肩の石灰化(石灰性腱炎)対する注射は要注意 「石灰を溶かす!?」ってホント?

スポンサード リンク

The following two tabs change content below.
歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩の激痛があるときにレントゲンを撮ると、

「肩に石灰が溜まってますね。これが痛みの原因です。注射しておきましょう。」

とサラッと説明、患者さんはよくわからないまま注射される・・・

なんて診療をしてしまう整形外科医がいます。

それは心配ですよね。

 

 

そして、そんな診療をする医師の注射はけっこう効かなかったりします。(これは何ら根拠のない僕の個人的印象ですが。)

ということで、今回は肩に石灰が溜まった状態、診断名「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」に対する注射について解説していきたいと思います。

 

ときには「石灰を溶かしましょう!」

と言って注射をする人もいるようですね。注射を溶かす注射は現状ではありません。
ただ、石灰を溶かすという表現が正しいかはわかりませんが、そのような状態を目指す治療はありますので解説を加えてまいります。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩の石灰化とはナニモノ?

肩の石灰化ですが、
その多くが肩の腱板の線維の中にリン酸カルシウム結晶が溜まっている状態です。

石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)という病名になります

このリン酸カルシウム結晶が付着した状態、すなわち石灰があるからと言って、絶対に痛いというわけではなく、その石灰の周囲に「炎症」が起こったときにはじめて痛みが出てきます。

そのためこれは石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)という診断名がつきます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

実際には石灰は腱板内だけでなく、その外の滑液包という部分にまで及んでいることもあります。それは最初は腱板の中にあった石灰が腱板を飛び出して滑液包に出てきたということだと考えられています。
しかし、一番多いのは腱板の中におさまった状態です。特に棘上筋(きょくじょうきん)という筋肉の腱の中が多いです。

石灰沈着の原因は不明

この肩の石灰化は原因はいまだ不明です。

不明ですが、

腱板が部分的に壊死(細胞が死んでしまう)した結果だとか、
カルシウムイオンやリン酸の代謝の問題だとか、
いろいろ言われます。

ただ、傾向から言うと、
女性に多いこと、子どもには稀なことは明らかで、さらに40–50歳代に多い印象がありますので、

四十肩、五十肩の時期と被りますね。

そう考えると、少しご年齢的に腱板が傷んでくる(加齢性の変化)・・・けど、肩をよく使う(オーバーユースの結果としての炎症)年齢という複合的な原因があるのかもしれません。

肩の石灰化があるときに、激痛を起こすのは石灰が溶けるとき

この肩の石灰化の結果起こる、石灰沈着性腱板炎は痛みはさまざまですが、ときには
激痛に襲われ、夜間に救急外来を受診されることも少なくありません。

この激痛になっているタイミングは、実は石灰ができあがったときや、できあがり途中のときではありません。

多くの場合はもともとあった石灰が吸収され、小さくなり、消失しようとする反応が(つまりいい反応ですね)
起こっているとき
です。

それを炎症反応と言うわけです。石灰は身体にとっては異物に近いものですから、それを排除しようと炎症を起こして、溶かしてしまおうというはたらきがこの場合の炎症反応です。

その炎症反応が異物を溶かそうとしているわけですから、とても激しいので痛みが激痛になると考えられています。

肩の石灰化(石灰性腱炎)での基本は注射治療

この肩の石灰化で痛みが激痛になっているときには、

「何でもいいからこの痛みをどうにかしてくれ!」と言わんばかりの剣幕でいらっしゃることがあります。

 

ただ、さきほど述べたように石灰が溶けるときに激痛になることが多いわけです。

ですから、

「この激痛は溶ける反応なのであと2週間我慢してください。」

と言いたくなるんですが、

そんなことはとても言えない痛がり方でいらっしゃるので、安心材料として、

「まずこの激痛を注射で抑えるようトライしてみます。でも、この激痛はどちらにしてもずっと続くものではないので、安心してください。」

というような説明をしています。

 

 

もちろん、激痛だからといって、「じゃあ、急いで手術で石灰を摘出しましょう!」というのはやり過ぎですね。

そこでどんな注射をするのか?
ということです。

石灰の周囲の炎症を起こしている部位にステロイドを注入

当然のことながら石灰の周囲に炎症が起こっています。
ですから、そこに強く炎症を抑えるステロイド薬を注入する注射が基本です。

大雑把には肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)というスペースに打ちます。ある程度いい位置に注射されていれば、これでほとんどの患者さんはだいぶ痛みが楽になったと、後日受診されたときに報告してくれます。

石灰そのものを吸引したり食塩水で洗浄したりも

もう少し直接的な石灰に対する方法としては、

石灰をそのものに少し太めの針を刺して、吸引して取り除いたり、滅菌された生理食塩水を注入しては吸引してを繰り返したり(洗浄)
ということをやる先生もいます。まぁ・・・これは、痛いです(苦笑)

この場合はよりピンポイントに注射を打たないといけないので超音波を使って見ながら注射をすることが多いです。
さらに、石灰がよっぽど柔らかい段階じゃないと意味がありません。

