鎖骨の脱臼 手遅れになる前となった後の手術法 肩専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

鎖骨の脱臼が表すモノは、肩甲骨と鎖骨から成る肩鎖関節脱臼(けんさかんせつだっきゅう)と胸骨(きょうこつ)と鎖骨からなる胸鎖関節脱臼(きょうさかんせつだっきゅう)があります。

頻度としては圧倒的に肩鎖関節脱臼が多く、こちらでも肩鎖関節脱臼について解説していきます。

 

この鎖骨の脱臼ですが、脱臼したては腫れてわかりにくかったり、意外と肩を動かせたりするために気付きにくいことがあります。

そのためケガをしてから時間が経って、脱臼が判明したり、また、最初は手術はしない方向にしたけど、やっぱり気になるから手術したいという方もおられます。

脱臼を治すときには靭帯が治るかどうかがキーポイントになりますが、時間が経てば経つほど、靭帯の治りは悪くなります。

そういった意味で「手遅れ」と表現されることもあります。本当は手遅れではありませんが、治療法が変わりますので、その違いについても解説いたします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩鎖関節脱臼の基本をおさらい

こちらでも解説しておりますが、少しおさらいしておきましょう。

肩鎖関節脱臼の分類 あなたの脱臼は重症?

2017.03.27

肩鎖関節(けんさかんせつ)とは?

まず肩鎖関節とは?という超基本ですが、その名の通り、肩と鎖骨の関節・・・もっと正確に言うと、肩甲骨の肩峰(けんぽう)という部位と鎖骨の外側の端っこからなる関節です。あまり関節として認識されたことはないかもしれません。

鎖骨を真ん中くらいから外側にずーっとなでるように触っていくと、少し盛り上がって、またすぐ凹んで・・・でも、骨は触る。という部位があると思います。その盛り上がったところが鎖骨の端っこで、凹んだところが肩鎖関節で、またその外側に骨が触れる部分は肩甲骨の肩峰です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩を動かすときに肩甲骨も連動して動くわけですが、その肩甲骨が動くときの1つの視点となっているのが肩鎖関節です。

肩鎖関節脱臼とは?典型的な症状は?

この肩鎖関節が外れてしまうというのが肩鎖関節脱臼ですが、典型的には鎖骨が肩峰より上に上がってしまいます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

そのため、典型的な症状としては盛り上がった鎖骨の端っこが体表上も出っ張って見えます。
ここを上から押すと凹みますが、また盛り上がります。
この現象をpiano key signといいます。ピアノの鍵盤のような動きだからですね。

また、当然、関節が外れてしまったので肩鎖関節部の痛みが伴います。

ただ、炎症が落ち着いてしまえば、もともとの「肩関節」は異常ないことが多いので、肩の動きはあまり制限されません。

どういったときに起こりやすい?

肩鎖関節脱臼は典型的な受傷機転、つまり原因ですが、それは肩を直接強打した場合です。

アメリカンフットボールやラグビーなどコリジョンスポーツと呼ばれるものでの衝突や転倒時、また、柔道などで投げられて肩から落ちたときなどが多いです。

脱臼だから大急ぎで整復しないといけない?

脱臼だからと言って、大急ぎで整復しないといけないかといえば、そうではありません。

piano key signの説明をしましたが、上に外れた鎖骨を上から押さえ込んでもまた上に上がってしまいます。
つまり、整復状態(関節が入った状態)の保持が非常に難しいんですね。

そのため、しっかりと治すためには手術が必要なことが多いです。

手術をせずに整復状態をできるだけ維持しようとすると、一番大切なのは肩甲骨から腕までを少し持ち上げた状態をキープすることです。これは装具やきっちり長さを調節した三角巾などを使います。

肩鎖関節脱臼の重症度分類 Rockwood分類

この肩鎖関節脱臼には重症度の分類があり、その重症度によってオススメの治療法が変わってきます。当然、重症になればなるほど手術が望ましいと言えます。

その重症度分類でよく使われるのが、Tossy分類とRockwood分類ですが、Tossy分類はちょっと大雑把なので、個人的にはRockwood分類の方がよく使われるような印象があります。

ということでRockwood分類ですが、

  • type1:肩鎖関節の捻挫レベル。脱臼ではない。
  • type2:肩鎖関節「亜」脱臼
  • type3:肩鎖関節脱臼 鎖骨が上方に脱臼
  • type4:肩鎖関節脱臼 鎖骨が後方に脱臼(稀)
  • type5:肩鎖関節脱臼 鎖骨が元の2倍以上、上方に脱臼
  • type6:肩鎖関節脱臼 鎖骨が下方に脱臼(稀)

こんな感じですが、

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

ほとんどの肩鎖関節脱臼は「上」に外れていきますので、

  • type1:捻挫
  • type2:亜脱臼
  • type3:脱臼
  • type5:重症脱臼

というような順で重症になり、
さらに稀だが、後方がtype4、下方がtype6という分類になっているというとらえ方がわかりやすいかと思います。

鎖骨が脱臼してから2–3週以内は手遅れでない

まず手遅れ、手遅れでないということについてわけながら手術のコンセプトを解説していきます。

肩鎖関節脱臼における靭帯の重要性、自己治癒力

鎖骨が脱臼しないように頑張ってくれているのが靭帯になりますが、肩鎖靱帯(けんさじんたい)という肩甲骨の「肩峰」という部分と鎖骨をつなぐ靭帯がまず損傷し、次に肩甲骨の「烏口突起(うこうとっき)」と鎖骨を繋ぐ烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)が断裂してしまいます。

