上腕骨近位端骨折の手術を受けるか否かの判断ポイントを解説します

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)の手術を受けるか否か?ということについて解説いたします。

医師には手術を勧められたが、どうしても受けなくちゃいけないのか?という疑問がでてきたり、逆に「手術は希望されますか?」と聞かれたが、「そんなのわからん!」と不安にさせられてしまうケースがあるかもしれません。

われわれ整形外科医がどのようなポイントで手術をオススメしたり、しなかったりしているかということが少しでもお伝えできればと思います。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

上腕骨近位端とはどこ?

まず基本的な解説から入ります。

上腕骨近位端とはどこのことを指しているのか?ということですが、これは肩に近い方を指しています。

上腕骨は肘から肩にかけての長い骨ですが、それを3つのパートに分けています。大抵の長い骨はこの分け方になります。

  • 遠位端
  • 骨幹部
  • 近位端

骨幹部は幹になるところですから、中央です。
そして、遠位端は身体の中枢から遠い方・・・つまり上腕骨で言えば肘の方ですし、近位端は身体の中枢から近い方・・・つまり肩の方ということになります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

また、この上腕骨近位端は肩関節を形成している関係上、少し複雑な形をしていて、それぞれ骨折部位ごとの名称がついています。

上腕骨外科頚骨折

まず上腕骨外科頚骨折(じょうわんこつげかけいこっせつ)ですが、これは近位端骨折の中では一番、遠位よりの骨折です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

長い骨を人の身体にたとえた名称をつけることがありますが、
上腕骨の場合は

肩関節を形成する、丸い端っこの軟骨を含む部分を上腕骨頭(こっとう)、つまりと表現し、

そのすぐ下の骨の部分を頚部(けいぶ)、つまり、と表現するわけですが、

上腕骨はその外側に大結節、小結節という出っ張りがあるので、ちょっと複雑で、首も2つの首があります。

その1つが外科頚になります。
これは上腕骨骨幹部 と 上腕骨頭+大結節+小結節をわける位置の首と言えます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

上腕骨解剖頚骨折

その外科頚に対して、解剖頚(かいぼうけい)というのがもう一つの首です。

これは

上腕骨骨幹部+大結節+小結節 と 上腕骨頭をわける位置の首です。これはまさに上腕骨頭の軟骨がなくなる部分に一致します。

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上腕骨大結節骨折

上腕骨大結節骨折(じょうわんこつだいけっせつこっせつ)外側に出っ張る骨の部位の骨折で、この部位には腱板(けんばん)というインナーマッスルが付着しています。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

こちらで詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

上腕骨大結節骨折とは? リハビリは?少しのズレも注意が必要な理由

2017.04.08

上腕骨小結節骨折

上腕骨小結節骨折(じょうわんこつしょうけっせつこっせつ)は大結節骨折と似ていますが、大結節が外側に出っ張り、腱板の筋肉が3つ付着するのに対し、小結節は前側に出っ張り、腱板の筋肉の内、肩甲下筋腱のみが付着するという特徴があります。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

手術をするかどうかの基本ポイント

手術するかどうかの基本として、

  • 大きくズレていれば手術をする
  • ズレが小さければ手術をしない

という大雑把なポイントがあります。

骨折はある程度接していればたいていくっつく

骨折のズレ方ですが、少しでもズレていれば手術しないといけないわけではなく、多少ずれていても、折れた骨同士がある程度接していたり、近接していれば、たいていくっついてくれます。

骨折のくっつきかた=変形の程度がポイント

しかし、骨折のくっつき方が大切になります。

お子さんでもない限り、骨折したときのズレから自然に元の形に戻りながらくっつくことはありません。
そうすると骨がくっついても、元の形とは違う=変形 という状態になります。

 

この変形の程度が、肩の機能、はたらきにとって、どのくらい問題になり得るのか?

これが手術をするときの一番の判断ポイントです。

ズレが大きければ、変形も大きくなり、肩を動かす時の痛みが残ってしまったり、痛みは良くなっても、動かせる範囲(可動域)が制限されたりということが起こりえます。

これはズレが小さい骨折と言っていいと思います。 画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

手術をした方がいいズレ方といってもグレーゾーンがある

それなら何センチずれたら、そういった問題がある変形になるのか?という明確な基準はありません。

どうしてもグレーゾーンと思われるズレが出てくるのは人の身体ですから個人差の中では仕方ありません。

これはくっつく(骨癒合)可能性もありますが、ズレは一般には大きいと考える骨折です。 画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

そこで、ちょっと言葉足らずな医師だと
「手術を希望されますか?」

と十分な情報を提示する前に聞いちゃうわけですね。

自分の肩に望む機能、状態と手術のリスクを天秤にかける

ここで大切になるのは、自分が骨折を治して、どのような生活をしたいのか?どのような活動をしたいのか?どのようなパフォーマンスをしたいのか?

というゴールです。

これを明らかにすると、そのときに、自分の肩はどのくらい動いて、どのくらい激しい動きにも耐えて・・・という肩に望む機能ということが見えてきます。

そうすると、骨折部の変形や保存治療(手術をしない治療)による固定期間がもたらす筋力低下・可動域制限の可能性を少しでも減らそうということで手術を積極的に小さなズレでも選択をするということは良い選択と言えるかもしれません。

逆にご高齢の方で、「肩はちょこっと動けば満足です。」という人もいらっしゃいます。

そのような人に手術の様々なリスクを冒して、小さい骨のズレを戻しにいくような手術は行うべきではないでしょう。

まとめ

今回は上腕骨近位端骨折について、特に手術を迷ったときの考え方について解説いたしました。

わたしたち医師も、手術をしたらこうなって、手術をしなければこうなるということを明確にズバッと言えるわけではないのですが、ある程度の幅を持った予測をお伝えすることはできます。

そういった情報を医師から引き出して、その上で、今後ご自身の肩に望む機能と照らし合わせて決断されるのがいいと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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