反復性肩関節脱臼とは?原因から治療まで専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は反復性肩関節脱臼について原因から治療まで一通り解説したいと思います。肩の脱臼がクセになってしまった状態についてはこの記事でまとめて理解してしまいましょう。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

反復性肩関節脱臼とはクセになった脱臼のこと

反復性肩関節脱臼とはこの肩関節脱臼が反復性に起こってしまう状態です。つまり、肩の脱臼がくせになっちゃったという状態です。これは非常に厄介ですよね。

最初は外傷やスポーツでの激しいプレーのときに外れてしまって、それ以後、また同じようなスポーツでのプレーで外れてしまうという状況からだんだんと日常生活でも外れて、しまいには寝ているときに外れるなんて恐怖体験まで・・・なんてことがよく起こります。

反復性肩関節脱臼の原因・メカニズム

この反復性肩関節脱臼の原因というか、そのメカニズムについては主に2つの病変の名前がカギになります。

Bankart病変(バンカート病変)という受け皿側の損傷

一番の原因がバンカート病変(Bankart lesion)と呼ばれる状態です。肩関節は受け皿側の肩甲骨とボール側の上腕骨からなる関節ですが、これは肩関節の受け皿側の骨にくっつく関節唇(かんせつしん)という軟骨が骨から剥がれてしまったり、切れてしまったりという状態になって、受け皿側の前側の壁がなくなっちゃうような状態です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

前側の壁がなくて、ゆるゆる状態なので、すぐに前に上腕骨頭という腕側の骨(ボール側)が外れちゃうわけです。

Hill-Sachs病変(ヒルザックス病変)というボール側の損傷

もう一つ、ボール側、つまり上腕骨の病変としてヒルザックス病変(Hill-Sachs lesion)というのが起こります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これは上腕骨頭の後ろ側の骨、軟骨が削れてしまう状態を言います。脱臼の時に受け皿側の前にボール側が外れることが前方脱臼ですが、この外れたときにボール側の後ろが受け皿側の前とぶつかり、削れていきます。

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こってしまいます。

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反復性肩関節脱臼の治療 根本的には手術しかないが・・・

この反復性肩関節脱臼のメカニズムというものを理解いただくと、根本的な治療は手術しかないということがわかります。

なぜなら、傷んでしまった関節唇も削れてしまった上腕骨頭も、筋肉ではなく鍛え直すことはできないからです。

そうは言っても、少しでも脱臼を防ぐための方策はあります。

脱臼肢位の理解を深める

まず一番大切なのは、「どうすれば外れてしまうのか?」ということを頭と身体で覚えるということです。

ほとんどの前方脱臼は肩関節の

外転 + 外旋 + 伸展

という動きで外れてしまいます。

この動きを徹底的にしないようにするということが脱臼を防ぐ一番のポイントです。

外転 + 外旋 + 伸展

というと、複雑ですが、

要は腕を肩くらいの高さで、後ろにもっていく、もっていかれるというような動きです。

イメージとしては右肩であれば、右背中側の方に手を持っていこうとするなら、身体ごとしっかり右後ろを向いて、腕だけ背中側にもっていかないということです。つねに右肩の後ろの方のゾーンには嫌なイメージを持っておくことがオススメです。

インナーマッスルを鍛える

また、鍛え直すことができないと言いましたが、肩を補助的に安定化して、脱臼を防ぐ力を持っているのがインナーマッスルです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

このインナーマッスルを鍛えることは、それだけで脱臼を防ぐことができるほどの効果はないにしろ、やったほうがいいのは間違いありません。

こちらの記事もご参照ください。

肩のインナーマッスルの鍛え方 トレーニング動画で by専門医

2017.03.11

手術は関節鏡が主流

今現在の肩の手術は関節鏡手術が主流になっています。

arthroscope surgery

関節の中での手術は
関節鏡がかなり有利です。

直視下手術、つまり、
傷をしっかりあけて、直接中をみる手術は
関節の中をみるために、

筋肉を裂いて、
肩甲下筋というインナーマッスルを切って
侵入しないといけません。

その侵襲、ダメージは見逃せないモノです。

それが必要ないということだけで、
関節鏡のアドバンテージは大きいと
言えるでしょう。

 

関節鏡のデメリットは、
手術習得までにすこし時間がかかる
ということです。

その結果、手術ができる整形外科医は
そんなに多くはありません。

第一選択の手術法:関節唇を縫い直す 修復法

バンカート損傷、すなわち傷んだ関節唇を修復する
というのが一番基本的な手術です。

骨から剥がれた関節唇を
もとの骨、

つまり肩甲骨の関節窩にくっつけるように修復
するわけですが、

そのために関節窩という骨に
糸付きのネジを挿入して
(最近は糸だけ骨に挿入することもあります)

その糸で関節唇を
いい緊張状態(ゆるゆるでない状態)で、
縫い付けます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

これは関節唇の損傷の程度によりますが、
糸を4−5本使うことが多いです。

烏口突起という骨を移植する

ラグビーやアメリカンフットボールなどの
コリジョンスポーツ、
また、柔道などの格闘技系のような

再脱臼のリスクが高いモノや

手術をしたのに再脱臼してしまったケースには

より強力に脱臼を防ごうと言うことで、

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

烏口突起という骨の一部を
受け皿である関節窩の前方に移行して、

前方の壁をつくるような
イメージの手術を行います。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

 

この烏口突起には
共同腱と呼ばれる
烏口腕筋、上腕二頭筋短頭という筋肉の腱が
くっついていますので、

その腱が前方に張り出すことによる、
脱臼防止作用も期待しています。

まとめ

今回は反復性肩関節脱臼について、原因(メカニズム)から治療までをまとめて解説いたしました。

脱臼を繰り返してしまうというのは精神衛生上も、肩の将来的な健康上もいいものではありません。手術の成績は安定していますので、選択肢の1つとして検討していいものだと思います。

関連記事も詳しく解説している部分がありますので、ご参照ください。

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