肩関節周囲炎は除外診断 最初にそう言い切るのは無理

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩関節周囲炎、これはもしかすると肩の痛みの診断名で日本で一番多いモノかもしれません。しかし原則として、除外診断で診断すべきモノと考えた方がいいということを解説いたします。

この肩関節周囲炎は非常に広い範囲の病態を含むものであり、確かに、40–50歳代くらいの人の肩の痛みの多くは範疇に入るんですね。

しかし、何でもかんでもレントゲンに異常がない肩の痛みは肩関節周囲炎で片付けられがちなので、他にも考えるべきモノはたくさんあるということでご自身の痛みに思い当たる節がないか、一度チェックしてもらえたらいいかと思います。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩関節周囲炎の基本をおさらい

肩関節周囲炎とは?

四十肩や五十肩と呼ばれるものの多くがこの肩関節周囲炎という診断名になります。

その名の通り、肩関節の周りに炎症が起こるということです。

肩関節の周囲にはたくさんのいろんな組織(筋肉、腱、靱帯、骨・・・など)があり、実際、肩関節周囲炎ではさまざまな場所の炎症が痛みの原因となっています。

周囲炎とはどこが炎症している?部位別の原因を解説

その炎症の場所として、代表的な3つの場所について、その考え得る原因まで含めて解説したいと思います。

どの場所としても原因としては、

加齢性の変化 + オーバーユース(もしくは外傷)

という一言でシンプルには表現できてしまいます。

10代、20代の人がたくさん肩を使っても痛くなりにくいのは、加齢性変化がない、タフな肩だからですね。

逆に高齢の方で肩の痛みがない人は、あんまり肩を使ってないのかもしれません。

40歳、50歳くらいの人はその間で、加齢性変化も始まりながら、肩も相変わらずよく使うというのが大雑把な原因です。

それでは代表的な炎症部位を解説していきます。

腱板の炎症

まず腱板(けんばん)と呼ばれるインナーマッスルです。腱板というのは肩の前を走る肩甲下筋、上を走る棘上筋、後ろを走る棘下筋、小円筋とありますので、前が痛ければ、外側、後ろとどこも痛みが出ることがあります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この腱板の炎症は、まさに肩の使いすぎ、負担のかけすぎの典型的な結果であることが多いです。腱板の筋肉は肩を安定的に動かしてくれる働きを担っていますので、肩を使うときには常にじわじわと頑張ってくれているんですね。

比較的多いのは、肩峰下インピンジメントという状態です。

この状態から肩を上げていくと、大結節、腱板が肩峰の下に潜り込む。そのときに、インピンジが起こります。 画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この状態では腱板が擦れてしまって、だんだんと炎症が起こってきてしまいます。こちらもご参照ください。

肩峰下滑液包炎とは? 専門医解説

2017.03.29

また、急激な力が入ったり、脱臼しそうになったりしたときに、ギュッと安定させてくれてもいますから、そういった強い力、外傷というのも原因になります。

上腕二頭筋長頭腱の炎症

次に上腕二頭筋長頭腱の炎症ですが、これもよくある状態です。肩の前方を走る上腕二頭筋の腱が炎症を起こすわけですから、肩の前方が痛い。特に肩をヒネったり、重いものを持って挙上したりするときに痛みが走りやすいです

この上腕二頭筋長頭腱に対する負荷のかかり方は、肩を挙上位置で、さらに肘を曲げる上腕二頭筋に力が入りっぱなしの状態で強い負荷がかかります。

それは重いものを持って、前方に差し出すような動きだったりします。

また、腱板断裂(けんばんだんれつ)がある場合は上腕二頭筋長頭腱に負荷が間違いなくかかりますので、炎症どころか、この腱も切れてしまうこともあります。

腱板疎部の炎症

最後に腱板疎部(けんばんそぶ)の炎症ですが、これは腱板の中でも前方を走る肩甲下筋腱と上を走る棘上筋腱の間の弱い、脆い部分を言います。この部分も筋肉と筋肉の間ですが、空白のスペースではなく、関節包(かんせつほう)という膜や、靱帯(じんたい)が走っています。しかし、腱板よりは弱い場所ですので、負荷がかかると炎症が起こりやすい、損傷しやすい部位と言えます。

これは肩の前方、やや上の痛みが典型的です。原因は腱板炎のように腱板に負荷がかかるような状態と共通です。

特に肩が外旋する位置で腱板疎部がピンと張りますので、その位置で負荷や強い力が加わると、傷めやすい、炎症を起こしやすいと言えます。

向かって左が肩の内旋、右が肩の外旋です。

除外診断とは?

