肩鎖関節脱臼の治療 手術すべきか否か?

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

肩鎖関節脱臼・・・
という聞き慣れない関節とは言え、

「脱臼!!?大丈夫か?」

って感じですよね。

今回は肩鎖関節脱臼の治療をどうするべきか?手術すべきか、手術せずに治療するべきか?
一概に答えは出せませんが、整形外科医がどのようなことを考えて、治療法をご提案しているかということが少しでもお伝えできればと思います。

後半に肩鎖関節脱臼の基本をおさらいするコーナーもありますのでご参照ください。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ医整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

 

肩鎖関節が脱臼した状態だと何が悪い?

まず治療について考えるときに、極論ですが、「放っておくとどうなるの?」ということ、専門的には自然歴と言いますが、これを知っておく必要があります。

つまり、肩鎖関節が脱臼したままではどうなってしまうのか?

ということですね。

これは、他の脱臼、例えば、肘や肩関節の脱臼のように、
脱臼したままでは痛すぎて全く動かせない・・・
それどころか、周りの神経などにも悪影響が出かねない大変な状態・・・

というのとは、

肩鎖関節脱臼はちょっと違います。

もちろん、脱臼した直後は痛いですが、徐々に痛みがひいてきて、脱臼したままでも肩を痛みなく動かせることはよくあることです。

そんな中で肩鎖関節脱臼がそのままのときにどういう症状が残ってしまうことがあるのか?ということですが、

肩を動かすときに不安定で痛みの原因になり得る

痛みなく動かせることが多いと言いましたが、それでも脱臼の程度によっては肩を動かすときに肩鎖関節部分で鎖骨の先端が不安定に動いて痛みの原因になったり、肩甲骨の動きの異常が出てしまい、痛みの原因になったりします。

これは非常に重要なポイントなんですが、先ほどおさらいした重症度分類が大事になります。

軽症なものであれば、痛みが残りにくいと思われますし、重症であれば手術しないと痛みが残りやすい・・・

そして、軽症と重症の間(type3)が悩ましいということになります。

肩の筋力が落ちる

肩が麻痺したように挙げられない・・・のような、強い筋力低下はほとんどありませんが、アスリートレベルでは気になる筋力低下は起こりえます。

それは理屈で考えれば、筋肉の付着部になっている鎖骨の先端や肩峰の安定性が損なわれるわけですから、脱臼の程度によっては当然考えられる症状です。

見た目が気になる・・・

まず肩鎖関節脱臼のときは、脱臼した鎖骨の先端が飛び出してしまっています。

これは肩を出すようなファッションの時は目立つかもしれません。

そういった美容上の問題も人によっては軽視できませんよね。

保存治療(手術以外の治療)の方法

手術をしない場合はどうするのか?ということですが、できるだけ肩鎖関節脱臼が元の位置に近い状態をキープするということをめざします。

肩鎖関節脱臼の多くのケースは

鎖骨が上
肩甲骨が下

という外れ方をしています。

 

これは肩甲骨から腕全体の重みで肩甲骨が下がってしまっていることを表しています。脱臼していないときは靱帯が支えてくれているわけですが、肩鎖関節脱臼では靱帯が切れているために、このような外れ方をするわけですね。

この下に落ちた肩甲骨を上に上げるためにやることは、三角巾や装具などで腕全体を少しつり上げた状態をキープすることです。

手術をしないと肩鎖関節の完全脱臼はほぼ整復できない

ただ、四六時中、その状態をキープすることは困難ですし、ただ、腕全体を持ち上げただけでは完全に整復することは困難です。

さらに整復位置をよくするために、鎖骨を上から押さえるバンドもついた特殊な装具を使うこともありますが、それでもやはり元に戻す効果は限定的です。

そういった意味で、手術に勝る整復と整復維持方法はないと言えます。

 

結局、手術した方がいいの?しない方がいいの?

ここまで手術をするかしないか?という一番大切な判断に必要な情報をご提示してきました。

そこで、シンプルに言えば、

  • Rockwood分類のtype4以上は手術を積極的に考える
  •  type3は迷う。個人個人でオススメが異なる。
  • 個人個人の違いで考慮するポイントは肩をどれだけ使うか?と美容上の問題を気にするか?

