肩脱臼の痛みがいつまでも残るのはなぜ?原因・治療を専門医解説

スポンサード リンク

The following two tabs change content below.
歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩脱臼後に
痛みがいつまでも残ってしまうことが時にあります。

この痛みがいつまで残ってしまうのか?
心配になってしまうと思います。

多くの肩脱臼後の痛みは安静時の痛みは1-2週のうちに相当軽減し、
肩を動かしたときの痛みも1ヶ月くらいで気にならなくなるくらいが一般的です。

それに比べて長期にわたって痛みが残る場合の
考え得る原因がいくつかありますので、
治療も含めてできるだけわかりやすく解説いたします。

こんにちは、肩を専門とするスポーツドクターの歌島です。
今回も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩脱臼の直後の痛み

肩の脱臼直後の痛みは、
そりゃ痛いですよね。

外れて安定した位置では
痛みが少なめで、
少しでも動かすと激痛が走る

というような状態だろうと思います。

それ自体は、ある意味当然な痛みです。

 

この外れている状態での心配な症状は
こちらで解説しておりますが、

肩脱臼の症状は?基本から肩の専門医が解説します

2017.01.02

肩以外に肘から先にしびれや
痛みが走っているときですね。

神経障害を疑います。

 

この場合の治療は何より早く整復(元の位置に関節をはめる)ことに尽きます。

整復についてはこちらもご参照ください。

肩脱臼の整復オススメ方法を専門医解説

2016.12.30

整復後の痛み

整復後は
強い痛みは引いているはずです。

ただ、脱臼の時に傷めた
関節唇や関節包、軟骨などが
痛みの原因として残りますから、

多少の痛みはあって当然です。

こちらも同様で神経障害を疑う症状を注意します。

 

この場合の治療は肩の安静です。
三角巾やときにバストバンドというバンド上のコルセットを腕ごと巻いてしまう
というような方法がとられます。

Portrait Of Young Man With Arm In Sling

初回脱臼後は3-4週間の安静をすることが一般的です。

整復後しばらくして痛みが残るケース

これが一番問題ですね。

冒頭でも述べたとおり

肩脱臼後の痛みは安静時の痛みは1-2週のうちに相当軽減し、
肩を動かしたときの痛みも1ヶ月くらいで気にならなくなるくらいが一般的です。

 

それでも整復後も
痛みが残るときは

可能性は高くないですが、
さまざまな問題が考えられます。

原因1:脱臼の時に骨折もあった

これは整復前後で
発見しておくべきモノですが、

脱臼時や整復のときに
骨折も起こっていることがあります。

レントゲンで最初はわからないような
骨折もあり得ますので、

レントゲンを何回か撮る
というのは基本です。
こちらで詳しく解説しております。

肩の脱臼と脱臼骨折の手術法&全治期間を専門医が解説

2018.03.09

肩の脱臼 + 上腕骨大結節骨折

一つ目は肩の脱臼とともに大結節(だいけっせつ)が骨折してしまった状態です。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

肩が脱臼しないように頑張ってくれている安定化装置はいくつかあります。

  • 関節唇(かんせつしん)
  • 腱板筋群(けんばんきんぐん)
  • 関節包(靭帯)

これらの中で腱板筋群がくっついてる骨が大結節です。

そして、この腱板筋群の頑張りもむなしく脱臼してしまったときに、腱板筋群に過剰に引っ張られてしまって大結節が裂離骨折を起こしてしまう。

というケースが1つ。

また、肩の脱臼はほとんどが前方脱臼ですが、その前方脱臼した時に上腕骨の後外に位置する大結節の根本が受け皿側である肩甲骨関節窩の前方と衝突します。

そのメカニズムでできる陥没病変をHill- Sachs病変というわけですが、それが陥没ではなくて完全に折れてしまえば大結節骨折になってしまう。

そんなケースもあります。

肩の脱臼 + 上腕骨頚部骨折

もう一つの肩の脱臼骨折は上腕骨の頚部で骨が折れてしまうケースです。

画像引用元:J Shoulder Elbow Surg. 2002 Jul-Aug;11(4):389-400.

