野球肩におけるインナーマッスルの重要性とトレーニング法を専門医解説

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歌島 大輔
歌島 大輔
スポーツ整形外科医師(非常勤)景翠会 金沢病院
スポーツ整形外科専門医師(川崎市立井田病院・景翠会 金沢病院・さくら通り整形外科 各非常勤医師)として外来診療・手術を行っている。ケガやスポーツ障害という「マイナス」から元通りという「ゼロ」を目指すのではなく、パフォーマンスに変革をもたらす「大きなプラス」を一緒に目指す情報発信やコーチング活動をライフワークとする。

「野球はインナーマッスルが大切だ、鍛えなさい」

そんなアドバイスをもらったことがある人は多いかもしれません。

 

インナーマッスルと言っても、実は身体中にたくさんありますが、
特に野球において大切になってくるのは

肩のインナーマッスルです。

 

野球における特に投球動作、つまりピッチングやスローイングにおいて、
肩というのは負担が集中する大切な部位であり、

それゆえ、肩の痛みでパフォーマンスが出せなくなる、
プレーできなくなるということが少なくありません。

いわゆる野球肩ですね。

 

今回はその野球肩の予防、治療、再発予防において、
特に重要とされているインナーマッスルについて、
その役割とトレーニング法を解説いたします。

後半は野球肩そのもののおさらいコーナーもありますので、
参考にしてください。

こんにちは、スポーツ整形外科医の歌島です。
本日は記事をご覧いただきありがとうございます。

それではいきましょう!

インナーマッスルとは?

インナーマッスルとは
深層筋(しんそうきん)のことで

そのまま、深いところ、内側に位置する
筋肉のことを言います。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

ボディービルダーの方々をイメージしてもらうと、
あの、筋骨隆々と表現される身体で
膨隆して見えている筋肉は
アウターマッスルです。

その深くにひそむ筋肉がインナーマッスルになります。

インナーマッスルの役割

このインナーマッスルの役割は
一言で言えば「関節の動的安定化」
と言えます。

関節の動きの中で、
動かしながらも脱臼もせずに、
グラグラもせずにスムーズに動くのは

このインナーマッスルのはたらきがあってこそ

と言っていいです。

投球動作におけるインナーマッスルの働きと負担

特に肩関節は不安定な関節ですから、
インナーマッスルの担う役割は大きいです。

さらに投球動作となると、
高速で強いストレスがかかりながら
動く肩を安定的にスムースに動かすために

肩のインナーマッスルは常に頑張ってくれています。

しかし、それも繰り返しの投球動作において、
損傷してしまったり、
疲弊してしまったりすることがあります。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

そこで、インナーマッスルを鍛える、
もしくはインナーマッスルをより効果的に使える
という状況を目指すために
インナーマッスルトレーニングが
推奨されています。

インナーマッスルの基本チューブトレーニング

インナーマッスルというのは、
大きな力を発揮するモノではないので、
強い負荷をかけても効率が下がるばかりで、
トレーニングになりません。

効率が下がるというのは

強い負荷ではアウターマッスルに頼ったトレーニングになって、
結局、負荷が強くてもインナーマッスルは働かないトレーニングになってしまう

ということです。

 

そのため、弱めの負荷でトレーニングします。

 

イメージとしては、
弱めの負荷でも肩を安定的にゆっくり動かす。
もしくは、リズミカルに動かすことで、

肩の動作中に
よりインナーマッスルを使う

ということを脳に覚え込ませる。
そんなイメージです。

 

また、肩は消耗品と呼ばれる中で、
このインナーマッスルトレーニングを
「貯筋」トレーニングと呼ぶ人もいます。

では、このインナーマッスルトレーニングの
基本3つを紹介いたします。
動画をそれぞれご参照ください。

棘上筋を鍛えるトレーニング

これは棘上筋という筋肉のトレーニングで、
トレーニング中に肩甲骨の上の方が
熱い感じになれば効いている証拠です。

棘下筋を鍛えるトレーニング

これは棘下筋という筋肉のトレーニングで、
トレーニング中に肩甲骨の真ん中あたりが
熱い感じになれば効いている証拠です。

肩甲下筋を鍛えるトレーニング

これは肩甲下筋という筋肉のトレーニングで、
トレーニング中に胸筋の奥の方が
熱い感じになれば効いている証拠です。

 

