肩が外れそうな痛みの治し方を肩専門医が解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

「肩が外れそうで怖いんだけど、痛みもあるんだよね。これは治した方がいい?」

と聞かれれば、たいていは治した方がいいと言います。

外れそう + 痛みあり

というのは何かしら肩関節に問題がある可能性が高いです。できるだけわかりやすく解説いたします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩が外れる状態の基本をおさらい

肩が外れる=脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

>肩が外れそうな状態とは?

肩がしょっちゅう外れてしまう、

外れ癖

 

というのはよく聞く話だと思います。

これを反復性肩関節脱臼と言いますが、

これは、初回の脱臼後に、
日常生活やスポーツ活動の中で、

特に外傷などなくても、
ちょっとした肩の動きで外れてしまう。

という状態です。

肩関節不安定症とも言います。

 

そして、今にも外れそうで肩を思う存分動かせない
という状態は主にこの反復性肩関節脱臼の状態がほとんどです。

ちょっともう一つのおさらいとして、
反復性肩関節脱臼のメカニズムについて解説を加えておきます。

肩が外れる状態がクセになるメカニズム

関節窩(受け皿)を深くする関節唇

関節窩(かんせつか)という
浅い受け皿に、

上腕骨頭(じょうわんこっとう)という
ボールが乗っている

これが肩関節の骨と骨の構造上の関係です。

非常に不安定です。

その受け皿を取り囲むように
比較的硬めの軟骨組織が
受け皿に深さを与えて、
ボール(上腕骨頭)が簡単に
転がり落ちない(脱臼しない)ようにしている

それが関節唇(かんせつしん)です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

さらにこの関節唇と上腕骨を
繋いでいる関節上腕靱帯(かんせつじょうわんじんたい)
というものが外れないように防ぐ大事なはたらきをしています。

バンカート損傷は関節唇損傷

肩が外れたときに、
この関節唇が関節窩から剥がれてしまう

これをバンカート損傷といいます。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

そして、この剥がれてしまった
関節唇は
自然とはなかなかくっつかないので、

バンカート病変となって、

肩の受け皿(関節窩)の前方が緩く
になってしまいます。

それが肩の脱臼がクセになる
大きな原因です。

この関節唇とそこに連続する靱帯は
どちらも筋肉ではないので、

いくら脱臼を防ごうと
周りの筋肉を鍛えても、

肩の外れ癖はなかなか治せないわけです。

ということで、手術が選択肢に
なってくるわけですね。

ヒルザックス病変について

バンカート損傷と並び、
関節が外れる時にできる損傷、病変として、

ヒルザックス病変というものがあります。

バンカート病変が肩甲骨の受け皿側の問題だったのに対し、
こちらは上腕骨側です。

肩が前方に外れたときに、
上腕骨の後方と肩甲骨関節窩の前方が
はまり込むような状態になります。

その結果、上腕骨の骨頭後方が
削れてしまう

これをヒルザックス病変と言います。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こります。

 

肩が外れそうな状態で痛みを伴うケース

肩が外れそうな状態で、さらに痛みが伴うケースというのはそんなに多くありません。

肩は外れそうではあるけど、痛くないという場合とか、
肩は痛いけど、外れそうではないという場合が
圧倒的に多いわけですが、

では、このように「肩が外れそう + 痛み」
という場合の原因について考えてみます。

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脱臼したばかりでまだ治癒過程の痛み

まず最近、肩を脱臼、亜脱臼したというエピソードがあれば、その治癒過程で炎症が残っている可能性があります。

それであれば、その痛みが治るまでは無理しないということが基本になるでしょう。特に初回脱臼後は3−4週間は肩を安静(固定)するのが基本の治療ですので、その期間内であればしっかり安静にしましょう。

Portrait Of Young Man With Arm In Sling

不安定ゆえに小さな損傷を繰り返している痛み

肩が外れそうというのは肩関節が不安定ということです。

それは肩を動かす時に余計な「ズレ」を伴ったり、無駄に大きな関節の中での動きを伴ったりしていますので、

そのせいで関節を安定化させようとする「関節包」、「腱板」、「関節唇」、「靭帯」という軟部組織に小さな損傷が起こっていたり、
また、少しずつ余計な関節内の動きによって軟骨がすり減ってきているなんてこともあり得ます。

 