まず除外診断とは何か?ということですが、様々な原因がはっきりしたものや、より重症なものが、いろいろと検査をしても見つからない(=除外)ということで最終的に残るのが除外診断ということです。

だから、いきなり「肩関節周囲炎で間違いありません」と言い切ってしまうのは無理があるんですね。肩関節周囲炎と言い切る前に、本当はいろんなものが隠れてないか調べるべき・・・

なんですけど、全ての肩が痛い人にあらゆる検査をするというのは、患者さんもそこまで望んでませんし、もちろん日本の経済が崩壊します。

ですから、ポイントとしては「本当は」除外するべきものを把握しておいて、念頭に入れながら診察、経過観察をするということ。経過によっては、それらの除外すべきモノが本当にないことを検査してみる。

ということが大切です。

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肩関節周囲炎の前に除外すべきモノたち

それでは肩関節周囲炎と言い切る前に除外すべきモノたちを挙げていきます。

腱板損傷/腱板断裂

まず代表的なモノは腱板損傷(けんばんそんしょう)です。腱板損傷についてはこちらでも詳しく解説しておりますし、

肩腱板損傷に特徴的な症状はあるのか? 肩専門医解説

2016.12.11

また、いわゆる肩関節周囲炎と腱板損傷の症状の違いはこちらの記事もわかりやすいと思います。

五十肩の症状判定 この症状は典型的?

2017.04.02

腱板損傷と肩関節周囲炎の症状はかなり似ています。症状だけでどちらと完全に判別するのは無理なので、痛みが続くときや肩の小さい動きや回旋運動での痛みなど腱板損傷を疑う症状が強いときにMRIをチェックします。

変形性肩関節症

変形性肩関節症というのは肩の軟骨のすり減りです。この場合はレントゲンを撮ればわかります。

肩の関節裂隙と呼ばれる、骨と骨の間の軟骨があるスペースが狭くなったり、骨棘という骨の出っ張りが新たに形成されてしまったりということがレントゲンでみられます。

画像引用元:肩関節外科 手術テクニック 第一版 メディカ出版

肩の外傷をしたことがある(骨折、脱臼など)場合や、高齢の場合に多い状態です。

石灰沈着性腱板炎

これは肩の腱板に石灰が沈着して、その周囲に炎症が起こるものです。年齢的には四十肩、五十肩と同じくらい、つまり40–50歳くらいの方に多いです。

症状としては四十肩、五十肩よりも痛みが激痛であることが多いです。あまりの激痛で救急外来にいらっしゃるケースもあります。
また、石灰が沈着している部位を押すと激痛という症状も典型的です。

これもレントゲンでほとんどは見えます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

肩鎖関節炎・肩鎖関節症

肩鎖関節という肩甲骨と鎖骨の間の関節に炎症が起こっていることも意外と多いです。この場合は、まさに肩鎖関節部位を押すと痛い、つまり圧痛点が特徴的です。

また、肩の水平内転と言って、逆側の肩を触るような動きで痛みがでるというのも典型的な症状です。

肩鎖関節の軟骨がすり減る、変形性肩鎖関節症ではレントゲンですり減った結果の変形が見えますが、軟骨のスリ減りが軽度の場合は、MRIで炎症を起こしているかチェックすることがあります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

神経障害(頚椎ヘルニア・肩甲上神経・腋窩神経)

肩の痛みの原因として、神経が刺激されて痛みを出しているというケースがあります。

その場合は、中枢神経に近い首の問題(頚椎椎間板ヘルニアなど)と、肩まわりの末梢神経(肩甲上神経・腋窩神経など)の場合があります。

この場合の特徴として、痛みだけでなく、しびれを伴うことがあったり、重症の場合は筋力低下などが起こりえます。

直接、肩、その周囲に炎症があるわけではなく、神経障害が中心なので、

炎症に特徴的な

  • 押しての痛み = 圧痛
  • 関節を動かしての痛み = 動作時痛
  • 関節周囲の腫れ = 関節腫脹

などはみられないことが多いと思います。

それに対して、

神経が常時刺激されている状態なら、何もしなくても肩を動かさなくても痛い(=安静時痛)という症状があるかもしれません。

これらは首のMRIで神経をみたり、筋電図(きんでんず)などで神経の機能をみていく必要があります。

まとめ

今回は肩関節周囲炎といっても、他にも隠れている可能性がある他の病態が代表的なモノでもこれだけ挙げられるということを解説いたしました。

特徴的な症状もお伝えしておりますので、自分はこれかも?と思うモノがあれば、整形外科医に相談してみましょう。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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