インピンジメント症候群の治療法は? 肩専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

聞き慣れない言葉ですが、肩の痛みにおいて結構頻度が高いインピンジメント症候群。

今回はこのインピンジメント症候群の治療法についての解説をいたします。インピンジメントと言っても肩だけで主に3種類あるということを前回の記事で解説いたしました。この3種類の病態を理解すると自ずと治療法はどういったものになってくるかわかりやすいと思います。

 

医師からこの言葉を告げられたときに、治療法もある程度提示されたと思います。しかし、自分の反省点でもありますが、その説明が不足してしまうことがあります。やはり、なぜ、どのような考え方で治療を選ぶべきか、しっかり理解したいと思うのは当然ですよね。

今回もその記事のおさらいも冒頭に掲載いたしますのでご参照ください。

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

肩のインピンジメント症候群をおさらい

インピンジメントとは?

インピンジメント(Impingement)とは、「衝突」という意味の英語です。実際は「摩擦」と「衝突」の間くらいのニュアンスが近い気がします。

つまり、「何かと何か」が衝突、摩擦を起こしてしまう病態のことを言います。

肩のインピンジメントは3つある

その「何かと何か」の組み合わせが、肩においては3つあるということになります。一つ一ついきましょう。

肩峰下インピンジメント

この状態から肩を上げていくと、大結節、腱板が肩峰の下に潜り込む。そのときに、インピンジが起こります。 画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

まずは肩峰下(けんぽうか)インピンジメントというものです。
こちらでも詳しくお話ししておりますが、

インピンジメント症候群とは?肩専門医が解説

2016.12.12

肩峰・烏口肩峰靱帯 vs 棘上・棘下筋腱

この肩峰下インピンジメントは

肩峰(けんぽう)という肩甲骨の外側に張り出した部分
もしくはその肩峰にくっつく烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい)

その下にある腱板(けんばん)と呼ばれるインナーマッスル、
これはすなわち棘上筋(きょくじょうきん)と棘下筋(きょっかきん)ですが、この筋肉・腱

インピンジを起こす

ということです。

その結果、肩峰下滑液包炎やさらに進展すれば棘上筋や棘下筋の腱板断裂を起こします。

これは肩を挙上、外転していく動きで起こります。

よく四十肩・五十肩で片付けられているもののなかでも肩を挙げるときに痛いというケースはこの肩峰下インピンジメントが起こっていることがあります。

インターナルインピンジメント

次にインターナルインピンジメントと呼ばれるインピンジメントがあります。これは野球などのオーバーヘッドスポーツにおいて起こりやすいものです。

主に投げる瞬間の痛みの原因になります。

後上方関節唇 vs 棘下筋腱

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

このインターナルインピンジメントは

関節唇(かんせつしん)という肩関節の受け皿側の骨(肩甲骨関節窩)の周りを取り囲む柔らかめの軟骨成分のやや後ろ上方部分

インナーマッスルである腱板筋群の中でも棘下筋の関節面側

インピンジメントを起こします。

その結果、棘下筋の関節面断裂関節唇損傷(SLAP損傷)を起こします。詳しくはこちらもご参照下さい。

野球肩の症状から中で何が起こってるか推測! 専門医解説

2016.12.19

烏口下インピンジメント

最後に烏口下(うこうか)インピンジメントについてです。これは比較的珍しいものだと言えます。

肩の前方の痛み逆側の肩に手を伸ばそうとしたとき(水平内転)に痛みが走ったりします。

烏口突起 vs 肩甲下筋腱

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

烏口下インピンジメントは

烏口突起(うこうとっき)という肩甲骨の前方に張り出した部分

肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)という腱板の中でも前方を走る筋肉・腱

インピンジメントを起こします。

その結果、
肩甲下筋腱断裂を起こしたり、烏口下滑液包炎が起こったりします。

 

インピンジメント症候群の治療原則はクリーニング!

インピンジメント症候群は「何かと何か」が衝突、摩擦することによって起こるわけですから、

その衝突、摩擦を起こさないようにすればいい。

この「何かと何か」の間、スペースが狭いから肩の動かし方によっては摩擦、衝突を起こしてしまうわけですね。

とすれば、「何かと何か」の間を拡げてあげればいい。

または、「何かと何か」の間をクリーニングしてあげるといい。

と考えられます。

肩峰下インピンジメントなら肩峰下と烏口肩峰靱帯

肩峰下インピンジメントは

肩峰と烏口肩峰靱帯 vs 腱板

この状態から肩を上げていくと、大結節、腱板が肩峰の下に潜り込む。そのときに、インピンジが起こります。 画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

だったわけですが、このうち「腱板」は削ったり切ったりはできません。それはまさに腱板断裂で痛みの原因を作っているようなモノです。

逆に上にある肩峰という骨を薄く削ることは、削りすぎなければ特に支障は出ません。

また、烏口肩峰靱帯ですが、普通の靱帯は2つの骨を関節をまたいで繋いでいます。ですから、靱帯が傷んでしまえば、関節がグラグラと不安定になります。しかし、この烏口肩峰靱帯は烏口突起と肩峰というどちらも肩甲骨の一部である骨を繋いでいる靱帯です。この1つの骨を繋いでいる靱帯を切ったところで、不安定になるわけもないわけです。(例外もありますが・・・)

ということで、肩峰下インピンジメントにおいては、肩峰の下の面を削り、烏口肩峰靱帯を切り離すというクリーニング手術が主流です。

これを関節鏡を使ってやるので、

arthroscope surgery

関節鏡下肩峰下除圧術(かんせつきょうかけんぽうかじょあつじゅつ)と呼んでいます。除圧とは圧力を除くという意味ですね。スペースを拡げると言い換えてもいいと思います。

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烏口下インピンジメントなら烏口突起

似たような考え方で烏口下インピンジメントも治療できます。

この場合は烏口突起という骨を削って除圧することになります。
これも関節鏡を使ってできます。

インターナルインピンジメントはフィジカル&動作改善が基本

インターナルインピンジメントはちょっと考え方が違います。

インターナルインピンジメントは腱板と関節唇という
どちらも切ったり、削ったりできない組織がインピンジします。

とすると、まず考えるべきは手術ではなく、インピンジメントを起こさないような動作を獲得したり、肩甲骨の動きを拡大すること、インナーマッスルをより鍛えたり、肩の可動域を拡げて、肩を安定的に動かせるようになることなどが基本戦略になります。

詳しくはこちらでも解説しておりますのでご参照ください。

野球肩の治療法まとめ 肩専門医解説

2016.12.20

まとめ

今回と前回で、肩のインピンジメント症候群とは?というところから治療に対する考え方までを解説いたしました。

治療としては手術も選択肢に入り、効果的なモノではありますが、まずはインピンジメント症候群が痛みの原因であると特定することが簡単なことではありません。

そこで我々は痛みの原因を慎重に特定していくことを何回かの外来診療の中で行っていきます。今回は特に解説しておりませんが、その中で治療人もなり原因特定にも効果的なのが注射です。肩を専門とする医師はそういった意味で注射も効果的に使うことができます。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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