肩の亜脱臼の治し方 繰り返すときは手術が必要

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩の亜脱臼の治し方ということで解説いたします。今回は脱臼ではなく「亜」脱臼ということにフォーカスを当てていますが、大雑把な話としては肩の脱臼も亜脱臼も実際に肩の中で起こっていることは大差ありません。

しかし、自分ですぐに入れられちゃったりすると、なんか、大丈夫な気がしちゃうのは注意したいところです。

ということで、肩の亜脱臼の治し方についての考え方をお伝えします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

肩亜脱臼の基本をおさらい

肩の脱臼と亜脱臼の違いとは?

肩の脱臼と亜脱臼の違いを明確にしておきましょう。

学術的な定義

学術的というか、正確な脱臼と亜脱臼の定義について、まずは南山堂医学大辞典代19版から引用してみます。

【脱臼 dislocation】
関節頭および関節窩の関節面が正常な可動域を越えて接触を失った状態

【亜脱臼≒不全脱臼 incomplete dislocation, subluxation】
正常な位置関係を失っているがなお関節面の一部が接触を保っている状態

引用元:南山堂医学大辞典 第19版

というような定義です。

要は完全に外れちゃってるのが脱臼、外れかかってるのが亜脱臼

そんな感じでしょう。

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運用上の区別:自分で整復できるか否か?

それに対して、肩関節脱臼のときにちょっと正確な区別ではありませんが、運用的に使っている脱臼と亜脱臼の区別があります。

それは自分ですぐに入れられちゃう(整復できちゃう)ものを亜脱臼、誰かに入れてもらわないといけないのを脱臼

という区別です。

亜脱臼の中にも実際には中で完全に外れているものも

つまり、この運用上の亜脱臼の中には完全に脱臼していても、上手に自分で入れられてしまったものを含んでいるということですね。

肩亜脱臼の治し方 整復はゼロ下垂法が基本

おさらいでお伝えしたように、運用上の定義を逆手に考えると、完全に脱臼していても、場合によっては自分で整復することができることがあるということは言えます。

具体的にはゼロ下垂法なんて勝手に名前をつけていますが、このような整復方法を試してみて、ダメなら病院へ行きましょう。

ゼロ下垂法

低いベンチなどに、
外れてない方の膝と手をついて、

写真の様な姿勢になって、

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肩甲骨から手までを
だらーんと重力に従って脱力します。

この時にいかに力を抜けるかがポイントです。

特に現場では
初回脱臼で選手も恐怖や痛みで緊張しています。

なので、重りをつけたり引っ張ったり、
余計な事はせずに、
ただ、力を抜かせる。

多少、だらんだらんカラダを揺らして、
リラクセーションを促したりしながら、
とにかく力を抜かせる。
これだけやってみましょう。

1つ大事な注意点としては、

頭を下げる姿勢をとるので、
痛みが強い中、
選手に無理を強いると、

倒れてしまうなんてことも
あり得ないわけではありません。

しっかりと周りで支えて安全性を確保することと
顔が青白い、吐き気を催しているなど
無理な体勢が危険と思われるときは
やらないことなどを徹底しましょう。

肩亜脱臼はクセになりやすい

肩の亜脱臼はクセになりやすいという傾向があります。

これは脱臼はクセになりにくく、亜脱臼はクセになりやすいというわけではありません。
完全脱臼自体がクセになりやすく、反復性肩関節脱臼という状態になりやすいわけですが、これは完全脱臼に限らず亜脱臼でも同じであるということですね。

外れ方が激しいと自分では整復できない完全脱臼に

そのように亜脱臼を繰り返していくうちに、どんどん外れやすい状態になり、さらに外れるときの力が強ければ、自分では整復できないような完全脱臼になってしまうこともあります。

そういうときは、「いつもは入るんだから・・・」と無理はせず、すぐに病院に行きましょう。

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クセになった状態は手術が必要

完全脱臼でも亜脱臼でも繰り返す場合、クセになってしまった場合は基本は手術が必要になります。

こちらで解説しておりますが、

亜脱臼を繰り返す大元は、肩関節を構成する関節唇(かんせつしん)と呼ばれる軟骨やその周囲の靱帯、関節包という膜になります。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

これらは筋肉ではないのでトレーニングをしても鍛えられず、また、初めての亜脱臼のあとにしっかりと治らなかった結果としてクセになってしまっているので、手術的に修復してあげることがどうしても必要になるというわけです。

【バンカート法】関節唇を修復

まずバンカート損傷を修復する
というのが一番基本的な手術です。

骨から剥がれた関節唇を
もとの骨、

つまり肩甲骨の関節窩にくっつけるように修復
するわけですが、

そのために関節窩という骨に
糸付きのネジを挿入して
(最近は糸だけ骨に挿入することもあります)

その糸で関節唇を
いい緊張状態(ゆるゆるでない状態)で、
縫い付けます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これは関節唇の損傷の程度によりますが、

糸を4−5本使うことが多いです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

さて、それでは動画で見てみましょう。

Bankart損傷の修復動画です。

まずはアニメーション動画です。

次に、実際の関節鏡の動画です。

具体的には剥がれた関節唇 を引き上げて縫い直すので、あえてしっかり剥がして、さらに剥がれているところを新鮮化してくっつきやすくしたあとに糸で縫合しています。

【レンプリサージ】ヒルザックス病変を棘下筋で覆う

ヒルザックス病変が
反復性脱臼の一因になり得る

ということを解説いたしました。

バンカート損傷を修復しても、
ヒルザックス病変が大きく、
外れやすい状態が残る場合は、

このレンプリサージ
というものを行うことが多いです。

このレンプリサージは、
削れてしまったヒルザックス病変に

そのすぐ表層を走る
棘下筋、小円筋を縫着(縫い付ける)する
という方法です。

画像引用元:Hill-Sachs "Remplissage": An Arthroscopic Solution for the Engaging Hill-Sachs Lesion ; Arthroscopy, vol 24, No 6, 2008

画像引用元:Hill-Sachs “Remplissage”: An Arthroscopic Solution for the Engaging Hill-Sachs Lesion ; Arthroscopy, vol 24, No 6, 2008

そうすることによって、

ヒルザックス病変がまたはまり込んで
脱臼してしまうのを防ごうということですね。

レンプリサージの動画です。

ヒルザックス病変に糸を埋め込んで(アンカー)、その糸で後の腱板をヒルザックスに縫い付けています。

亜脱臼だからと放置し続けると軟骨がどんどん傷む

自分で入れられるからといって放置をしていると、亜脱臼するたびに関節は傷んでいきます。特に関節軟骨が傷んで、将来的な変形性関節症(軟骨のすり減った状態)になりやすくなってしまいます。

そういう意味でも、また、いつ自分で入れられない完全脱臼でツラい思い(亜脱臼も十分ツラいですが)をするかもわからないわけですから、しっかりと治療することも考えたいところです。

まとめ

今回は肩の亜脱臼の治し方ということで、整復方法やクセになってしまった場合の考え方について解説いたしました。

一番のポイントは自分で入れられるから放置していいということではないということです。自分の大切な肩のことですから、しっかりと診察を受け、検査をして、納得した治療を受けてもらえたらと思います。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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