ということになると思います。

ここまで肩鎖関節脱臼で影響することとして、肩鎖関節の不安定性による肩の痛み肩まわりの筋力低下(ある程度高いレベルでの筋力で、日常生活には影響ないことが多い)を解説いたしました。これらを考慮すると、肩をよく使い、負担がかかる肉体労働者、アスリートなどは手術をより積極的に考えるということになります。

 

肩鎖関節脱臼の手術法はたくさんある

肩鎖関節脱臼の手術法は非常にたくさんあります。開発者の先生の名前がついた手術法が多いです。僕が知る限りでも10種類以上ありますし、おそらくいままで発表された手術法で言えば、細かい違いを入れれば100種類を越えるんじゃないかと思うくらいです。

そんな中で一つ一つを覚える必要はありません。

まず、手術で何を達成しようとしているのか?というコンセプトを理解することが必要です。

肩鎖関節脱臼の手術のコンセプトは「靱帯を治す!」

そのコンセプトと言えば、

靱帯(じんたい)を治す

ということです。

肩鎖関節が普段脱臼しないのは、肩甲骨と鎖骨を繋いでいる靱帯が支えているからなんですね。

しかし、肩鎖関節脱臼の時はこの靱帯が切れてしまっています。

特に重要な靱帯が

烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)

という靱帯で、烏口突起(うこうとっき)という肩甲骨の一部と、鎖骨を繋いでいる靱帯です。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これが完全に切れてしまうと、鎖骨と肩甲骨は離れて脱臼状態になってしまいます。

この烏口鎖骨靱帯を治すということがあらゆる肩鎖関節脱臼の基本コンセプトになります。

急性期は靱帯の修復を促す

まず脱臼してから時間が経ってない場合です。それを急性期とか、新鮮外傷と言ったりしますが、だいたい3から4週間が目安です。

この急性期は、まだ切れてしまった靱帯に自己修復する力が残っていますので、そのための環境を整えることが手術のコンセプトになります。

それはどういうことかと言うと、
できるだけ周りを傷つけずに、肩鎖関節が整復された状態をキープする。
ということです。

それには具体的に何をするかと言えば、

肩鎖関節をキルシュナー鋼線という針金で仮固定する

烏口突起と鎖骨を強い糸で繋いでボタンなどで上下に挟む

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩鎖関節を固定するためにプレートという金属を使う

画像引用元:肩関節の手術 (整形外科手術イラストレイテッド(dvd付))初版 中山書店

というようなことを行います。

時間が経っちゃったら靱帯を作り直す

時間が経ってしまったら(陳旧外傷)、この烏口鎖骨靱帯は自分で修復する力を失ってしまいます。そうすると、別のところから靱帯を持ってくることが必要になります。

これは肩鎖関節のまだ生きている近くの靱帯(烏口肩峰靱帯)を使うことが多いわけですが、他に膝の筋肉の先のスジ(腱)などを使うこともあります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

これは想像できるかもしれませんが、急性期の手術より大変ですし、リスクも大きいです。

 

僕の場合は、この陳旧例の靭帯を作り直す手術も関節鏡を中心に侵襲(身体へのダメージ)がすくなめの手術をやっています。

 

肩鎖関節脱臼の基本をおさらい

こちらでも解説しておりますが、少しおさらいしておきましょう。

肩鎖関節脱臼の分類 あなたの脱臼は重症?

2017.03.27

肩鎖関節(けんさかんせつ)とは?

まず肩鎖関節とは?という超基本ですが、その名の通り、肩と鎖骨の関節・・・もっと正確に言うと、肩甲骨の肩峰(けんぽう)という部位と鎖骨の外側の端っこからなる関節です。あまり関節として認識されたことはないかもしれません。

鎖骨を真ん中くらいから外側にずーっとなでるように触っていくと、少し盛り上がって、またすぐ凹んで・・・でも、骨は触る。という部位があると思います。その盛り上がったところが鎖骨の端っこで、凹んだところが肩鎖関節で、またその外側に骨が触れる部分は肩甲骨の肩峰です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩を動かすときに肩甲骨も連動して動くわけですが、その肩甲骨が動くときの1つの視点となっているのが肩鎖関節です。

肩鎖関節脱臼とは?典型的な症状は?

この肩鎖関節が外れてしまうというのが肩鎖関節脱臼ですが、典型的には鎖骨が肩峰より上に上がってしまいます。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

そのため、典型的な症状としては盛り上がった鎖骨の端っこが体表上も出っ張って見えます。
ここを上から押すと凹みますが、また盛り上がります。
この現象をpiano key signといいます。ピアノの鍵盤のような動きだからですね。

また、当然、関節が外れてしまったので肩鎖関節部の痛みが伴います。

ただ、炎症が落ち着いてしまえば、もともとの「肩関節」は異常ないことが多いので、肩の動きはあまり制限されません。

どういったときに起こりやすい?

肩鎖関節脱臼は典型的な受傷機転、つまり原因ですが、それは肩を直接強打した場合です。

アメリカンフットボールやラグビーなどコリジョンスポーツと呼ばれるものでの衝突や転倒時、また、柔道などで投げられて肩から落ちたときなどが多いです。

脱臼だから大急ぎで整復しないといけない?

