拘縮肩の治療 ストレッチから手術まで 肩専門医が解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

拘縮(こうしゅく):これは関節がかたくなってしまった状態(正確には可動域制限がある状態)を言います。

これが肩関節に起こった場合に拘縮肩と呼ばれるわけですが、典型的な症状は腕が上がらない、腕を後ろに回せないなどですね。
実際は肩の可動域というのは全関節の中で一番広く、あらゆる方向に動きますので、拘縮すると様々な不便さが起こりえます。

この拘縮肩はいわゆる四十肩、五十肩の結果として起こることも多いですが、もう一つは肩周囲の骨折などの外傷、またはそれらの手術後に肩の動きが悪くなるケースとしてもよく起こります。

毎週のようにこの拘縮肩の患者さんを診察し、ご希望があれば手術も行っています。確かに手術は切れ味鋭く、改善が早いものですが、治療の全体像を理解いただいてから、手術についても考えてもらっています。

そんな治療の全体像について手術を含めて解説していきたいと思います。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

拘縮肩の治療法

では拘縮肩の治療法です。

シンプル言うと、多くの拘縮肩の原因は関節包(かんせつほう)です。

関節包は関節を全周性に覆っている薄い膜のことですが、これが拘縮肩の場合は分厚く、硬くなってしまっています。
そのせいで動かせなくなっているんですね。

とすれば、治療法としては、じわじわと関節包に刺激を加えて、時間はかかってもリハビリテーションやストレッチで拘縮を解除していく方法と、

分厚くなってしまっているのなら、切ってしまえばいい、剥がしてしまえばいいという手術があります。

通院リハビリテーション

まずジワジワとかたくなった肩をほぐしていくリハビリテーションですが、ジワジワと言いながらもなかなか大変です。

ほぐすと言っても肩こりのマッサージのようなことをするわけではありません。

肩がカタくて動かない中でもジワジワと動く限界を攻めるようなリハビリテーションになります。

例えば、この動画のようにセラピストが関節を動かしていくようなことを行っていきます。

それを病院に通院しながら専門のセラピスト(作業療法士や理学療法士)に肩を動かしてもらったり、指導のもとでのストレッチをしたりします。
これは頻度としては毎日できれば一番いいわけですが、なかなかそこまで通院できる人は多くないですし、逆にセラピストの予約も毎日取るのは難しくて、週に1回程度になってしまうところも少なくありません。

自宅でセルフストレッチ

そこで毎日、自宅で自分でストレッチをやることがとても重要になってきます。

肩関節の動きとして、特に使いやすさのポイントになるのは

挙上(屈曲)もしくは外転というバンザイまで腕を上げていく動きです。

この挙上、外転の練習、ストレッチとしての代表的な訓練が、
振り子運動訓練(pendulum exercise)と呼ばれるもので、

頭を下げて腕をだらんと垂らすところから身体を揺らしながら振り子のように腕を前後だったり円を描くように振っていくわけです。

特に頭を腰よりも低く下げるくらいに前屈できれば(転倒や体調崩さないように注意してください。)、より脱力したときの挙上角度が高くなり効果が高まります。

さらにこのような棒を使ったエクササイズも効果的です。

こちらは肩の外転(がいてん)訓練です。棒をつたって左手で右手を外に上に押し出すような動きで右肩を外転(外側から上げていく)させています。

 

 

こちらは右肩の外旋(がいせん)のエクササイズです。
ポイントは右肘を脇につけて固定して、手の位置を外側に開いているということです。肘を支点に肩関節で回旋しているということですね。

 
今度は右肩の内旋(ないせん)のエクササイズです。棒を下で背中側にまわして持っている右手を左手が棒をつたって、持ち上げていきます。
この右手の位置が高く上がれば上がるほど、肩関節は内旋していることになります。

注射して徒手授動術

次に手術のお話ですが、まずは「切らない」手術です。

徒手授動術(としゅじゅどうじゅつ)と言います。
これは言い方は悪いですが、術者(医師)がある程度、無理矢理肩を動かして、分厚くなってしまった関節包をベリベリっと剥がしていく手術です。

要は腕を持って動かしていくだけですから、リハビリに似ていますが、

その強度が違います。この一度の授動術で一気に動かせるようになるようにやるので、当然、激痛ですし、リスクも伴います。

そのため、まず痛みを抑えるために神経ブロック注射などを行ったり、また、剥がしやすくするために肩関節内に多くの生理食塩水を注入した上で、肩を動かしていきます。

この徒手授動術は無理矢理、肩を動かして剥がしますから、時に骨が弱い人の場合は骨折を起こしてしまうなんて恐ろしい合併症の報告もあります。
また、逆にそれが怖いので、どうしても授動術が不十分になってしまうということも起こりえます。

そんな意味もあって、僕はあまりこの方法はやりません。

次に述べる関節鏡手術の方が、肩にとってはやさしい、丁寧な方法と考えています。これは個人的な意見です。

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手術 関節鏡下授動術

さて、この授動術ですが手術らしい手術としては、今は関節鏡を使って行うことが主流となっています。肩の前後に1–1.5cm程度の小さい創から関節鏡や専用の電気メスなどを関節の中に挿入して、分厚くなってしまった関節包を切開していく方法です。

電気メスで焼きながら切り開いているのが関節包ですが、かなり赤く充血しているように見えると思います。これが炎症した関節包の特徴です。この炎症部分もクリーニングできるというメリットもあります。

これは習熟した肩専門の医師が行えば30分もかからないで行える手術です。しかし、実際は神経(腋窩神経)が近くを走っており、さらに関節内のスペースが拘縮肩の人は狭いので、慣れない医師がやると神経障害のリスクやうまく手術が行えないリスクなども高くなるかと思います。

拘縮肩・肩関節周囲炎をおさらい

拘縮肩とは?