インナーマッスルトレーニングの強度

さきほども述べたとおり、
インナーマッスルを鍛えるということにおいてはトレーニングの強度、強さが重要視されます。

強すぎるとアウターマッスルが働いてしまう

強すぎる負荷をかけるとどうなるかというと、アウターマッスルが働いてしまい、結局インナーマッスルは使えていないということになってしまうということです。

例えば、棘上筋を鍛えようと肩の外転運動に負荷をかけたとして、その負荷が強すぎれば同時に肩の外転運動において強い力を発揮する三角筋(さんかくきん)が動員されてきます。これでは棘上筋のトレーニングにならないわけですね。

力感は不要

目安としては30回くらいで限界が来るくらいの弱めの強度であるということと、トレーニング動作において「力感(りきかん)」を取り除くという意識が必要です。

力感というのは抽象的なあいまいな表現になってしまいますが、具体的には肩であれば肩甲骨や体幹が同時にダイナミックに動いてしまったりするような状態です。

また、時々、上半身裸で鏡を見ながらやっていただくと、アウターマッスルが盛り上がるような力が入ってないかチェックできます。これも客観的に見た力感と言っていいかもしれません。
それに対して、インナーマッスルは深いところにありますから、使えていても、外からは筋肉の盛り上がりはあまりわかりません。そのあまりわからない状態がいいわけです。

インナーマッスルを優位に働かせる工夫

さらにトレーニング中にインナーマッスルを優位に働かせる工夫として、

鍛えている筋肉に触れる・収縮を感じる

鍛えている筋肉は深いところにあるといっても、よく触れば収縮を感じます。この収縮を感じながらトレーニングをすることは非常に有用です。意識の持ち方でトレーニング効果が違ってくるのは科学的にも証明されています。

アウターマッスルに触れて緊張しない強度・スピードにとどめる

逆に時にアウターマッスルに触れるということもやりかたによっては効果的です。ある程度、強度や動かすスピードが速まると、アウターマッスルの緊張が強まります。まったく緊張しない状態は難しいですが、緊張が高まらないギリギリの強度にするというのは効果的です。

野球肩の基本をおさらい

野球肩とは?

野球肩とは、
別名、投球障害肩と言いますが、

つまり、投球動作の繰り返しで起こる
肩の痛みのことです。

つまり、肩のどこが傷んでいる
ということを表した言葉ではないので、
野球肩と言っても、様々な病態があるわけです。

野球肩の一番の原因は?

野球肩には様々な病態がありますが、

その原因は

投球動作の繰り返しです。

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ここでもう少し、投球動作の中で
肩に何が起こっているか?

ということを理解すると、

様々な病態の野球肩も
共通した原因が見えてきます。

投球動作中の肩は回旋運動+αが実状

投げるという動作において、

一番大きく動いているのは、
肩の外旋と内旋という動きです。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

投球動作中のこの外旋と内旋という動きは、
日常生活では経験しない可動域とスピードです。

そのため、繰り返せば、
様々なところに無理が来る

というのが原因です。

以前、この投球動作中の肩の動きがわかってきた頃、
「投げるときはストレートだろうと変化球だろうと
肩は内旋外旋・・・つまり捻って投げている!」

ということを強調し、
肩を意識して捻って投げるようとして、

肩の障害を誘発したと思われるケースがありました。

肩で起こっている現象は
肩の回旋運動ですが、

それを意識して起こすことでパフォーマンスが上がる

とは考えないことです。

逆に、その肩の回旋運動を意識して強調することは、
肩への負担を増加し、障害に繋がりかねない
と考えています。

肩の回旋運動で負担がかかるのは?

肩の回旋運動で負担がかかる部位は
たくさんあります。

その中でも、

肩の回旋運動を担いながら、
肩を安定化させている
インナーマッスル、腱板筋群であったり、

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂

肩の安定化の最重要組織と言ってもいい、
関節唇(かんせつしん)

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画像引用元: Philipp N et al:Anterior Glenohumeral Instability: A Pathology-based Surgical Treatment Strategy. AAOS 2014

肩の前方の安定性に貢献している
腱板疎部(けんばんそぶ)

