肩脱臼をリハビリで外れにくくするには?専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩の脱臼をリハビリで外れにくくできるのか?
防ぐことはできるのか?

ということについて解説いたします。

特に肩が脱臼してしまうメカニズム、原因から、
どのように外れにくくしていくか?
その中でのリハビリに対する考え方をお伝えしていきたいと思います。

後半は肩脱臼の基本のおさらいコーナーもありますので、ご参照ください。

こんにちは、肩を専門とするスポーツドクターの歌島です。
今回も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

肩が脱臼する主原因は関節唇=鍛えられない

バンカート損傷については、
関節唇損傷のことだと解説いたしましたが、

とすると、関節唇は軟骨であり、
筋肉ではないので、

筋トレでは鍛えられません。

また、拘縮してしまっているわけでもないので、
ストレッチも関節唇には何の意味もありません。

これが、肩関節の脱臼がクセになってしまったときに、
手術が必要になることが多い理由です。

手術についてはこちらをご参照ください。

肩脱臼の手術方法を肩専門医が解説

2017.01.01

肩脱臼を防ぐリハビリ

そういう意味では、
肩脱臼をリハビリで防ぐのは無理

と一言で片付けてもいいわけですが、

それでも、少しでも再脱臼の確率を下げる、
もしくは、手術後により確率を下げる

という目的でのリハビリはやはり重要です。

補強としてのインナーマッスルトレーニング

鍛えられる肩の安定化組織としては
肩のインナーマッスル、
腱板筋群があります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

これらの筋肉は肩の深いところにあって、
収縮することで、
上腕骨頭を関節窩に押しつける力(求心力)
を生み出します。

その結果、肩は安定しますので、

このインナーマッスルのトレーニングは重要です。

このトレーニングについては
こちらの記事もご参照ください。

野球肩におけるインナーマッスルの重要性とトレーニング法を専門医解説

2016.12.21

肩甲骨トレーニング

もうひとつは、
肩関節の無理な動きで外れますから、

相対的に肩関節に負荷をかけないために、

肩甲骨を大きく動かせるフィジカルを
作り上げる
ということです。

代表的な肩甲骨トレーニングは
こちらのCATというトレーニングですね。

体幹を使って腕を後ろに持っていかない

また様々なスポーツ動作、
日常生活動作の中で、

腕を後ろにもっていかなきゃいけない、
もっていかれてしまう

そんなケースはあります。

 

そのときに、体幹の回旋、スピンを使って、
相対的に腕を後ろにしないという
身体のクセをつける

これはすごく効果的です。

こちらの動画はその最たるものです。
※facebookマークをクリックしてfacebookに移動すると
動画をご覧いただけます

この中年男性は、
身体をスピンさせなければ、
ほぼ確実に腕をもっていかれて、
脱臼していたでしょう。

肩脱臼の基本をおさらい

肩脱臼とは?

肩脱臼とは、
肩が外れることを言うわけですが、

実際には肩と言っても、
肩にはいくつか関節があります。

いわゆる肩関節は

肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)という、
肩甲骨と上腕骨からなる関節のことを言います。
細かく言うと
肩甲骨関節窩(けんこうこつかんせつか)という
受け皿と、
上腕骨頭というボールからなる関節です。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