上腕骨(肘から肩にかけての腕の骨)は肩の関節部分は骨頭(こっとう)という球形状をしていて、外側に大結節、前側に小結節という突起があり、その下(肘より)は骨幹部(こっかんぶ)という木の幹に相当する細長い部分になります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

その骨頭や大小結節と骨幹部の間を頚部(けいぶ)といいます。

解剖頚と外科頚に分かれていますが、ここではとりあえず頚部でいいです。

頭と体幹の間は頚(くび)というわけですね。

この頚部で折れてしまって、さらに、骨頭が外れてしまっているのがこのケースです。

合併した骨折が大結節骨折の場合との大きな違いは、脱臼した骨頭と骨幹部が分断されてしまっているということです。

そのため、こちらの方が一般的に重症です。

 

原因2:脱臼の時に腱板損傷もあった

脱臼のときに
腱板損傷を一緒に合併することがあります。

とすると、症状が残ることもあり得ます。

それを見つけるには、
最低でも超音波検査、
できればMRIで調べるのがいいでしょう。

腱板損傷については
こちらをご参照ください。

腱板断裂をまるごと肩専門医が解説

2017.10.30

肩腱板とは肩の大事なインナーマッスルの腱の合流部

肩腱板(かたけんばん)

これを正確に理解している人が
医療関係者の中にも少ないという印象があります。

よく腱板損傷という言葉を使いますが、
肩板損傷?と書いている人もいますし、
ときに腱板骨折?と書いている人も見かけたことがあります。

肩腱板・・・略して肩板・・・なんてことはないでしょうが、
ちょっとしたケアレスでしょう。

ただ、腱板骨折には驚きました。
腱板が骨だと思っている人が、
医療関係者にもいるということです。

ということで、まず
肩腱板とはなんぞや?ということから入りましょう。

肩の腱板

もっと言うと、ということになりますが、

肩はいいですよね。

次に「」ですが、

筋肉は骨にくっつく前に
より筋張って、硬めの線維に移行します。
この筋肉の続きの硬めの線維を「腱」
といいます。

次に「板」ですが、
これは解剖学用語というよりは、
見た目を表したモノと考えてください。

肩のインナーマッスルと呼ばれる、
深いところ、関節に近いところにある筋肉の中で、

特に重要なモノが
4つあり、

それぞれ

  1. 肩甲下筋
  2. 棘上筋
  3. 棘下筋
  4. 小円筋

という名前がついています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この4つの筋肉が、腱となって、
最終的には合流して「板」状になるので、

「腱板」というわけです。

つまり、肩腱板というのは、
4つのインナーマッスルの腱が
最終的に合流した部位のこと

腱板筋群とは
4つのインナーマッスルのこと

と言えます。

肩腱板損傷は単なる筋損傷、筋断裂とは違う

この肩腱板が、損傷してしまう。
それはつまり、断裂してしまう、
切れてしまうわけですが、

これを他の部位の筋肉の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

通常、筋肉が切れてしまっても、
だんだんと修復されて、

ある程度の強度を持って、
筋肉がくっつきます。

つまり、よほどの重症でない限りは、
肉離れは手術はしません。

また、筋肉ではなく、
その先の腱の損傷としては、
代表的なものが
アキレス腱損傷だと思いますが、

このアキレス腱損傷は
手術でなくても、ギプスなどで治すこともできます。

肩腱板断裂は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
そうはいきません。

その大きな理由は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように切れてしまうからです。

骨と腱という

カタいものと
ちょっとカタめのスジ

これがくっつくというのは、
筋肉同士や腱同士がくっつくことにくらべ、
難しいということですね。

そのため、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、
むしろ拡大していきます。

つまり、重症化していく
ということです。

原因3:脱臼の時に神経を傷めてしまった

これは可能性は高くないですが、

脱臼の時に神経を傷めてしまうことがあります。

特に腋窩神経という神経が
肩関節の近くを走っていて、
脱臼のときに傷めてしまうことがあります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

腋窩神経の支配している三角筋の麻痺、
つまり、肩を動かせないような状態があれば、

腋窩神経損傷をより強く疑います。

少し時間経過をみますが、
筋電図という神経の検査や
MRIなどで画像評価をすることがあります。

腋窩神経とは? 肩の大切な神経の1つを解説 by専門医

2017.05.08

原因4:脱臼の後、関節がカタくなってしまった

脱臼の後、
初回脱臼であれば3−4週間は
肩をある程度固定します。

その後、関節がカタくなっていて、
それを動かす過程で痛みが走る

ということがあります。

 

