肩腱板断裂の手術方法について肩専門医が解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩腱板断裂の
手術方法について解説いたします。

肩腱板断裂、
つまり、腱板が切れてしまった状態に対して、

当然、縫ってしまえばいいとなりますが、

 

いくつか方法があります。

 

おおきくわけると、

直視下手術といって、
直接観て、治すという方法

もう一つは、最近の主流である
関節鏡手術ですね。

 

そして、重症なタイプには、
人工関節をするということもあります。

 

それぞれについて、

肩腱板断裂の基本的なお話をおさらいしながら、
解説いたします。

 

こんにちは、肩を専門とするスポーツ整形外科医の歌島です。
本日は記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

 

まず、肩腱板損傷の基本については、
こちらで丁寧に解説しております。

肩腱板損傷に特徴的な症状はあるのか? 肩専門医解説

2016.12.11

肩腱板損傷の手術は必須ではない

まずは手術はした方がいいのかどうか?

ということについて、
考察していきたいと思います。

 

まず僕がいつも話すことです。

「肩の腱板損傷を放置したとして、
命に関わるモノではありません。

ですから、絶対に手術をしなくてはいけない
ということはありません。」

これは極論ですが、

どうしても、医師から「手術」と言われれば、
手術しなくてはいけないもの
と思ってしまう患者さんがいらっしゃるので、

お話ししています。

これは実際、事実で、

患者さん個人個人の
肩関節に対して求めるレベルと、

現状の肩関節の機能、はたらき、痛み

そして、

肩腱板損傷があるという中で、

今後の経過の予測

これらを総合的に判断して、
手術がオススメの場合はそれを提案しますし、

手術はやめておきましょうという
提案をすることもあります。

肩腱板損傷の手術は行わなくても放置はしない

手術をしない
という判断をした場合でも、

腱板損傷というのは、
多くは重症化していくモノです。

そして、その重症化が、
必ずしも
症状に表れず、

症状に表れたときには、
もう手遅れなくらいに
(腱板修復できないくらい)
重症化している

なんてことがあります。

そのため、保存治療の結果、
症状が改善したとしても、

1年に1回など、
間を置いて、
肩の超音波やMRIによる
腱板断裂の状態の評価をオススメしています。

肩腱板損傷の完全断裂と部分断裂(部分損傷)について

肩腱板損傷にも
損傷の重症度があります。

その中でもわかりやすい境界線が、

完全断裂か部分断裂か

ということです。

 

それには肩腱板の厚さについて
理解する必要があります。

腱板はしっかりした、厚い組織です。
そして、いくつかの層にわかれています。

肉眼レベルで言えば、
浅い層と深い層の2層構造で考えています。

そのままの名称ですが、
浅層深層です。

 

この肩の腱板は関節の中と外を隔てていますが、
浅層も深層も切れてしまう、完全断裂となると、

関節の中と外が交通してしまいます。

よく関節鏡という内視鏡で手術をしますが、
関節の中を覗いていても、
完全断裂をすると、腱板の断裂部から、外側が見えます。

 

肩腱板断裂の手術法

今回は肩腱板断裂の中でも
完全断裂の手術について
解説いたします。

部分損傷の治療については
こちらの記事をご参照ください。

肩腱板損傷の手術方法について専門医解説 -部分損傷-

2016.12.09

シンプルに切れてしまった腱を
もともとの骨に縫い付ける、
ということが「腱板手術」もしくは
「腱板修復術」と言います。

この腱板手術には
直視下と関節鏡視下の2種類があります。

それぞれメリット、デメリットがありますので、
解説いたします。

【直視下腱板手術】直接傷をあけて縫う

直視下の場合は、
皮膚を5–6cm切って、
三角筋というアウターマッスルを
裂くようにして、一部、切って、
腱板断裂部を直接みえる状態で手術をします。

画像引用元:肩関節の手術 整形外科手術イラストレイテッド 初版 中山書店

画像引用元:肩関節の手術 整形外科手術イラストレイテッド 初版 中山書店

メリットは比較的簡便

メリットは手術時間が短いこと
手術する医師による技術の差が出にくいこと

が言われています。

デメリットは手術によるダメージや観察範囲の狭さ

しかし、手術創が大きいことや、
三角筋という損傷していないアウターマッスルに
ダメージが加わってしまうことは
デメリットと言えます。

そのため、術後の痛みや、可動域の回復が、
関節鏡手術より劣ると考える人も多いです。

また、直接見える範囲というのは、
限られていて、

特に関節の中は腱板の断裂の大きさによって、
多少見えることもあれば、
全然見えないこともあります。

これは関節鏡との大きな違いで、
より微細なレベルの関節内の異常
(腱板関節面断裂や関節唇損傷)などは
直視下手術では発見すらできないこともある

と言えます。

【関節鏡視下腱板手術】内視鏡で縫う

それに対して、

関節鏡視下腱板手術では、
関節鏡という内視鏡を用います。

ペンよりも細い筒型のカメラを
関節の中や滑液包の中に挿入するわけですが、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