他には、肩鎖関節という
肩甲骨と鎖骨からなる関節もあります。

他にもいくつか関節に類するモノがありますが、
代表的なのはこの2つですね。

正確には肩甲上腕関節脱臼

そういう意味で、
正確に表現すると

肩甲上腕関節脱臼のことを
一般に肩脱臼と言います。

肩は4方向に外れるがほとんどが前方脱臼

肩の脱臼は
* 前方脱臼
* 後方脱臼
* 上方脱臼
* 下方脱臼

と4種類ありますが、
ほとんどが前方脱臼です。

X-ray anterior shoulder dislocation

X-ray anterior shoulder dislocation

つまり、上腕骨頭が前に外れます。

それにはいろいろ理由がありますが、

関節窩という
肩甲骨側の受け皿の形が、
上下に長い楕円形をしていて、

さらに、やや前に傾いている

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

ということが大きな要因です。

肩脱臼と亜脱臼の違い

ちなみに脱臼と亜脱臼の違いですが、

脱臼は
完全に関節の適合性が失われた状態

つまり、
肩甲骨の関節窩と
上腕骨頭がまったく接していない状態
これが脱臼で、

亜脱臼は、
それに至る前で、少し前や後ろなどに
ズレてしまって、

症状としては、
外れた感じ(脱臼感)があるが、
すぐに入った(整復された)ような状態が
典型的な亜脱臼です。

肩脱臼がくせになるとは?

肩の脱臼がくせになってしまう

というのはよく聞く話だと思います。

これを反復性肩関節脱臼と言いますが、

これは、初回の脱臼後に、
日常生活やスポーツ活動の中で、

特に外傷などなくても、
ちょっとした肩の動きで外れてしまう。

という状態です。

肩関節不安定症とも言います。

肩の脱臼がクセになるメカニズム

関節窩(受け皿)を深くする関節唇

関節窩(かんせつか)という
浅い受け皿に、

上腕骨頭(じょうわんこっとう)という
ボールが乗っている

これが肩関節の骨と骨の構造上の関係です。

非常に不安定です。

その受け皿を取り囲むように
比較的硬めの軟骨組織が
受け皿に深さを与えて、
ボール(上腕骨頭)が簡単に
転がり落ちない(脱臼しない)ようにしている

それが関節唇(かんせつしん)です。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

さらにこの関節唇と上腕骨を
繋いでいる関節上腕靱帯(かんせつじょうわんじんたい)
というものが脱臼を防ぐ大事なはたらきをしています。

バンカート損傷は関節唇損傷

肩が脱臼したときに、
この関節唇が関節窩から剥がれてしまう

これをバンカート損傷といいます。

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

そして、この剥がれてしまった
関節唇は
自然とはなかなかくっつかないので、

バンカート病変となって、

肩の受け皿(関節窩)の前方がゆるゆる
になってしまいます。

それが肩の脱臼がクセになる
大きな原因です。

この関節唇とそこに連続する靱帯は
どちらも筋肉ではないので、

いくら脱臼を防ごうと
周りの筋肉を鍛えても、

クセになった肩の脱臼はなかなか治せないわけです。

ということで、手術が選択肢に
なってくるわけですね。

ヒルザックス病変について

バンカート損傷と並び、
関節脱臼の時にできる損傷、病変として、

ヒルザックス病変というものがあります。

バンカート病変が肩甲骨の受け皿側の問題だったのに対し、
こちらは上腕骨側です。

肩が前方に外れたときに、
上腕骨の後方と肩甲骨関節窩の前方が
はまり込むような状態になります。

その結果、上腕骨の骨頭後方が
削れてしまう

これをヒルザックス病変と言います。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

このヒルザックス病変が幅広くできてしまうと、

肩を外旋していったときに、
このヒルザックス病変を支点に、
また外れてしまう

ということが起こります。

肩脱臼を防ぐには腕を後ろに持っていかないこと

肩脱臼を防ぐには、

シンプルに肩が外れる肩の状態に
もっていかない、
もっていかれないこと

になります。

その肩が外れる状態とは、

肩関節の外転外旋伸展という状態で、

簡単に言うと、
肩を真横に広げて、
外側に捻って、
さらに背中側に持っていく

Get That Itch!

そんな動きで外れてしまいます。

とすると、シンプルにすると

腕を後ろ(背中側)に持っていかない

ということが脱臼防止になります。

まとめ

今回は肩脱臼を防ぐためのリハビリ

ということで、
リハビリ単体では関節唇を鍛えることはできないので、
難しいが、

補助的にはリハビリには十分意義があること。
その方法論について解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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