肩脱臼(亜脱臼)を防ぐサポーターの効果はいかに?専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩脱臼(亜脱臼)を防ぐという目的で、
肩のサポーターは使えるのか?

使えるとして、どう使うのがいいのか?

ということを中心に、

肩脱臼の基本、
肩脱臼のメカニズム、外れてしまう動きについて
解説しつつ

できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。

こんにちは、肩を専門とするスポーツドクターの歌島です。
今回も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩脱臼(亜脱臼)防止サポーターはおおきく2種類

こちらで肩の脱臼(亜脱臼)防止目的の
テーピングを解説しております。

肩脱臼をテーピングで防ぐには?専門医解説

2016.12.29

このテーピングと同様に
サポーターも

これ単体で脱臼を防ぐ
というほどの効果を期待するのは難しいです。

あくまで補助的に使う
ということになるでしょう。

肩の外転外旋伸展を制御するサポーター

肩脱臼(亜脱臼)のメカニズムを考えれば、
この
肩の外転外旋伸展という動きを制限する
そんなサポーターがいいと考えますよね。

ただ、これは肩の可動域を制限するわけで、
特に肩の外旋という動きは
上腕の長軸を軸に回旋する動きなので、
サポーターでも制御が難しいです。

 

 

これについては
一般的に市販されているサポーター
というよりは、

病院などで医師の指示の元、
使用するような

装具

という扱いになります。

そのためまずは主治医に
装具について意見を聞きましょう。

 

この装具は他のスポーツによっては
必要となる動きも制限したり、
スムーズでなくしてしまう

というデメリットがあります。

 

肩を外側から圧迫するだけのサポーター

そんなときに、
外から圧迫するということをメインとする
サポーターが多く売られています。

これは上腕を肩甲骨側に押しつけるような
圧迫力を加えることで、
安定性を高めようとするものですね。

これなら動きの制限は少なくなります。
目に見えた効果とまではいかないかもしれませんが、
理論上は多少なりとも効果を期待できると思います。

肩脱臼の基本をおさらい

肩脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

肩脱臼が癖になるとは?

肩の脱臼がくせになってしまう

というのはよく聞く話だと思います。

これを反復性肩関節脱臼と言いますが、

これは、初回の脱臼後に、
日常生活やスポーツ活動の中で、

特に外傷などなくても、
ちょっとした肩の動きで外れてしまう。

という状態です。

肩関節不安定症とも言います。

肩の脱臼が癖になるメカニズム

関節窩(受け皿)を深くする関節唇

関節窩(かんせつか)という
浅い受け皿に、

上腕骨頭(じょうわんこっとう)という
ボールが乗っている

これが肩関節の骨と骨の構造上の関係です。

非常に不安定です。

その受け皿を取り囲むように
比較的硬めの軟骨組織が
受け皿に深さを与えて、
ボール(上腕骨頭)が簡単に
転がり落ちない(脱臼しない)ようにしている

それが関節唇(かんせつしん)です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

さらにこの関節唇と上腕骨を
繋いでいる関節上腕靱帯(かんせつじょうわんじんたい)
というものが脱臼を防ぐ大事なはたらきをしています。

バンカート損傷は関節唇損傷

肩が脱臼したときに、
この関節唇が関節窩から剥がれてしまう

これをバンカート損傷といいます。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

そして、この剥がれてしまった
関節唇は
自然とはなかなかくっつかないので、

バンカート病変となって、

肩の受け皿(関節窩)の前方がゆるゆる
になってしまいます。

それが肩の脱臼がクセになる
大きな原因です。

この関節唇とそこに連続する靱帯は
どちらも筋肉ではないので、

いくら脱臼を防ごうと
周りの筋肉を鍛えても、

クセになった肩の脱臼はなかなか治せないわけです。

ということで、手術が選択肢に
なってくるわけですね。

ヒルザックス病変について

バンカート損傷と並び、
関節脱臼の時にできる損傷、病変として、

ヒルザックス病変というものがあります。

バンカート病変が肩甲骨の受け皿側の問題だったのに対し、
こちらは上腕骨側です。

肩が前方に外れたときに、
上腕骨の後方と肩甲骨関節窩の前方が
はまり込むような状態になります。

その結果、上腕骨の骨頭後方が
削れてしまう

これをヒルザックス病変と言います。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こります。

肩脱臼を防ぐには腕を後ろに持っていかないこと

肩脱臼を防ぐには、

シンプルに肩が外れる肩の状態に
もっていかない、
もっていかれないこと

になります。

その肩が外れる状態とは、

肩関節の外転外旋伸展という状態で、

簡単に言うと、
肩を真横に広げて、
外側に捻って、
さらに背中側に持っていく

Get That Itch!

そんな動きで外れてしまいます。

とすると、シンプルにすると

腕を後ろ(背中側)に持っていかない

ということが脱臼防止になります。

おわりに

今回は肩脱臼の仕組み、

特に繰り返し脱臼してしまう仕組みを
おさらいしつつ、

どのように防ぐか、

サポーターならどうするか?

 

という視点で解説いたしました。

 

サポーターで脱臼を完全に防ぐことはできないが、
病院で装具をオーダーしてもらう
という方法と、

市販されているサポーターを使ってみる

という方法があるということを
ご説明いたしました。

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