまうわけですが、

これを他の部位の筋肉の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

通常、筋肉が切れてしまっても、
だんだんと修復されて、

ある程度の強度を持って、
筋肉がくっつきます。

つまり、よほどの重症でない限りは、
肉離れは手術はしません。

また、筋肉ではなく、
その先の腱の損傷としては、
代表的なものが
アキレス腱損傷だと思いますが、

このアキレス腱損傷は
手術でなくても、ギプスなどで治すこともできます。

肩腱板断裂は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
そうはいきません。

その大きな理由は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように切れてしまうからです。

骨と腱という

カタいものと
ちょっとカタめのスジ

これがくっつくというのは、
筋肉同士や腱同士がくっつくことにくらべ、
難しいということですね。

そのため、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、
むしろ拡大していきます。

つまり、重症化していく
ということです。

肩の脱臼に腱板断裂を合併した場合の全治期間の目安

とすると、肩の脱臼後に腱板断裂を合併した場合、
断裂の大きさにもよりますが、

手術をしないと「全治」という状態には至らない可能性があります。

腱板断裂の手術についてもこちらをご参照いただければと思いますが、

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

手術後にしっかりと長期のリハビリテーションを行って、
スポーツなど肩に負荷がかかる活動への復帰(全治期間)は一般的に6ヶ月

ということを説明しています。

肩の脱臼後の問題3:再脱臼を繰り返す 癖になっている場合の全治期間

肩の脱臼の厄介なところは、一度はズレてしまうと「癖になってしまう」

つまり、脱臼を繰り返してしまうことが多いということです。

こちらで詳しく解説しておりますが、簡単に解説しておきます。

肩が外れる癖(反復性脱臼)の治し方 手術やリハビリを専門医解

2017.12.29

肩が外れる状態がクセになるメカニズム

関節窩(受け皿)を深くする関節唇

関節窩(かんせつか)という
浅い受け皿に、

上腕骨頭(じょうわんこっとう)という
ボールが乗っている

これが肩関節の骨と骨の構造上の関係です。

非常に不安定です。

その受け皿を取り囲むように
比較的硬めの軟骨組織が
受け皿に深さを与えて、
ボール(上腕骨頭)が簡単に
転がり落ちない(脱臼しない)ようにしている

それが関節唇(かんせつしん)です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

さらにこの関節唇と上腕骨を
繋いでいる関節上腕靱帯(かんせつじょうわんじんたい)
というものが外れないように防ぐ大事なはたらきをしています。

バンカート損傷は関節唇損傷

肩が外れたときに、
この関節唇が関節窩から剥がれてしまう

これをバンカート損傷といいます。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

そして、この剥がれてしまった
関節唇は
自然とはなかなかくっつかないので、

バンカート病変となって、

肩の受け皿(関節窩)の前方が緩く
になってしまいます。

それが肩の脱臼がクセになる
大きな原因です。

この関節唇とそこに連続する靱帯は
どちらも筋肉ではないので、

いくら脱臼を防ごうと
周りの筋肉を鍛えても、

肩の外れ癖はなかなか治せないわけです。

ということで、手術が選択肢に
なってくるわけですね。

ヒルザックス病変について

バンカート損傷と並び、
関節が外れる時にできる損傷、病変として、

ヒルザックス病変というものがあります。

バンカート病変が肩甲骨の受け皿側の問題だったのに対し、
こちらは上腕骨側です。

肩が前方に外れたときに、
上腕骨の後方と肩甲骨関節窩の前方が
はまり込むような状態になります。

その結果、上腕骨の骨頭後方が
削れてしまう

これをヒルザックス病変と言います。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こります。

肩の脱臼が癖:手術法で全治期間が変わります

【バンカート法】関節唇を修復

まずバンカート損傷を修復する
というのが一番基本的な手術です。

骨から剥がれた関節唇を
もとの骨、

つまり肩甲骨の関節窩にくっつけるように修復
するわけですが、

そのために関節窩という骨に
糸付きのネジを挿入して
(最近は糸だけ骨に挿入することもあります)

その糸で関節唇を
いい緊張状態(ゆるゆるでない状態)で、
縫い付けます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これは関節唇の損傷の程度によりますが、

糸を4−5本使うことが多いです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

 

このバンカート法の場合はしっかりと縫った部分が修復され、
再脱臼しないだけのリハビリ(筋力)やスキルを身につけてから
スポーツ復帰することが望まれますので、

一般的に全治期間は術後6ヶ月と考えられています。

【烏口突起移行術】スジ付き骨を移動して前の壁を作る

ラグビーやアメリカンフットボールなどの
コリジョンスポーツ、
また、柔道などの格闘技系のような

再脱臼のリスクが高いモノ

手術をしたのに再脱臼してしまったケースには

より強力に脱臼を防ごうと言うことで、

烏口突起という骨の一部を
受け皿である関節窩の前方に移行して、

前方の壁をつくるような
イメージの手術を行います。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この烏口突起には
共同腱と呼ばれる
烏口腕筋、上腕二頭筋短頭という筋肉の腱が
くっついていますので、

その腱が前方に張り出すことによる、
外れ防止作用も期待しています。

 

この骨の移行術の場合はより外れにくい状態を
骨の移植で作ってしまうので全治期間は少し短く、

術後4ヶ月程度が一般的です。

肩脱臼の基本をおさらい

肩脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

まとめ

今回は肩の脱臼後の全治期間ということで様々なケースを想定しての解説をいたしました。

最初は脱臼骨折という、いかにも重症な状態に対して「基本的なことをできるだけわかりやすく」と心がけながらお伝えいたしました。

次に脱臼に伴い、腱板損傷が起こることがあるということ、そして、脱臼が癖になる場合の手術と手術法による全治期間の違いを解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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