胃や腸のように、
穴(口やお尻の穴)があるわけではありません。

そのため、小さく
1cmくらいは皮膚を切開して、
関節鏡や手術用の鉗子(はさみやメスなど)を
挿入して手術をします。

 

メリットは手術ダメージが少ない、観察範囲が広い

メリットは直視下腱板手術のデメリットが
そのままメリットと言えます。

三角筋という筋肉を大きく裂いたり、
切ったりする必要がないことでダメージが少ないこと。

また、関節内も含めて、
様々な方向から様々な部位を観察できることによる、
病態の把握ができ、見逃しが減ること。

これがメリットと言えるでしょう。

 

関節鏡の創は1cm程度と言いましたが、
実際はこれが4–6個くらい、
複数の創ができます。

それは様々な方向から観察したり、
鉗子を入れたりするためですが、

それなら、足せば直視下と変わらない
創の大きさになるという意見もあります。

 

しかし、足して同じ
というのは、単純計算というか、
安易というか・・・

創の目立ち具合も
明らかに直視下の5–6cmの創の方が目立ちますし、

なにより、
三角筋へのダメージ

直視下手術による
1カ所の創で患部がしっかり直視できるように
大きく裂くというのと、

関節鏡手術による
いくつかの場所から
細い鉗子や関節鏡を三角筋を貫いて操作する

というのでは、

全然違うというのが実感です。

デメリットは術者の習熟が必要

デメリットは、これまた直視下のメリットの裏返しです。

関節鏡を使うと、
直視下よりはどうしても少し時間がかかります。

僕自身も関節鏡手術を
毎週のように執刀させていただいておりますが、

手術時間は1–2時間くらいかかります。

しかし、直視下手術では30分くらいで
慣れれば縫合できます。

また、関節鏡手術で1–2時間と言いましたが、
経験の浅い医師になると、
3時間以上かかることもあります。

関節鏡手術の方が、
技術的には難しいと言えます。

そのため、手術する医師によって、
治療成績に差が出る可能性があります。

【人工肩関節手術】肩関節を金属に入れ替えてしまう

最後に人工肩関節手術ですが、

これは腱板が修復できないと
判断したときの選択肢です。

 

腱板断裂があまりに広範囲となれば、

その断裂部をもとの骨に引っ張ってくる
ことができません。

どうしても届かない・・・

ということが起こります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

それでも、太ももの筋膜を移植したり、
人工靱帯のようなもので補強したり、
という工夫をするのですが、

広範囲に切れてしまって、
時間が経って、筋肉としての機能を
失ってしまった腱板を
いくらむりやり修復しても

結局、肩の機能は回復しない。
ということが起こりえます。

 

それならば、肩関節自体を
人工の金属にして、

それも特殊な形状の人工関節を挿入すると、
インナーマッスルである腱板筋群がなくても、
肩を上げることができます。

 

人工関節ですので、
手術創も大きく、
身体に対する負担も大きな手術ですが、

最後の手段の手術として、
十分、期待を持てる手術法と言えます。

まとめ

今回は肩腱板断裂、
それも完全断裂の手術法として、

直視下腱板手術
関節鏡視下腱板手術
人工肩関節手術

について解説いたしました。

 

治療についてお悩みのことがあれば、直接診察さえできれば、いろいろとご相談させていただけますのでご検討ください。

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当サイト管理人 歌島の診察希望


当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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スポーツコーチングドクター歌島のプロフィール

2 件のコメント

  • 左肩関節鍵盤断裂の広範囲断裂と診断されました。怪我をしてからいつもお世話になっている整形外科の街医者に行ったのですが、丸々1カ月様子をみるということでそのままの状態が続き、一カ月経過しても腕が挙がらないので『院長先生これは様子を見ても治らないと思う。』と告げ、大きな総合病院を紹介してもらい、検査し早急に手術を受けました。手術まで2カ月が経ってしまいました。現在、手術も成功し4カ月が丁度経過しました。今は自動運動のリハビリテーションを行っておりますが、まだ全然腕が挙がらず完全に治るのかとても心配しております。手術をするのが遅すぎたのではないか?と、腕を使う商売を営んでいるだけに心配で心配で仕方ありません。広範囲断裂の場合完治まで平均してどれくらいの期間がかかるのか教えてくださいませ。宜しくお願い致します。

    • 安田さん

      確かにご心配ですよね。僕の経験では6ヶ月以降に急に肩が挙がるようになる患者さんもかなりいらっしゃいます。
      広範囲断裂といっても筋肉の状態や修復の具合などケースバイケースですね。
      さらなる個人的な具体的ご相談については診察希望のお問い合わせからお願いします。

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    歌島 大輔

    スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。