SLAP損傷のすべてを肩専門スポーツ医が解説します

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は野球肩などの投球障害肩の1つであるSLAP損傷(すらっぷそんしょう)について解説いたします。

投球障害について精密検査をしていくと、医師から「SLAP損傷ですね。SLAP損傷って言うのは・・・」と説明を受けると思いますが、なかなか短時間の説明で完全な理解は難しいだろうと思います。

ここではSLAP損傷とは?という基本から、SLAP損傷の原因、特徴的な症状、判別するテスト、治療、手術まで全般的にしっかり解説したいと思います。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

SLAP損傷とは?(肩関節上方関節唇損傷)

SLAP損傷のSLAPというのは、頭文字なんですが、

Superior:上方
Labrum:関節唇(かんせつしん)
Anterior:前方
Posterior:後方

ということで、

要はSLAPとは肩の上の方の関節唇の前側と後ろ側です。
ここからここまでの間のどこかの損傷ということになります。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

関節唇(かんせつしん)とは?

関節唇というのは肩の関節の中で肩甲骨側の受け皿にあたる関節窩(かんせつか)と呼ばれる部位の受け皿を深くして外れにくくする役割がある柔らかめの軟骨です。

 

ちょっとわかりにくいですね。噛み砕きます。

まず、肩関節は上腕骨と肩甲骨から成りますが、肩甲骨側が受け皿のような形、上腕骨側が受け皿に乗っかるボールのような形をしています。

これをボール&ソケットタイプの関節と呼びます。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

この受け皿側の骨(関節窩)の形状ではとても浅いので、ボールがすぐに転げ落ちてしまいそうになります。

つまり、脱臼ですね。

そうならないように関節窩をぐるりと取り囲むようにして、受け皿に深さを与えているのが関節唇という柔らかめの軟骨だということです。

なぜ損傷してしまう?原因は?

この関節唇の上方が損傷してしまう原因ですが、

一番多いのはインターナルインピンジメントと呼ばれる投球動作における擦れ(こすれ)や衝突です。

 

どこどどこが衝突するかというと、

上方の関節唇(=SLAP)後ろ側、上側のインナーマッスルである棘下筋と棘上筋のスジである棘下筋腱+棘上筋腱です。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

 

この2つの部位が投球動作の特に腕がしなるリリース直前あたりの動きで近づき、擦れてしまう。というのがインターナルインピンジメントです。

この衝突を繰り返すことで上方のやや後方よりの関節唇が関節窩(骨)から剥がれます。

 

そして、この上方関節唇には実は上腕二頭筋(力こぶ筋)の長頭腱がくっついていますので、この上腕二頭筋の牽引力も加わって、だんだん前方の方まで関節唇が損傷してしまう。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

そんな流れが典型的です。

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SLAP損傷はどんな症状?

SLAP損傷の多くは日常生活ではあまり痛くないけど、投げるときには毎回痛い。

それもボールをリリースする辺りでの痛みが典型的です。

SLAP損傷を判別するテストは?

このSLAP損傷があると特定の動きや負荷において痛みが走りやすいことが知られています。

われわれ整形外科医はこういった診察テストを用いて、痛みの原因に迫っていきます。

Crankテスト クランクテスト

ひとつはCrankテスト(クランクテスト)と呼ばれるテストで、まさに投球動作のしなりを再現するようなテストです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

といってもテストで投球動作レベルの高速運動は引き出せませんので、負荷を強めるために、腕を肩甲骨に押しつけるような圧力をかけながら動かしています。

O’brienテスト オブライエンテスト

もう一つはO’brienテスト(オブライエンテスト)と呼ばれるテストです。

これは腕を内側に捻った状態(内旋+回内)で前方から挙上する力に負荷をかけるテストです。


画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

これによって上腕二頭筋長頭腱の付着部に負荷がかかりますので、SLAP損傷があると痛みが走ります。

SLAP損傷の精密検査はMRIで

SLAP損傷を疑ったら、MRIを撮って確認します。

MRIでは上方の関節唇もしっかりとうつりますので、損傷しているとわかります。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

ただ、ごくわずかな損傷はわからないこともあるのと、SLAP損傷があったとしても、それが必ずしも投球動作時の痛みの原因とは限らないという部分が難しいところですし、ここが腕の見せ所と思っています。

SLAP損傷の治療は?

このSLAP損傷の治療ですが、それは損傷具合、重症度によって変わってきます。

重症なSLAP損傷では関節唇が大きく剥がれて、関節の中で不安定になってしまっています。

これでは改善するのは難しいと判断し、手術をすることがあります。

それに対して、少し剥がれている程度のSLAP損傷であれば、まずは手術せずにリハビリテーション、投球動作改善などを駆使して治療していきます。

SLAP損傷のリハビリテーションは?

このSLAP損傷のリハビリテーションとして、とくに重要視して欲しいのは、

  • 肩甲骨周りの筋力訓練
  • 肩のインナーマッスル(腱板筋)の筋力訓練

ということになります。

SLAP損傷の原因を考えると、投球動作における腕のしなりの中でいかにインターナルインピンジメントを起こさないかが大事ということがわかります。

 

それには肩甲骨と上腕骨の間の、いわゆる肩関節での回旋運動が過度にならないように、肩甲骨がしっかり大きく動くということが大切です。

肩甲骨が十分に動かず、また、不安定になっているとすれば、結局、肩関節が頑張るしかありませんから、インターナルインピンジメントのリスクが高まります。

 

また、インナーマッスルが弱いと、肩関節の動きの中で上腕骨がグラグラしますので、これまたインターナルインピンジメントが起こりやすくなります。

それがこのリハビリテーションの重要性です。

具体的なリハビリテーションについてはこちらの記事もご参照ください。

野球肩におけるインナーマッスルの鍛え方・トレーニング法を専門医解説

2016.12.21

野球肩のリハビリポイントを肩専門医が解説

2016.12.20

SLAP損傷の手術は?

最後にSLAP損傷の手術ですが、これは主に関節鏡という肩関節の内視鏡を用いて行います。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

それゆえ周囲の筋肉などの損傷を最小限にして手術を行うことができます。

そして、関節唇が剥がれてしまった関節窩という骨に糸を埋め込んで、その糸を剥がれた関節唇に通して結ぶ。

という手術を行います。

 

それ以外にもカタくなっている部位に切れ目を入れたり、炎症している部位をクリーニングしたりという処置を追加したりします。

手術後は先ほど解説したリハビリテーションが重要になってくることは同様です。

まとめ

今回はSLAP損傷について基本から治療、手術まで全般的にまるごと理解していただくことを目指して記事をお届けいたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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