テキトーな注射では効果が足りないこともあり

これらの注射はしっかりといいところに注射をすれば、結構な即効性、高い効果が期待できます。

少なくとも激痛は治まることが多いのです。ただ、肩の専門でない先生などが注射をすると、
石灰からは距離のある場所に針先があったり、滑液包内ではなく三角筋内に針先があったりなどして、
効果が少ない
ということが起こりえます。

肩の専門でない先生だと、肩の注射は慣れた方法1種類しかやらない先生もいます。

ありがちなのは・・・ 肩の後方から打って、大結節の前方よりに存在する石灰とその周囲の滑膜炎部分に届いてないケースです。

しかし、石灰もさまざまな部位にできますし、注射を主にする肩峰下滑液包というのも関節のように完全なスペースというよりは滑膜に満ちた領域ですから、どこからどこに打つのか?針をどれほど進めるのか?ということはとても大切です。

つまり、注射の針先の位置というのは重要です。

ですから、もし注射の効果がかなり少ない、効いたか効いてないのかわからないという程度であれば、早めに肩の専門に相談してみていただくのもいいかもしれません。

肩の石灰化(石灰性腱炎)で注射が効果ないときの治療法

激痛が続いてしまうとき

激痛が続くときは
これまで解説したように注射が正しく石灰周囲の炎症部位に届いていない

というケースが圧倒的に多いです。

 

ですので、まず肩を専門とする医師にかかっていただくのをオススメします。

 

そして、いい位置に注射はされているにもかかわらず
激痛が続くというときには
別の原因も念頭に入れないといけまえん。

それは

  • 腱板断裂(腱板というスジが切れてしまった)
  • 椎間板ヘルニア(首の神経を圧迫している)
  • 肩の中が化膿してしまった(化膿性関節炎)
  • 痛風発作

などを念頭に精密検査を進めていくことになります。

激痛ではないけど動かしたときの痛みなどが残るとき

また激痛ではないけど、

痛みが続いてしまうというとき。

 

この場合に考えるのは

  • 石灰によるインピンジメントが起こっている可能性
  • 実は石灰は痛みの原因でない可能性

です。

前者の石灰によるインピンジメントが起こっていると判断した場合の治療は、
石灰を摘出する関節鏡手術を行うことも選択肢です。

インピンジメントについてはこちらをご参照ください。

インピンジメント症候群とは?肩だけでも3つある

2017.03.28

肩の石灰化(石灰性腱炎)の手術方法

肩の石灰化に対する手術についてはこちらで詳しく解説しております。

肩の石灰化は手術が必要? 方法と判断するポイントを専門医解説

2017.10.13

関節鏡を使って腱板の表面をよく観察し石灰を見つける

いまは関節鏡を使って石灰を除去する手術が主流です。

arthroscope surgery

関節鏡という関節用内視鏡を使って肩関節の中から外から石灰が溜まっている腱板を観察します。

石灰が外に飛び出していることは少なく、明らかに白ーい石灰が表面上見えるわけではありません。

しかし、炎症を起こしているので腫れていたり、充血して赤くなっていたりしますし、大きな石灰がある部分は膨らんでます。
また、術前にMRIやCTなどの精密検査で3次元的にどこに石灰があるのかをしっかりとイメージして手術に望みますので、石灰がどこにあるかを見つけることはできます。

石灰を見つけたら、できるだけ掻き出す

そして、石灰があると判断した場所の腱板に筋肉、スジの線維の方向に沿ってメスなどで切れ目を入れます。(線維の方向に垂直に入れてしまったらその時点で思いっきり腱板断裂ですから方向には気を使います。)

そして、切れ目に細い棒や棒状のシェーバーという吸引しながら削る機械を入れて、石灰を吸い取りながら掻き出していきます。

この方法でできる限りの石灰を取り除きます。

もし多少石灰が残ってしまっても、手術で直接クリーニングすると、そこに再度炎症が起こりますので、その結果、残った石灰が吸収されるというメカニズムも期待します。

さらに、石灰を切除したあとの腱板の欠損部を埋めるように腱板修復手術を加えることもあります。

石灰を溶かす治療はあるのか?

石灰が溶けるということで言えば、前半で話したように身体の反応として溶かすということはあります。

これは炎症反応の一環ですので痛みが強かったりするわけです。

 

しかし、外から石灰を溶かすような成分の注射というものは現状ではありません。唯一、さきほども述べた太い針で吸引するなんていうのは溶かすかのようなイメージですが、それはむしろ「溶けている」石灰を吸い取るというようなイメージです。

カタい石灰は注射で吸引はできません。

 

もう一つは現状ではやっている場所が少ないのですが体外衝撃波という治療があります。これは元々、尿路結石の治療で行われているものの応用で、肩の石灰も数回で消失したという報告もありますが、まだ一般的とは言いがたいという段階です。これも溶かすというよりは、壊すに近いかもしれませんね。

まとめ

今回は肩の石灰化(石灰性腱炎・石灰沈着性腱板炎)に対する注射療法について、基本的なことから解説してまいりました。

激痛をまず注射で抑えたとして、その後、石灰が吸収され、痛みが残らなければいいのですが、石灰が残ってしまい、痛みもじわじわと残る場合は手術も考える必要が出てきます。

それについても次回、解説していきます。

スポンサード リンク

当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

プロフィールはこちらをご参照ください。
スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。