などが代表的です。

つまり、野球肩の病態は
これらの組織が傷んでしまう
ということが多いわけです。

野球肩の病態はたくさんある

さきほど述べたとおり、
野球肩といっても、
様々な病態があり、

痛みの原因部位や、
傷むメカニズムが異なります。

代表的なものを
挙げていきます。

インターナルインピンジメント

病態、メカニズムとして、
インターナルインピンジメント

というものがあります。

これは主に、
肩を挙げて、過剰に外旋した状態

つまり、

腕がしなっている瞬間に起こるものです。

Kristofer Michael Johnson (Hiroshima Toyo Carp)

実際には関節の中で
後上方を走る棘下筋と、
後上方にある関節唇が、
衝突、こすれてしまう状態です。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

それを繰り返せば、
その擦れたどちらかが損傷する。
もしくはどちらもが損傷する

ということが起こります。

SLAP病変

上方関節唇が損傷してしまった状態
SLAP病変と呼びます。

これは

Superior Labrum Anterior Posterior 病変

の略で、

要は上方を中心に前や後ろまで
関節唇が傷んでしまった状態

と言えます。

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

画像引用元:OSnow_instruction_11_肩・肘のスポーツ障害 メジカルビュー社

この原因がインターナルインピンジメント
と言うわけです。

棘下筋損傷(腱板損傷)

もう一つの擦れる相手、

棘下筋腱が損傷してしまう。
特に関節面の部分損傷が多いのは

そのメカニズムからも当然のことと言えます。

腕が最大にしなった辺りの痛みが
多いだろうと思います。

腱板損傷については
こちらの記事もご参照ください。

肩腱板損傷に特徴的な症状はあるのか? 肩専門医解説

2016.12.11

肩峰下インピンジメント

インピンジメントには
もう一つ代表的なモノがあります。

それが肩峰下インピンジメントと言います。

こちらで詳しく解説しております。

インピンジメント症候群の治療を肩専門医が解説

2016.12.10

これは肩峰という肩の骨の下面、
もしくは烏口肩峰靱帯という靱帯と、

棘上筋腱の擦れと考えられており、

結果、腱板損傷の中でも
棘上筋腱損傷が起こりやすいメカニズムです。

主に外側の痛みとして
訴えがあり、

バックスイングで痛みがあるとすれば、
この可能性も十分あり得ます。

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

画像引用元:肩関節鏡下手術 (スキル関節鏡下手術アトラス)第1版 文光堂(一部改変)

上腕二頭筋長頭腱炎

力こぶの筋肉である
上腕二頭筋ですが、

この「二頭」の1つ、
長頭は肩の前方から上方を通って、
関節の中に入ります。

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

画像引用元:肩関節外科の要点と盲点 (整形外科Knack & Pitfalls)第1版 文光堂

そのため、肩関節運動において、
負荷がかかりやすく、
炎症を起こしやすい部位といえます。

腱板疎部損傷

腱板疎部損傷というのは、
腱板のうち、
前方の肩甲下筋腱と棘上筋腱の間の
損傷です。

腱板疎部損傷については
こちらの記事をご参照ください。

腱板疎部損傷とは?治療法は? 肩専門医解説

2016.12.14

野球肩の治療は原因追及と保存治療が原則

野球肩の治療のキモは

なぜ痛みが出ているのか?
という原因追及です。

MRIなどの精密検査をしても
画像上の異常がないケース
非常に微細な異常があるケース
が多く

投球動作という複雑かつ
高ストレスな動作中の痛みの原因を
特定するのは容易ではありません。

そのため、画像ばかりに頼らずに
症状、身体診察、投球フォームの確認など
総合的な判断が必要になります。

こちらもご参照ください。

野球肩の症状から中で何が起こってるか推測! 専門医解説

2016.12.19

そのように原因を追求した上で、

柔軟性や筋力などのフィジカルの改善
投球フォームの改善など

手術以外の保存治療をして、
時に手術も必要になる。

というのが野球肩の治療です。

まとめ

今回は野球肩の基本を解説しながら、
インナーマッスルとは?その役割は?
ということ、

さらに、そのトレーニング法について
お伝えいたしました。

少しでも参考になりましたら幸いです。

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当サイト管理人の歌島は関東の複数の病院で診療を行っております。

おかげさまでたくさんのご相談をいただいております。どうしてもゆっくり時間をかけて1人1人と向き合えないのが悩みですが、それでも、患者さんの希望、理想的にはゴールをできるだけ掴んで、お手伝いできること・ご提供できることを常に探しながら診療しております。

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