肩腱板損傷の手術方法について専門医解説 -部分損傷-

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

今回は肩腱板損傷の手術方法について
解説いたします。

肩の腱板損傷には
完全断裂部分損傷があり、

そのうち、部分損傷の手術治療について
お伝えしたいと思います。

 

こんにちは、肩専門の整形外科医、歌島です。
本日も記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

肩腱板損傷の基本まとめ

肩腱板損傷の基本については、
こちらで丁寧に解説しておりますが、
簡単におさらいいたします。

肩腱板損傷に特徴的な症状はあるのか? 肩専門医解説

2016.12.11

肩腱板とは大事なインナーマッスルの腱の合流部

肩腱板(かたけんばん)

これは、ということになりますが、
それぞれ解説いたします。

肩については、いいですよね。

次に「」ですが、

筋肉は骨にくっつく前に
より筋張って、硬めの線維に移行します。
この筋肉の続きの硬めの線維を「腱」
といいます。

次に「板」ですが、
これは解剖学用語というよりは、
見た目を表したモノです。

肩のインナーマッスルと呼ばれる、
深いところ、関節に近いところにある筋肉の中で、

特に重要な筋肉が
4つあり、

それぞれ

  1. 肩甲下筋
  2. 棘上筋
  3. 棘下筋
  4. 小円筋

という名前がついています。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

この4つの筋肉が、腱となって、
最終的には合流して「板」状になるので、

「腱板」というわけです。

つまり、肩腱板というのは、
4つのインナーマッスルの腱が
最終的に合流した部位

腱板筋群とは
4つのインナーマッスルのこと

と言えます。

肩腱板損傷は単なる筋損傷、筋断裂とは違う

この肩腱板が、損傷してしまう。
それはつまり断裂してしまうわけですが、

これを他の部位の筋肉の断裂と
同じとは考えない方がいいです。

 

通常、筋肉が切れてしまっても、
だんだんと修復されて、

ある程度の強度を持って、
筋肉がくっつきます。

つまり、よほどの重症でない限りは、
筋肉や腱の損傷はくっつきます。

肩腱板断裂は時間がたってもくっつかない

しかし、肩腱板損傷については
時間が経ってもくっつかないことが多いです。

その大きな理由は、

肩腱板損傷は骨から腱板が
剥がれるように切れてしまうからです。

 

骨と腱という

カタいものと
ちょっとカタめのスジ

これがくっつくというのは、
筋肉同士や腱同士がくっつくことにくらべ、
難しいということですね。

そのため、
ほとんどの腱板損傷は
時間とともに、
むしろ重症化していきます。

肩腱板損傷の完全断裂と部分断裂(部分損傷)について

肩腱板損傷にも
損傷の重症度があります。

その中でもわかりやすい境界線が、

完全断裂か部分断裂か

ということです。

 

それには肩腱板の厚さについて
理解する必要があります。

腱板はしっかりした、厚い組織です。
そして、いくつかの層にわかれています。

肉眼レベルで言えば、
浅い層と深い層の2層構造で考えています。

そのままの名称ですが、
浅層深層です。

 

この肩の腱板は関節の中と外を隔てていますが、
浅層も深層も切れてしまう、完全断裂となると、

関節の中と外が交通してしまいます。

よく関節鏡という内視鏡で手術をしますが、
関節の中を覗いていても、
完全断裂をすると、腱板の断裂部から、外側が見えます。

 

部分損傷は3種類あり

それに対して、部分断裂というのは、
浅層、もしくは、深層、
もしくは、その間が切れてしまう

ということです。

腱板の浅層は関節の外側で、
外側には滑液包という滑膜で包まれたスペースがあります。

逆に腱板の深層は関節の中側で、
関節包という関節を包む薄い膜と連続しています。

ですので、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

浅層の断裂を滑液包面断裂
深層の断裂を関節面断裂
その間の断裂を腱内断裂

と呼びます。

 

当然、部分損傷の方が、
完全損傷より軽症です。

この部分損傷が時間の経過とともに
徐々に重症化して
完全断裂に至ります。

ただ、痛みの程度は
意外と部分損傷の時に強いということもあります。

肩腱板損傷 -部分損傷-の手術法

今回は部分損傷の手術方法について
代表的な2つの手術を解説いたします。

【関節鏡下肩峰下除圧術】いわゆるクリーニング手術

まずは通称、クリーニング手術というものです。

正確には関節鏡下肩峰下除圧術という
小難しい名前がついています。

この手術は滑液包面断裂に対して、特に効果的であり、
また、完全断裂においても腱を縫う前に行われます。

関節鏡下肩峰下除圧術のターゲットはインピンジメント

この手術についてお伝えする前に、

インピンジメント症候群について
ご存じない方には、理解いただきたいと思います。

こちらで詳しく解説しておりますが、

インピンジメント症候群とは?肩専門医が解説

2016.12.12

 

