肩甲上神経ブロックとは?その方法と意味を専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩甲上神経ブロックいう神経ブロック注射について解説いたします。

肩甲上神経ブロックというのはかなり昔から行われている神経ブロックです。肩の痛みに効果があるということが言われていますが、その解剖学的な複雑性から、実際に効果的な肩甲上神経ブロックをやる整形外科医が少なくなっているという現状があるようです。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩甲上神経とは?

肩甲上神経(けんこうじょうしんけい)とは、肩の近くに走る末梢神経(まっしょうしんけい)の1つです。

末梢神経といえば、他には正中神経とか坐骨神経などが有名ですね。それと同じ種類の神経です。

肩から腕の運動や感覚を司る神経は首から出てきます。そして、肩甲上神経は肩の上あたりで枝分かれして、肩甲骨の凹みを通って、筋肉や関節に入ります。

画像引用元:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器 第一版 医学書院

インナーマッスルを動かす神経

主に肩甲上神経は運動神経です。つまり、筋肉に信号を伝えるはたらきがあり、これが働かなくなると、いわゆる「運動麻痺」が起こります。

この肩甲上神経が支配する筋肉は

  • 棘上筋(きょくじょうきん)
  • 棘下筋(きょっかきん)

の2つです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩の重要な腱板筋群(インナーマッスル)の2/4、つまり半分を支配していると言えます。

肩の後ろの感覚にも関係していると言われている

以前から、肩甲上神経には皮枝(皮膚感覚を支配する枝)は存在せず、純粋な運動神経と言われていましたが、実際に肩甲上神経麻痺の患者さんを診察すると、かなりの頻度で、肩の後ろから外側の感覚低下(しびれや鈍い感じがする)という症状があることが報告されています。

少なくとも関節には枝を出している

感覚を司る皮枝の存在は議論中ですが、解剖学的に関節の中に入る枝は存在します。

関節とは肩鎖関節(けんさかんせつ)肩関節です。

そのため、この神経ブロックはこれらの関節痛に対する効果が期待されます。

神経ブロックは神経を休ませる + 炎症を抑える

神経ブロックの意味合いとしては、神経に対して局所麻酔薬を浸透させることで、神経を一時的に軽く麻痺させます。

これで神経が原因の痛みは一時的にでも和らぎます。これだけだと単なる一時しのぎのようなイメージですが、この一時的にでも神経を休ませてあげるというのが効果的なのではないかと考えられています。

神経が痛みを出しているというのは、つまり、痛みを感じる信号を送り続けているということになります。その神経の緊張状態を一時、遮断して上げて、休ませて上げることで神経の働きを正常に近づける効果を期待してるということですね。

そして、さらにステロイド薬を混ぜることで、神経が緊張状態の結果、周囲や神経そのものの炎症を引き起こしている場合に、その炎症を抑える効果も期待できます。

肩甲上神経ブロックの方法はいくつかある

この肩甲上神経ブロックの方法は複雑な肩甲骨の形からいろいろな方法が開発されています。

直接、肩甲上神経に針を到達させようとするものもあれば(神経損傷に注意が必要です)、直接は届かず、その近くに針を届かせることを目的とする方法もあります。

どちらの方法でもあまり太い針は使わず(神経障害のリスクを減らす)、急な激痛やしびれが走った場合は針を進めず、という慎重さをもってブロックします。

肺損傷に注意

また、肩甲骨のすぐ前、深くには肺があります。しかし、肩甲上神経は深いところにありますので、ある程度長い針を用いることがあります。

そのときに方向や深さによっては肺を刺してしまうことが起こりえます。細い針での肺損傷は小さな気胸を作ってしまうことがありますが、経過観察で治癒することがほとんどです。

しかし、解剖学的に肺を避けた注射も可能ですから、習熟した医師が行えば基本的には安全な注射と言えます。

 

注射の手技、方法については、

雑誌 整形外科 Vol.66 No.5 (2015–5) 肩甲上神経ブロック

という三笠元彦先生が執筆された論文がわかりやすく勉強になりました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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