拘縮(こうしゅく)=関節がかたくなってしまった状態(正確には可動域制限がある状態)と冒頭でお話ししました。

これが肩関節に起こった場合に拘縮肩と呼ばれるわけです。

困るのは腕が上がらない、腕を後ろに回せないなどの症状の結果、衣類の着脱が難しいとか、洗濯物を干せないとか、腕を遠くに伸ばせないなどの日常生活での不便な点が出てきますし、さらにスポーツなどをやっておられれば、種目によってはかなり困ることになります。

拘縮肩の原因

この拘縮肩の原因としては、主に以下の3つがあります。

五十肩・肩関節周囲炎

四十肩や五十肩と呼ばれるものの多くがこの肩関節周囲炎という診断名になります。

その名の通り、肩関節の周りに炎症が起こるということです。

肩関節の周囲にはたくさんのいろんな組織(筋肉、腱、靱帯、骨・・・など)があり、実際、肩関節周囲炎ではさまざまな場所の炎症が痛みの原因となっています。

その炎症の場所として、代表的な3つの場所について、その考え得る原因まで含めて解説したいと思います。

どの場所としても原因としては、

加齢性の変化 + オーバーユース(もしくは外傷)

という一言でシンプルには表現できてしまいます。

10代、20代の人がたくさん肩を使っても痛くなりにくいのは、加齢性変化がない、タフな肩だからですね。

逆に高齢の方で肩の痛みがない人は、あんまり肩を使ってないのかもしれません。

40歳、50歳くらいの人はその間で、加齢性変化も始まりながら、肩も相変わらずよく使うというのが大雑把な原因です。

それでは代表的な炎症部位を解説していきます。

腱板の炎症

まず腱板(けんばん)と呼ばれるインナーマッスルです。腱板というのは肩の前を走る肩甲下筋、上を走る棘上筋、後ろを走る棘下筋、小円筋とありますので、前が痛ければ、外側、後ろとどこも痛みが出ることがあります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この腱板の炎症は、まさに肩の使いすぎ、負担のかけすぎの典型的な結果であることが多いです。腱板の筋肉は肩を安定的に動かしてくれる働きを担っていますので、肩を使うときには常にじわじわと頑張ってくれているんですね。

比較的多いのは、肩峰下インピンジメントという状態です。

この状態から肩を上げていくと、大結節、腱板が肩峰の下に潜り込む。そのときに、インピンジが起こります。 画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この状態では腱板が擦れてしまって、だんだんと炎症が起こってきてしまいます。こちらもご参照ください。

肩峰下滑液包炎とは? 専門医解説

2017.03.29

また、急激な力が入ったり、脱臼しそうになったりしたときに、ギュッと安定させてくれてもいますから、そういった強い力、外傷というのも原因になります。

上腕二頭筋長頭腱の炎症

次に上腕二頭筋長頭腱の炎症ですが、これもよくある状態です。肩の前方を走る上腕二頭筋の腱が炎症を起こすわけですから、肩の前方が痛い。特に肩をヒネったり、重いものを持って挙上したりするときに痛みが走りやすいです

この上腕二頭筋長頭腱に対する負荷のかかり方は、肩を挙上位置で、さらに肘を曲げる上腕二頭筋に力が入りっぱなしの状態で強い負荷がかかります。

それは重いものを持って、前方に差し出すような動きだったりします。

また、腱板断裂(けんばんだんれつ)がある場合は上腕二頭筋長頭腱に負荷が間違いなくかかりますので、炎症どころか、この腱も切れてしまうこともあります。

腱板疎部の炎症

最後に腱板疎部(けんばんそぶ)の炎症ですが、これは腱板の中でも前方を走る肩甲下筋腱と上を走る棘上筋腱の間の弱い、脆い部分を言います。この部分も筋肉と筋肉の間ですが、空白のスペースではなく、関節包(かんせつほう)という膜や、靱帯(じんたい)が走っています。しかし、腱板よりは弱い場所ですので、負荷がかかると炎症が起こりやすい、損傷しやすい部位と言えます。

これは肩の前方、やや上の痛みが典型的です。原因は腱板炎のように腱板に負荷がかかるような状態と共通です。

特に肩が外旋する位置で腱板疎部がピンと張りますので、その位置で負荷や強い力が加わると、傷めやすい、炎症を起こしやすいと言えます。

向かって左が肩の内旋、右が肩の外旋です。

外傷(骨折、腱板損傷など)

骨折や腱板損傷など肩の周囲の外傷があると、身体は当然、肩を守ろうとします。骨折した部位や損傷した腱板を治そうとする働き以外にも、肩そのものを守るために関節包が分厚く、カタくなるという拘縮肩のメカニズムがどうしても働いてしまいます。

その結果、骨折が治ったりしても、結局、肩がカタくなってしまったなんてことは比較的よくあります。

手術後の拘縮

外傷後の拘縮と同様に肩を守ろうとするメカニズムが働くということで言えば、肩の手術後も同様です。

それゆえ、肩の手術後は特にリハビリテーションが大切になってくるわけですね。

肩の骨折などで手術をした場合に、金属のインプラントを抜去する抜釘術ということを、骨がくっついたあとの2回目の手術として行います。そのときに拘縮が強い場合は関節鏡下授動術を一緒に行うということは、1つの良い選択肢と考えています。

 

まとめ

今回は拘縮肩の治療をストレッチ、リハビリテーションから手術療法まで解説いたしました。少しでも参考になりましたら幸いです。

肩の痛み、障害というマイナス状態からゼロに戻すだけでなく、さらにプラスへ持っていく方法や考え方についてはメールマガジンで解説していますので、興味が持っていただけましたらご登録をお願いします。

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