拘縮肩と言います。

これは特に高齢の人に多くて、
若い人は、カタくなることよりも
やはり、クセになってしまうことが多いです。

拘縮肩の治療法

では拘縮肩の治療法です。

シンプル言うと、多くの拘縮肩の原因は関節包(かんせつほう)です。

関節包は関節を全周性に覆っている薄い膜のことですが、これが拘縮肩の場合は分厚く、硬くなってしまっています。
そのせいで動かせなくなっているんですね。

とすれば、治療法としては、じわじわと関節包に刺激を加えて、時間はかかってもリハビリテーションやストレッチで拘縮を解除していく方法と、

分厚くなってしまっているのなら、切ってしまえばいい、剥がしてしまえばいいという手術があります。

通院リハビリテーション

まずジワジワとかたくなった肩をほぐしていくリハビリテーションですが、ジワジワと言いながらもなかなか大変です。

ほぐすと言っても肩こりのマッサージのようなことをするわけではありません。

肩がカタくて動かない中でもジワジワと動く限界を攻めるようなリハビリテーションになります。

例えば、この動画のようにセラピストが関節を動かしていくようなことを行っていきます。

それを病院に通院しながら専門のセラピスト(作業療法士や理学療法士)に肩を動かしてもらったり、指導のもとでのストレッチをしたりします。
これは頻度としては毎日できれば一番いいわけですが、なかなかそこまで通院できる人は多くないですし、逆にセラピストの予約も毎日取るのは難しくて、週に1回程度になってしまうところも少なくありません。

自宅でセルフストレッチ

そこで毎日、自宅で自分でストレッチをやることがとても重要になってきます。

肩関節の動きとして、特に使いやすさのポイントになるのは

挙上(屈曲)もしくは外転というバンザイまで腕を上げていく動きです。

この挙上、外転の練習、ストレッチとしての代表的な訓練が、
振り子運動訓練(pendulum exercise)と呼ばれるもので、

頭を下げて腕をだらんと垂らすところから身体を揺らしながら振り子のように腕を前後だったり円を描くように振っていくわけです。

特に頭を腰よりも低く下げるくらいに前屈できれば(転倒や体調崩さないように注意してください。)、より脱力したときの挙上角度が高くなり効果が高まります。

さらにこのような棒を使ったエクササイズも効果的です。

こちらは肩の外転(がいてん)訓練です。棒をつたって左手で右手を外に上に押し出すような動きで右肩を外転(外側から上げていく)させています。

こちらは右肩の外旋(がいせん)のエクササイズです。
ポイントは右肘を脇につけて固定して、手の位置を外側に開いているということです。肘を支点に肩関節で回旋しているということですね。


今度は右肩の内旋(ないせん)のエクササイズです。棒を下で背中側にまわして持っている右手を左手が棒をつたって、持ち上げていきます。
この右手の位置が高く上がれば上がるほど、肩関節は内旋していることになります。

注射して徒手授動術

次に手術のお話ですが、まずは「切らない」手術です。

徒手授動術(としゅじゅどうじゅつ)と言います。
これは言い方は悪いですが、術者(医師)がある程度、無理矢理肩を動かして、分厚くなってしまった関節包をベリベリっと剥がしていく手術です。

要は腕を持って動かしていくだけですから、リハビリに似ていますが、

その強度が違います。この一度の授動術で一気に動かせるようになるようにやるので、当然、激痛ですし、リスクも伴います。

そのため、まず痛みを抑えるために神経ブロック注射などを行ったり、また、剥がしやすくするために肩関節内に多くの生理食塩水を注入した上で、肩を動かしていきます。

この徒手授動術は無理矢理、肩を動かして剥がしますから、時に骨が弱い人の場合は骨折を起こしてしまうなんて恐ろしい合併症の報告もあります。
また、逆にそれが怖いので、どうしても授動術が不十分になってしまうということも起こりえます。

そんな意味もあって、僕はあまりこの方法はやりません。

次に述べる関節鏡手術の方が、肩にとってはやさしい、丁寧な方法と考えています。これは個人的な意見です。

手術 関節鏡下授動術

さて、この授動術ですが手術らしい手術としては、今は関節鏡を使って行うことが主流となっています。肩の前後に1–1.5cm程度の小さい創から関節鏡や専用の電気メスなどを関節の中に挿入して、分厚くなってしまった関節包を切開していく方法です。

電気メスで焼きながら切り開いているのが関節包ですが、かなり赤く充血しているように見えると思います。これが炎症した関節包の特徴です。この炎症部分もクリーニングできるというメリットもあります。

これは習熟した肩専門の医師が行えば30分もかからないで行える手術です。しかし、実際は神経(腋窩神経)が近くを走っており、さらに関節内のスペースが拘縮肩の人は狭いので、慣れない医師がやると神経障害のリスクやうまく手術が行えないリスクなども高くなるかと思います。

肩脱臼の基本をおさらい

肩脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

まとめ

今回は肩脱臼のあとに痛みが残る
ということについて、

考え得ることを解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

スポンサード リンク

当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

プロフィールはこちらをご参照ください。
スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

歌島 大輔

スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。