肩の前側の痛みを状況別に肩の専門医が解説します

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

あれ?肩の前側が痛いな・・・

意外と肩の痛みは急に、突然くることが多いので驚き、不安に感じる人が多く、整形外科外来でも毎日多くの方が肩の痛みで受診されます。

肩という関節は非常に複雑な仕組みをしていて、いろいろな部分が痛みの原因になります。前側が痛いこともあれば後ろが痛いことも、時に腕全体が痛いこともありますね。

また、前側が痛いというケースでもその原因は多岐に渡ります。

ということで言えば、実際に肩専門の医師の診察を受けることが一番ではありますが、今回は少しでも痛みの原因を推し量れるように状況別に多い原因ということでまとめてみました。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩の前側の痛みの状況別原因

肩の前側の痛みですが、いろんなタイミングで痛みが出現します。それぞれの状況別に考えやすい原因を解説していきます。

 

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

肩の前にあるのは主に

  • 肩甲下筋や棘上筋という腱板(けんばん)の前方部分
  • 腱板疎部(けんばんそぶ)という肩甲下筋と棘上筋の間
  • 上腕二頭筋長頭腱(じょうわんにとうきんちょうとうけん)
  • 前方関節包(ぜんぽうかんせつほう)
  • 烏口突起(うこうとっき)

これらになります。

起床時や夜間などの痛み

朝起きたら肩の前側が痛かった・・・

肩の前が痛くて眠れない・・・

というのはよくあります。

 

肩は特に夜間痛が多い部位なので、これだけでは絞りきれないのが正直なところですが、

外傷性やスポーツなどの運動が原因でない痛みということで言うと、

  • いわゆる四十肩
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 60歳代以降であれば腱板断裂

などを考えます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

 

あとは突然の強すぎる痛みであれば

  • 石灰沈着性腱板炎

というものも多く見られます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

 

腱板の中でも棘上筋や棘下筋という外から後ろにかけての腱板に沈着することが多いですが、

肩の前ということで言うと、肩甲下筋腱に石灰が沈着してしまうこともあります。

長く続く動かしたときの痛み

これも外傷性でないという意味では年齢的に頻度が多いモノということで

  • 40–50歳代の四十肩・五十肩
  • 60歳代以降の腱板断裂
  • 全年齢に共通して上腕二頭筋長頭腱炎

というものと、
痛みが激痛であれば

  • 石灰沈着性腱板炎

を考えるのは、起床時や夜間痛がある場合と同じですが、

 

さらに絞っていくための特徴としては、

  • 四十肩・五十肩はあらゆる方向に動かす時に痛みがあったり、だんだんとカタくなっていく
  • 腱板断裂は逆の手で腕を持ち上げると上がるが、自分の力だけで腕をバンザイまで持っていこうとすると痛みが強いか、挙げられない
  • 上腕二頭筋長頭腱炎は前方に腕を伸ばしたり、モノを前から持ち上げたりするときに痛みが走る

というようなところも推測に役立つかと思います。

ボールを投げるなどのスポーツ中や後の痛み

ボールを投げる動作が典型的ですが、スポーツ中やその後に肩が痛くなる場合はやはり、その負担が痛みの原因になっていることがほとんどです。

  • 腱板疎部損傷
  • 腱板断裂
  • 上腕二頭筋長頭腱炎

これらを肩の前の痛みとしては考えたいです。

 

腱板疎部というのは肩の前方の棘上筋と肩甲下筋という腱板の筋肉の間にある腱板よりはちょっと薄い膜性部分を言います。

ここは肩の前方への安定性を高めてくれているので、損傷すると肩がやや不安定になって脱臼はしないまでも、動かしたときの痛みがでやすくなります。

また、上腕二頭筋腱のスムーズな滑りも支えてくれていますが、この損傷によって上腕二頭筋腱の滑りがスムーズでなく炎症を起こしてしまう上腕二頭筋腱炎とのつながりも考えられます。

また、スポーツ動作の負荷によって腱板断裂を起こしてしまうこともあり得ます。

ジムでのトレーニング中や後の痛み

ジムでのトレーニングもスポーツ中やスポーツ後の痛みの中に含まれると思いますが、

特にどのトレーニングで痛みが出現したか?というのは原因特定の助けになります。

 

例えば、ベンチプレスの場合は一番働く筋である大胸筋が肩の前方に付着する部分で傷めてしまった可能性や肩甲下筋腱に炎症が起こる可能性などを考えます。

ベンチプレスはこのようなトレーニングです。

アップライトロウサイドレイズでは、肩峰下インピンジメントを起こす肢位になりやすいので、棘上筋、棘下筋などの後上方の腱板の損傷や炎症を疑いますが、時にこれらも前の痛みとして自覚することがあります。