脱臼だからと言って、大急ぎで整復しないといけないかといえば、そうではありません。

piano key signの説明をしましたが、上に外れた鎖骨を上から押さえ込んでもまた上に上がってしまいます。
つまり、整復状態(関節が入った状態)の保持が非常に難しいんですね。

そのため、しっかりと治すためには手術が必要なことが多いです。

手術をせずに整復状態をできるだけ維持しようとすると、一番大切なのは肩甲骨から腕までを少し持ち上げた状態をキープすることです。これは装具やきっちり長さを調節した三角巾などを使います。

肩鎖関節脱臼の重症度分類 Rockwood分類

この肩鎖関節脱臼には重症度の分類があり、その重症度によってオススメの治療法が変わってきます。当然、重症になればなるほど手術が望ましいと言えます。

その重症度分類でよく使われるのが、Tossy分類とRockwood分類ですが、Tossy分類はちょっと大雑把なので、個人的にはRockwood分類の方がよく使われるような印象があります。

ということでRockwood分類ですが、

  • type1:肩鎖関節の捻挫レベル。脱臼ではない。
  • type2:肩鎖関節「亜」脱臼
  • type3:肩鎖関節脱臼 鎖骨が上方に脱臼
  • type4:肩鎖関節脱臼 鎖骨が後方に脱臼(稀)
  • type5:肩鎖関節脱臼 鎖骨が元の2倍以上、上方に脱臼
  • type6:肩鎖関節脱臼 鎖骨が下方に脱臼(稀)

こんな感じですが、

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

ほとんどの肩鎖関節脱臼は「上」に外れていきますので、

  • type1:捻挫
  • type2:亜脱臼
  • type3:脱臼
  • type5:重症脱臼

というような順で重症になり、
さらに稀だが、後方がtype4、下方がtype6という分類になっているというとらえ方がわかりやすいかと思います。

まとめ

肩鎖関節脱臼の手術について、した方がいいのか、しなくてもいいのか?

これは僕ら専門医でも「絶対!」という答えは出せないのが現状です。
だからこそ、できるだけ必要な情報を患者さんと医師で共有しながら、
治療方針を決定するのが大切だと考えています。

その助けになれば幸いです。

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当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

プロフィールはこちらをご参照ください。
スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

8 件のコメント

  • 今年8月14日にバイク事故により鎖骨損傷してしまい、地元の医者からはタイプ3と言われ、手術はしないほうが良いと言われました。運動はジョギングや自転車を趣味でやっており、元の様にスポーツが出来るかどうかとても不安です。もう少しで3週間目になるのですが、そちらで診察希望したほうがよいのでしょうか?

    • 川邊さん

      コメントいただきありがとうございます。個人的なご相談ですので、いただいたメールアドレスにご連絡させていただきました。

  • 今年の6月に、交通事故で左肩鎖関節脱臼グレード3か、4だったかもしれないのですが、結局軽く3週間固定した程度で手術なしで、リハビリだけはじめて、4ヶ月以上たつのですが、外旋の可動域が10度くらいで、ほかの可動域ももどっては、いないですが、なんとか生活はできるていどなんですが、最近は立っていると肩と肩甲骨の重みがひどく腰や右の首がいたくなります。転院して聞いた先の病院では、もう事故からだいぶ時間がたっているので手術はすすめられず、とりあえずリハビリということになりました。左鎖骨遠位端が上かつ後ろにズレていて肩峰にすこし、かんで載っかってるような状態です。自分の判断ミスが悪いのですが、もう打つ手はなく、肩の重みとだるさ肩甲骨の動きの悪さは、リハビリで改善する見込みはないでしょうか?

  • 初めまして。今年の9月15日にロードバイクに乗っている時、落車してしまい、肩鎖関節脱臼のグレード3と判断されました。25日に手術をしてもらい、今はリハビリをしています。医師からはまた泳げるようになると言われたのですが、元通りのパフォーマンスをできるのか不安があります。肩鎖関節脱臼で手術をした場合、水泳にはどれくらい影響があるものなのでしょうか?

    • ご質問ありがとうございます。
      一般論としては水泳に限らずほとんどのスポーツに同じレベルでの復帰を目指せます。
      ただ、それはケースバイケースでもあります。

      手術を受けられてのであれば、もう主治医と相談のもと、しっかりとリハビリを行うことに集中していただくのがいいです。
      その結果、不安や痛み、機能障害があれば、またご相談ですね。
      ここでは一般論しか話せませんので、もし突っ込んだご相談があれば診察させていただければと思います。

  • 半年前バイク事故を起こし最初行った整形外科ではレントゲンをとり骨には異常なし打撲と診断され2、3週間経過をみましょうという診断結果で週3回平均でリハビリしましたが改善されず保険会社からも半年間たつにで症状固定で示談の話されましたが打撲でそこまで痛みとれないの?という疑問からセカンドオピニオンを希望し違う整形外科に診察してもらいましたが肩鎖関節脱臼と診断されました。そこまでひどくないから手術までは必要ないと言われました。しかし仕事で荷物をあげたり使うことも多く、なにもしてなくてもうずいて力が入らない時もあります。特に寝れないときも。この痛みと死ぬまで付き合うしかないのですかぁ?カテゴリーはタイプ2くらいの症状と思われます。

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    歌島 大輔

    スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。