この烏口鎖骨靱帯までが完全に切れてしまうと、肩鎖関節脱臼はより不安定となり、一般的には手術が検討されます。

この烏口鎖骨靭帯も断裂したあと、みずから修復しようという自己治癒力が働きます。

しかし、肩鎖関節が脱臼している状態だと、靭帯の走行していた烏口突起と鎖骨の距離が開いているので、それはかないません。

手術をして肩鎖関節を安定化させる

そこで手術を行うということになります。 その方法はいくつかあります。

烏口鎖骨靱帯を直接、糸で縫合する方法(なかなか縫えないことが多いですが)や烏口突起と鎖骨の間に強い糸を通して関節を安定化させる方法金属(プレートやワイヤー、スクリュー)を使って肩鎖関節を安定化させる方法、それらの組み合わせなどがあります。

これらの手術法の違いによる成績は大きく変わらず、現状としては術者の慣れている方法や術者が一番いいと考えている方法を選ぶことが多いと思います。

 

私の場合は様々な方法を経験してまいりましたが、いまは関節鏡を使って烏口突起と肩鎖関節の間に強い糸を通して固定する方法をとっています。

ケガをしてからだいたい2–3週以内であれば問題なく自己治癒力がはたらき烏口鎖骨靱帯が修復され、肩鎖関節が安定します。

鎖骨が脱臼してから1ヶ月以降は手遅れ・・・?

しかし、ケガをして、鎖骨が脱臼してから1ヶ月以上経過していると、特に大切な烏口鎖骨靱帯の自己治癒力が著しく落ちてしまうことになります。

そうなると、ここまで述べたような肩鎖関節を安定化させるような治療では自己治癒力が落ちているので、結果、治らないということになり得ます。

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それは例えば、肩鎖関節を安定化させた金属を抜去したり、固定していた糸が切れたりすればまた脱臼してしまうということになります。

一般的にはキズを大きく開けて靭帯を移植する

そうならないようにするには、一般的には少し手術創(キズ)は大きくなりますが、まだ生きている靭帯を烏口突起と鎖骨の間に移植する方法がとられます。

まだ生きている靭帯とは

烏口突起と「肩峰(けんぽう)」という、どちらも肩甲骨の突起をつないでいる烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい)であったり、

鵞足という膝の内側にくっつく腱の一部であったりします。

これはなかなかチャレンジングな手術であり、身体に対する負担も小さくないですね。

関節鏡を中心に使った靭帯移植する手術

肩は関節鏡手術でできる範囲が大きいので、この靭帯の移植の中で烏口肩峰靱帯を移植するのは(正確には移行と言いますが)、関節鏡でやっている先生もいらっしゃいます。

関節鏡を使うことで不十分な治療になるべきではない

ただ、なんでもかんでも関節鏡でやるのは批判が多いのも事実です。

キズの小ささより、しっかりとした手術をして欲しいと思う人はかなり多いと思います。

特にこの靭帯移植の手術の場合に関節鏡を使ってやったという報告を見ると、靭帯への糸のかけ方が強度的に不十分だったり、靭帯の骨への固定性も不安が残る方法だったりします。

工夫次第では低侵襲で十分な手術が出来る

と批判しながらも、私も関節鏡で靭帯を移植(移行)する手術をやっています。

もちろん、先ほど述べたように「関節鏡でやるから不十分になってしまう」ということは避けないといけませんので、そこは独自の工夫をしています。

しっかりと移植靭帯を固定できるのであれば、関節鏡でやる方がスマートで三角筋という大事な筋肉への負担も少なく手術ができます。

まとめ

今回は鎖骨の脱臼、つまり肩鎖関節脱臼の手術について

一般的に手遅れと言われる時期の前と後の手術コンセプトの違いについて解説いたしました。 少しでも参考になりましたら幸いです。

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当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

4 件のコメント

  • 2週間前に自転車で転倒し、病院で肩鎖関節脱臼type3の診断を受けました。安静時の痛みはそれほどではありませんが、動きによっては激痛が走り、肩から先の伸び・抜け感、鎖骨の突き出しが日々進んでいるような感覚もあり、時間が経つと靭帯の自己治癒力も落ちるという先生のweb記載もありましたので、受診している病院の医師に手術を相談したのですが、整形外科の先生・スポーツ整形の先生2名とも、手術をしない場合と手術をした場合の回復度は変わらないか悪くなる(肩峰に痛みが出る場合が有る等)、術後合併症のリスクもある、等の御見解で、手術には慎重です。
    念のため、別の医院のスポーツ整形の先生に相談しましたが、その先生の見解は手術した方が良い、でした。そこの医院では手術はしておらず、それ以上の相談は残念ながらできませんでしたが・・・
    尚、上記3名の医師共にレントゲン画像と肩の触診のみの診断で、ストレスレントゲン検査等はしていません。
    前述の病院のスポーツ整形の先生によれば、肩鎖関節脱臼type3への手術適用は全体の1割程度で、type3については手術しないのが現在は常識になっているとの事でしたので、手術をせずこのままという事も検討しているのですが、靭帯整復の機会を失う事が気がかりです。宜しければ先生の御見解など伺えないでしょうか。

  • こんにちは。今年6月に交通事故で左肩鎖関節脱臼3か4でしたが手術なしで軽く3週間固定してリハビリになりました。可動域は外旋が10度くらいで停滞し他の可動域もなかなかですがなんとか生活できる程度です。左の鎖骨遠位端が上かつ後ろにズレて肩峰に少し載っかってるようなかんじです。転院先の病院では手術はせずとりあえずリハビリということでますが、やはり肩と肩甲骨の重みだるさは後遺症として残り右の首や腰に負担がきています。改善は無理ですか?

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