インピンジメント症候群とは?肩専門医が解説

2016.12.12

 

アップライトロウはこちら

サイドレイズはこちら

肩の前の痛みの原因別の治し方と外せないポイント

ここまで状況別の原因推測の方法を解説してまいりました。

次に、ではその原因がある程度わかったところで、どう治せばいいのか?ということにつなげたいところですね。

あと、ほとんどの原因において外せないポイントは当たり前かもしれませんが

「痛い動作はできるだけ避ける」

ということです。

 

炎症や損傷があるときに、その部分に負荷が強まる動作で痛みが発生することがほとんどです。そう考えると、自然治癒力を促し治していくためには「痛い動作は避ける」ということは基本中の基本と言えるでしょう。

なんか気になるなぁと思って、痛い動作をむしろ繰り返してしまう人もいらっしゃいますが、それはそのたびに傷めつけているようなものです。

 

そのため、どういう動作で痛みが走りやすいかということも解説しております。

例外としては肩関節拘縮状態があります。これは四十肩や五十肩の慢性化した状態で凍結肩と言ったりもしますが、その場合は多少の痛みであれば動かして柔軟性を上げていった方が治癒につながることあります。

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上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋長頭腱というのは、いわゆる「力こぶ」の筋肉の一部で肩関節の中に入っていく部分を言います。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

要は力こぶの筋肉ですから、肘を曲げるという動きを主に担当します。また、腕を前方から挙げる、前に伸ばすという動きの時にも働きます。

そのため、そういった動きで痛みが走ることが多いと思うので注意ですが、さらに、

 

上腕二頭筋のストレッチをして緊張度を下げておくこともいいことです。

ストレッチについてはこちらの記事をご参照ください。

上腕二頭筋長頭腱炎に有効なストレッチはこれ一択! 専門医解説

2017.03.29

また、病院で良く行うのは上腕二頭筋長頭腱のすぐ近くに炎症を抑えるステロイドを注射する治療です。

 

腱板疎部損傷

腱板疎部損傷は肩甲下筋と棘上筋の間の薄い膜と説明いたしました。肩の前方への安定性に関与しているとも述べましたが、それゆえ肩の前方へ負担がかかる肩の外旋という動きや伸展という背中側に持っていく動きで痛みが走ることがあります。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

そういった動作は避けたいところですが、凍結肩と同じようにだんだんと腱板疎部も線維化といってだんだん柔軟性に乏しい組織で分厚くなっていってしまいます。

そういう意味では痛みが強い時期は安静につとめ、痛みがひいてきたら肩の外旋のストレッチを無理のない範囲で継続していくことは大切です。

こちらの記事もご参照ください。

腱板疎部損傷とは?治療法は? 肩専門医解説

2016.12.14

四十肩・五十肩

四十肩・五十肩というのは、肩関節周囲炎、そして慢性化した凍結肩という診断名がつきますが、一番の主体は関節包という関節を包む膜と考えられています。

この関節包はもともと薄い膜なんですが、痛みの元である炎症が起こってくると、反応してだんだん分厚くなり、肩の柔軟性が損なわれてきます。

そのため、炎症が強い、つまり痛みが強い時期は炎症を抑える治療として安静、内服薬、注射、湿布などをおこない、

痛みが落ち着いてきたらリハビリ、ストレッチなどをやっていくというのが基本と言えます。

肩関節周囲炎、凍結肩についてはこちらもご参照ください。

肩関節周囲炎に有効な3つのストレッチ

2017.04.08

肩関節周囲炎の治療法の原則を専門医が解説

2017.04.07

凍結肩とは? 肩が凍結しちゃうってどういうこと?

2017.04.05

腱板断裂

腱板断裂となってしまうと、やはりちょっと重症ですね。

大事なインナーマッスルの一部が切れてしまった状態です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

多くの腱板断裂(完全断裂)は自然にくっつくことが期待できないため手術が選択肢に入ります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

逆に部分損傷や炎症を起こしている程度であれば、自然治癒も期待できます。

くわしくはこちらの記事もご参照ください。

肩腱板損傷の治療方法まとめ 肩専門医解説

2016.12.08

まとめ

今回は肩の前側が痛いときの状況別原因推測法をお伝えいたしました。

結局、しっかりとレントゲンやMRIを撮像したり、肩専門医の診察を受けたりといったことが必要になりますが、そういったときにも今回の記事を頭に入れておいていただくと話が入ってきやすいのではないかと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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