このような状態、すなわち、肩が不安定なまま使うという状態が続くと、その小さな損傷が修復不能なレベルに陥ってしまう可能性もあります。

代表的な修復不能状態は腱板の広範囲断裂と変形性関節症です。

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

腱板も最初のころの小さい断裂は手術で修復することは比較的容易ですが、それが大きくなっていくと修復不能になり、別の部位の筋肉を移植したりしないといけなくなります。

また、軟骨がすり減ってしまう変形性関節症で痛みが強い場合は人工関節の手術をしないと治らないということも十分あり得ます。

ですから、そうならないうちに肩が不安定な状態を改善するということが大切なわけですね。

肩が外れそうな状態の治し方

反復性肩関節脱臼の治療 根本的には手術しかないが・・・

この反復性肩関節脱臼のメカニズムというものをおさらいで解説しましたが、その根本的な治療は手術しかないということがわかります。

なぜなら、傷んでしまった関節唇も削れてしまった上腕骨頭も、筋肉ではなく鍛え直すことはできないからです。

そうは言っても、少しでも脱臼を防ぐための方策はあります。

脱臼肢位の理解を深める

まず一番大切なのは、「どうすれば外れてしまうのか?」ということを頭と身体で覚えるということです。

ほとんどの前方脱臼は肩関節の

外転 + 外旋 + 伸展

という動きで外れてしまいます。

この動きを徹底的にしないようにするということが脱臼を防ぐ一番のポイントです。

外転 + 外旋 + 伸展

というと、複雑ですが、

要は腕を肩くらいの高さで、後ろにもっていく、もっていかれるというような動きです。

イメージとしては右肩であれば、右背中側の方に手を持っていこうとするなら、身体ごとしっかり右後ろを向いて、腕だけ背中側にもっていかないということです。つねに右肩の後ろの方のゾーンには嫌なイメージを持っておくことがオススメです。

インナーマッスルを鍛える

また、鍛え直すことができないと言いましたが、肩を補助的に安定化して、脱臼を防ぐ力を持っているのがインナーマッスルです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

このインナーマッスルを鍛えることは、それだけで脱臼を防ぐことができるほどの効果はないにしろ、やったほうがいいのは間違いありません。外れそうな恐怖感は少しは軽減できるかもしれません。

こちらの記事もご参照ください。

肩のインナーマッスルの鍛え方 トレーニング動画で by専門医

2017.03.11

手術は関節鏡が主流

今現在の肩の手術は関節鏡手術が主流になっています。

arthroscope surgery

関節の中での手術は
関節鏡がかなり有利です。

直視下手術、つまり、
傷をしっかりあけて、直接中をみる手術は
関節の中をみるために、

筋肉を裂いて、
肩甲下筋というインナーマッスルを切って
侵入しないといけません。

その侵襲、ダメージは見逃せないモノです。

それが必要ないということだけで、
関節鏡のアドバンテージは大きいと
言えるでしょう。

関節鏡のデメリットは、
手術習得までにすこし時間がかかる
ということです。

その結果、手術ができる整形外科医は
そんなに多くはありません。

第一選択の手術法:関節唇を縫い直す 修復法

バンカート損傷、すなわち傷んだ関節唇を修復する
というのが一番基本的な手術です。

骨から剥がれた関節唇を
もとの骨、

つまり肩甲骨の関節窩にくっつけるように修復
するわけですが、

そのために関節窩という骨に
糸付きのネジを挿入して
(最近は糸だけ骨に挿入することもあります)

その糸で関節唇を
いい緊張状態(ゆるゆるでない状態)で、
縫い付けます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

これは関節唇の損傷の程度によりますが、
糸を4−5本使うことが多いです。

烏口突起という骨を移植する

ラグビーやアメリカンフットボールなどの
コリジョンスポーツ、
また、柔道などの格闘技系のような

再脱臼のリスクが高いモノや

手術をしたのに再脱臼してしまったケースには

より強力に脱臼を防ごうと言うことで、

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

烏口突起という骨の一部を
受け皿である関節窩の前方に移行して、

前方の壁をつくるような
イメージの手術を行います。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

この烏口突起には
共同腱と呼ばれる
烏口腕筋、上腕二頭筋短頭という筋肉の腱が
くっついていますので、

その腱が前方に張り出すことによる、
脱臼防止作用も期待しています。

まとめ

今回は

肩が外れそう + 痛みがある

という状態について解説いたしました。

この状態では外れそうな状態を治すということが必要であるということをお伝えいたしました。まずは肩を専門とする整形外科医の診察を受けることをオススメします。

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当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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