上腕骨近位端骨折のリハビリポイントを解説 by専門医

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)のリハビリポイントについて解説いたします。

上腕骨近位端とは腕の骨の肩に近いところの骨折で、肩の骨折では非常に頻度が高いモノです。
そして、肩という非常にカタくなりやすい厄介な関節の近くの骨折なので、
リハビリが重要になります。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

上腕骨近位端骨折の基本おさらい

上腕骨近位端骨折の基本をおさらいしましょう。また、手術をするかどうかの判断についてはこちらで解説しております。ご参照ください。

上腕骨近位端骨折の手術を受けるか否かの判断ポイントを解説します

2017.04.09

上腕骨近位端とはどこ?

まず基本的な解説から入ります。

上腕骨近位端とはどこのことを指しているのか?ということですが、これは肩に近い方を指しています。

上腕骨は肘から肩にかけての長い骨ですが、それを3つのパートに分けています。大抵の長い骨はこの分け方になります。

  • 遠位端
  • 骨幹部
  • 近位端

骨幹部は幹になるところですから、中央です。
そして、遠位端は身体の中枢から遠い方・・・つまり上腕骨で言えば肘の方ですし、近位端は身体の中枢から近い方・・・つまり肩の方ということになります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

また、この上腕骨近位端は肩関節を形成している関係上、少し複雑な形をしていて、それぞれ骨折部位ごとの名称がついています。

上腕骨外科頚骨折

まず上腕骨外科頚骨折(じょうわんこつげかけいこっせつ)ですが、これは近位端骨折の中では一番、遠位よりの骨折です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

長い骨を人の身体にたとえた名称をつけることがありますが、
上腕骨の場合は

肩関節を形成する、丸い端っこの軟骨を含む部分を上腕骨頭(こっとう)、つまりと表現し、

そのすぐ下の骨の部分を頚部(けいぶ)、つまり、と表現するわけですが、

上腕骨はその外側に大結節、小結節という出っ張りがあるので、ちょっと複雑で、首も2つの首があります。

その1つが外科頚になります。
これは上腕骨骨幹部 と 上腕骨頭+大結節+小結節をわける位置の首と言えます。

 

上腕骨解剖頚骨折

その外科頚に対して、解剖頚(かいぼうけい)というのがもう一つの首です。

これは

上腕骨骨幹部+大結節+小結節 と 上腕骨頭をわける位置の首です。これはまさに上腕骨頭の軟骨がなくなる部分に一致します。

上腕骨大結節骨折

上腕骨大結節骨折(じょうわんこつだいけっせつこっせつ)外側に出っ張る骨の部位の骨折で、この部位には腱板(けんばん)というインナーマッスルが付着しています。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

こちらで詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

上腕骨大結節骨折とは? リハビリは?少しのズレも注意が必要な理由

2017.04.08

上腕骨小結節骨折

上腕骨小結節骨折(じょうわんこつしょうけっせつこっせつ)は大結節骨折と似ていますが、大結節が外側に出っ張り、腱板の筋肉が3つ付着するのに対し、小結節は前側に出っ張り、腱板の筋肉の内、肩甲下筋腱のみが付着するという特徴があります。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社 

上腕骨近位端骨折のリハビリポイント

上腕骨近位端骨折に限らず、共通する大原則として、

  • 手術をしてない場合は骨がくっつくまでは関節を動かさない
  • 手術をして十分に骨折部が固定できた場合は早めに関節を動かす

ということです。

当然、関節を動かさないと関節はカタくなります。特に骨折後は出血もしていますし、関節や周りの癒着が起こりやすいので、カタくなりやすいです。

ですから、手術でしっかりと骨折部がズレないように固定できれば、多少痛くても早くから関節を動かすリハビリを開始します。

画像引用元:上肢の骨折・脱臼 手技のコツ&トラブルシューティング (OS NOW Instruction)第一版 メジカルビュー社

しかし、手術をしてない場合は、関節を動かせば骨折部がズレてしまうリスクが大きいので、骨がある程度くっつくまでは動かせません。

それを多くの関節はギプスのようなもので固定するわけですが、肩においては三角巾のようのなものや、装具のようなものを使わざるをえず、完全な固定とはいかないのが難しいところです。

Portrait Of Young Man With Arm In Sling

大結節・小結節は腱板がくっついている

この上腕骨大結節骨折の特有とも言えるポイントとして、大結節と小結節に腱板というインナーマッスルが付いていて、常に肩を動かす時に、骨を引っ張るということです。

ですから、肩を動かしていく「可動域訓練」のときも、自分の力で、つまり、自分の筋肉を使って動かしていく「自動可動域訓練」と、リハビリを担当する療法士や、自分の逆側の手を使って、自分の筋肉は脱力したままで動かす(=動かされる)「他動可動域訓練」を区別して行います。

最初はインナーマッスルによって引っ張られてズレてこないように、「他動可動域訓練」からはじめるのが肩のリハビリの基本です。

骨がくっつく前から振り子運動リハビリを推奨する先生も

また、肩のリハビリでよく行われるのが振り子運動というもので、頭を下げて、腕の力を抜いた状態で、腕を前後左右、円状に振る運動です。

これは、まず上手に力を抜ければ、いい他動可動域訓練になりますし、また重力や慣性力で骨折部は牽引される力が緩く加わります。骨折の整復(元の形に戻す)の基本は牽引ですから、この牽引力は多くの場合はプラスに働きます。

そのため、骨折した当初から、この振子運動リハビリだけはしっかりご指導した上で、やってもらうこともあります。

上手にできれば、骨折がズレずに、肩がカタくなるのも防げますからオススメですが、当然のことながら振子運動でも痛みがありますから、動きがぎこちなく、力が入ってしまったりすれば、骨折部がずれてしまうこともありますので、ケースバイケースと言えます。

まとめ

今回は上腕骨近位端骨折のリハビリポイントについて解説いたしました。上腕骨近位端骨折は骨折部位、程度、手術の有無、手術の方法、骨折の治り具合など、様々な要因でやるべきリハビリが変わりますので、主治医とよく相談し、可能なら病院でのリハビリテーションも受けたいところです。

しっかりと治療、リハビリができれば、肩の骨折は痛み、機能とも回復を期待できるモノですので、諦めずにやっていただければと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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2 件のコメント

  • 大変参考になりました。私は、4月に右上腕骨近位端骨折になり、手術は、しませんでしたが、8月末には、骨は綺麗につきましたが、今10月になっても、動かすと痛いです!治療してた時と一緒の痛さがまだ続いてます。良ければ、なぜ続いているか、教えてください。お願いします!

    • 個人的なご質問ですので、メールにて詳しくご返答いたしました。

      一般論としては、骨折の癒合後に痛みが残るケースで多いのは骨折の変形(特に大結節の変形)や関節の拘縮(カタくなってしまった)が多いかと思いますが、MRIなどでより詳細に見ていくことでわかることもあります。

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