インピンジメント症候群とは、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

肩腱板の外側と、

肩甲骨の一部である肩峰(けんぽう)
または、
そこと連続する烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい)

こすれるように、衝突する、
という病態です。

それが痛みを出したり、
腱板損傷の原因となったりする

と考えられています。

 

この状態を改善しようとするのが、
このクリーニング手術です。

 

実はクリーニング手術は通称であり、
また、広い概念を表します。

要は「お掃除手術」なわけですから、
痛みの原因となっているようなものを
お掃除するということ全般を指します。

 

なので、クリーニング手術の1つに
関節鏡下肩峰下除圧術がある
と捉えていただくと正確です。

関節鏡下肩峰下除圧術とは?

では、実際にはどういうことを行うのか?

というと、

 

かなりシンプルです。

まず、関節鏡という内視鏡を用います。
ペンよりも細い筒型のカメラを
関節の中や滑液包の中に挿入するわけですが、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

胃や腸のように、
穴(口やお尻の穴)があるわけではありません。

そのため、小さく
1–1.5cmくらいは皮膚を切開して、
関節鏡や手術用の鉗子(はさみやメスなど)を
挿入して手術をします。

そして、インピンジメントの原因となる、

肩峰の下側を
薄くします。

これは骨を削ると言うことです。

特に、肩峰の下側でかつ、前の方は、
骨棘(こつきょく)と呼ばれる、
増殖した骨の棘があります。

これは特に痛みの原因となるので、
しっかりと削ります。

 

それに加え、
烏口肩峰靱帯(うこうけんぽうじんたい)
という靱帯を切ってしまいます。

靱帯を切ってしまって大丈夫なのか?

という心配は当然あると思います。

すべての人において大丈夫!
とは言いませんが、

多くの人においては大丈夫です。

それはなぜかといえば、

この烏口肩峰靱帯はその名の通り、

烏口突起(うこうとっき)と
肩峰をつなぐ靱帯です。

しかし、この2つ・・・

どちらも肩甲骨の一部なんですね。

つまり、同じ骨の異なる部位を繋ぐ靱帯なんです。

靱帯の役割は、
骨と骨を繋いで、
その骨と骨が関節において不安定にならないように、
脱臼しないように張って支えることです。

しかし、この烏口肩峰靱帯は
同じ骨を繋いでいるので、
不安定も何もありません。

そういう意味で大丈夫と言えます。

【関節鏡下腱板修復術】内視鏡だから縫える

次に関節鏡下腱板修復術です。

これはそのままシンプルです、
先ほども出てきた関節鏡を使って、

腱板の切れたところを修復するということです。

修復の方法は
細かく言えば、いろいろありますが、

大原則は、
骨に腱板の切れ端を縫い付ける

ということが必要になります。

腱板断裂は
骨から剥がれるように切れるのが特徴でしたね。

 

そのため、骨に糸を通すのは
難しいので、

一般にはアンカーという
糸付きのスクリューを骨の中に埋め込んで、
その糸を腱板に通して、
結ぶなどして固定します。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

関節鏡でなければ縫えない

関節面断裂や腱内断裂は
関節鏡を使わないと縫えない

と言ってもいいでしょう。

 

昔は腱板断裂は、
皮膚を数cm切って、三角筋という
アウターマッスルをこじ開けて、

腱板に到達して、
直接観ながら縫っていました。

 

今もその方法で縫う先生もいますが、

関節面断裂や腱内断裂は
関節の中と外を行き来して、
縫合しないといけません。

しかし、部分断裂では、
腱板を完全に切らない限りは
関節の中は直視できません。

それはやりすぎですよね。

 

治してるのか、壊してるのかわかりません。

 

そういう意味では、
この部分損傷の治療においては、
特に関節鏡手術に優位性があると言えるでしょう。

クリーニング手術と修復術 使い分けは?

じゃあ、どっちの手術がいいのか?
という疑問は当然出てきますよね。

これは、一言で言えば、
重症度です。

部分損傷の中でも完全損傷になりそうな
損傷の大きさであれば、修復しますし、

ほんのわずかの部分損傷であれば、
自然修復を期待して、
クリーニングにとどめます。

そこは最終的には
関節鏡でしっかり観察して決めることになります。

 

 

今回は肩腱板損傷の中でも
部分損傷というモノがあるということ、

その手術には
クリーニング手術と修復する手術がある

ということを解説いたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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